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100分de名著 ナオミ・クラインの「ショックドクトリン」(その3)
2023年08月31日
NHK「100分de名著」の放送このシリーズ4回目ですが、大きな災害もショック・ドクトリンとして利用されること、そして最後に、ショック・ドクトリンの罠にはめられないようにするにはどうしたらいいかということが、語られました。
まずアメリカ南部ルイジアナ州を2005年8月に襲った大型ハリケーンによりニューオリンズの8割が浸水し、23000人が被災したことによるショック・ドクトリンがどう展開されたかです。
水や食料が圧倒的に不足する中、復興事業16億ドルの8割が、政府高官に近い多国籍企業と民間軍事会社が受託し、残りも議員に高額献金をした企業に発注された由。議会では業者に有利な規制緩和が行われ、作業に当たる下請労働者は安く働かされたということです。
民間主導の復興事業はなかなかはかどらず、公立の病院や住宅、水道などが復旧されず、公立の学校を再建したものの、教員は全員解雇され、派遣社員にならざるを得なかった。123校あった公立学校は4校を残して民営化され、貧困層と富裕層の格差も拡大していったということです。
東日本大震災後の復興特区における漁協の役割の一部が民営化される動きも見られたそうです。
原著では日本のことは書かれていませんが、堤未果さんの監修で、日本における民営化の動きについても紹介さましれた。
1980年代後半、中曽根首相はレーガン大統領と親しく、世界的な流れに乗って、国鉄、電電公社、専売公社の民営化を一気に進めました。
また、小泉首相はブッシュ大統領に呼応して、2007年郵政民営化を行い、新自由主義経済が、政府主導のもとに実施されてきました。
民営化の功罪は簡単ではないが、日本のように災害が多い国の場合、民営化した水道や災害復旧はスムーズに行われるのか、また効果が数値で測りにくい、教育分野ではうまくいくのかということも考えなくてはなりません。
地域住民が当事者として入っているのかも重要で、つくっていくプロセスを民主化することが大事であるとも。
また、選択肢が二者択一であったりするのも要注意であるし、何よりショック時は、慌てず、立ち止まってじっくり考えることが大事だということも指摘されました。
2004年12月に起きたスマトラ沖地震では1万人の命が失われ、被災者は120万人にも上ったが、漁業者は漁業で十分家族を養っていけたが、世界銀行など国際機関の経済成長にはつながらず、政府はより収益性のあるリゾート開発等を進めようとしたということです。
これに反発して、タイ南部のモーケン族の漁村では、自らの手で数か月のうちに津波で流された村を再建し、観光地化に反対して、土地の買収に応じず、何千人という漁民が再侵入という行動に出たそうです。開発業者にやとわれた武装ガードマンをものともせず、自分たちの住まいのあった区画を囲った。そして野営しながら、その区画を守り、政府と交渉しました。
その結果一部沿岸部の土地の一部放棄と引き換えに、先祖伝来の土地所有権を守ることができたそうです。
このことが報道されると、ニューオリンズから視察団が来て、復興の速さに驚き、「国に戻ったら、あなた方をお手本にして頑張りたい」と感想を述べた由。
最後に堤未果さんのコメントとして、
・地域の人が自分事として、主体的に考え話し合うことが大事。
・善か悪か、二元論にこだわると、分断されてしまい、じっくり広く深く考えることができない。
司会の伊集院光さんも”同じ仲間を集める傾向のあるSNSの使い方にも注意が必要”とのコメントがありました。
さすがによく練られた番組ですので、このブログを読まれるよりも、動画を視られる方がよくわかると思います。時間があれば視聴されることをおすすめします。
今回、現在の世界の社会経済情勢を考えるうえで、現在のグローバル資本主義の問題点など、非常に重要なことを勉強することができました。また、最近知ったインドネシアで試みられている「事業レビュー」を普及させて、身近なところから、民主主義を根付かせるために大事かもしれないということも考えさせられました。
(文責:浮田)
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