2022年度ESD研修会における池田満之さんの特別講演の概要報告です
2023年04月28日
大変遅くなってしまいましたが、去る3月11日に行われたESDうべ推進協議会におけるオンライン特別講演「岡山におけるESDの現状とこれからの課題」の概要を報告いたします。
演者の池田満之さんはESDに関して大変造詣の深い第一人者であり、1時間弱という短時間で、非常に内容の濃いお話をしていただいたので、全部は伝えきれませんが、重要な部分を抜粋して紹介させていただきます。
さわりは、ESD途は何か?、SDGsとの関係は?ということでした。
SDGsはマラソンのコースやゴールの設定、ESDはランナーの育成でありESDはSDGs達成の鍵であるとされました。
そして流しそうめんを例にとれば下流の人にもそうめんが食べられるよう、配慮して食べる節度が大事な時代であること、また2018年の西日本豪雨災害で岡山市も被害を受けたといった身近な出来事から我々の生活と地球の温暖化とのつながりを理解していくことが大事ではないかとされました。
学習指導要領に示されている資質・能力の三つの柱(「知識及び技能」「思考力、判断力、表現力等」「学びに向かう力、人間性等」)のうちの「知識及び技能」に属するのでしょうか、Society 5.0について話されましたが、Soc. 4.0が情報社会、Soc. 5.0が超スマート社会であり、教育の現場でも小学校低学年からタブレットを普及しつつあるということです。
AIとロボットに依存していく未来にどう適応するのかが重要になってきます。
経団連のHPでは、Soc. 5.0 を「課題解決」と「未来創造」を兼ね備えた新たな成長モデルさらにはSDGsの達成にも貢献するものとして、産業界はとくに国際競争力のために力を入れているということです。
社会のことをちゃんと知り、自分たちの未来を創造するスキルを身につことも大切なことです。
さて、岡山市は早くも2005年にESDの地域教育拠点RCEとして認定され、その後も励みになるような2014年には、ユネスコ世界会議、2016年ユネスコ/日本ESD賞受賞など、刺激となっつきたということです。
そして宇部市と同時期の2018年6月にSDGs未来都市の認定を受けておられます。
岡山市のESD推進の体制としては、岡山ESD推進協議会の事務局は当初より、岡山市市民協働局市民協働部ESD推進課(現在はSDGs・ESD推進課)が担っており、活動予算を含めて幅広い活動が行われてきています。
これが宇部市とは大きな違いですね。
活動団体も2005年48組織から、2022年度現在では356組織になっているということです。
岡山市庁舎の7階には市民協働局、そして2階にはESD市民協働センターがありここはNPO法人によって委託運営されていて、活動団体の交流つながりの場になっているようです。
また岡山では公民館の役割も大きいようですが、当然ながら学校を拠点としたESD・SDGsの推進が図られていて、それを地域が支えるという構造になっています。
注目すべきは、2015年度より岡山ESDコーディネーター研修が毎年開催されていてSDGsの達成に貢献する人材の育成に努めていることです。
受講者は公民館や市の職員、学校の先生、NPOや企業、地域の人たちのつながりをつくることにも役立っているそうです。
また、ESDアワードの授賞式を兼ねて、おかやまESDフォーラムが毎年開催され、地元の若者たちのほか、海外からの受賞者も参加して、これも大きなインセンティブになっているとのことです。
SDGsフォーラムは具体的な目的達成のために海ごみ対策などについて、これも毎年開催されているそうです。
さて岡山市の人口は約72万人、公民館も37あります、この公民館がESD拠点として大きな役割を果たしているようです。平均1か所当り2万人程度ですね。
中でも演者が長年かかわってこられた京山公民館は今年1月に、20年にお渉ESD活動等から全国最優秀館を受賞されました。
やはり地域における身近な環境について若い人たちが関心を持ち、自ら参画して、主体的な活動をすることが大切です。こういう活動によって郷土愛が芽生え、将来Uターンして地域を支える人たちも育っていくことが期待されます。
前後しますが、右上の図で示されるように公民館におけるESDの7つの留意事項として挙げられているものは、非常に重要で、とくに子供たちをお客様扱いするのではなく、企画の段階から参画させて、教えることよりも、自分たちのやりたいことを、地域の人と触れ合いながら挑戦させ、自分たちが役立っているということを感じさせることが大事だということです。
なお京山地区には岡山大学のキャンパスもあり、やや特殊なケースでもあるでしょうが、京山ESD・SDGs対話(地域全体会議)には小中学生などのほか、市長、学長、教育長、校長なども参加して、若者たちにはよい刺激になるようです。
その他、ESDカフェといったものも月1回を目途に開催されているそうです。
学校側の総合学習や課題解決型取り組みとうまくリンクしていくことも重要とのこと。
このように岡山では公民館がかなり重要な役割を果たしているようです。
これらの経験から、池田さんは、学校におけるESDの在り方についてもコメントをまとめられています。
学校においてもこれまでの「教える・教えられる」の関係から「ともに学ぶ」関係へ、教師のコーディネーターとしての役割が重要になってきていること。
右上の図のコメントの赤字の部分は非常に重要であるように思われます。
そして当然、学校を支援すべき地域コーディネーターもこれまでの「説明納得型」ではなく「発問・対話型」のESD教育スタイルをしっかり身に着ける必要があるということです。
ディスカッション等については別稿にて (文責:浮田)
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