2023年度第1回環境サロン「タネは誰ものもの」映画を見る会がありました。
2023年07月31日
7月23日午前中、宇部市図書館2階 講座室で、表記の今年度第1回環境サロンが行われ、幸い多勢の参加者がありました。
65分の内容満載の映画と、その後、山口環境保全型農業研究会(かんぽ研)事務局長の比嘉朝康さんの解説をお願いしましたので、とても1回のブログではまとまらず、2回に分けて報告します。
元農水大臣の山田正彦さんが、自ら全国各地の農場を訪ねられ、意見交換をされていますが、映画では、はじめに富士山の近くの日本豊受自然農株式会社への取材が紹介されていました。多角的な経営がなされ、多くの志ある若者達が働いていて、希望を感じさせてくれます。https://agri.mynavi.jp/2019_08_21_83413/
同社代表の由井寅子さんは、「農業は一つの品種でOKという訳ではなく、安定的な経営のためには多くの品種をあつかえることが、重要なこと。日本の農家は長い間、多くの作物のタネを採り続けてきた。」といったことを言われていました。
以下のサイトで掲載されている動画を見るとよりよく理解出来ます。
https://twitter.com/SaveSeedsJapan/status/1640372254688301058/photo/1
“むかしながら”が現代の最先端!自然農スタイルを提案する日本豊受自然農
この多くのタネの写真は、おそらく日本豊受自然農で撮られたものだと思われます。
映画では、タネを巡る、重要な法律の動きとして、以下のような説明がなされています。
まず、農業競争力強化支援法は 2017年5月に成立、8月より施行されています。
公的な農業試験場等で蓄積されている種苗の生産に関する知見を(多国籍企業を含めた)民間企業に提供することを促進すべきことが定められています。
次いで、主要農作物種子法(種子法)は、主食である米、麦、大豆を、各都道府県に適した安全で優良な種子を、農家に安定して安価に提供する制度を定めた法律で、1952年5月に制定され、重要な役割を果たしてきましたが、2018年4月に廃止になりました。
それまでは、国の研究機関、各都道府県、各都道府県の指定農家と3年がかりでタネを提供することが行われててきました。国は、三井化学の品種(F1種)を奨励したり、これまで都道府県で築き上げられてきた育種治験(知的財産)を民間に譲渡することを奨励したりするようになったとのことです。
さらに、農産種苗法は1947年に制定され、その後1978年に種苗法に名称変更、1998年等、何度かの改正を経て、改正種苗法は2022年4月より完全施行された。品種登録された登録品種の自家増殖には、育成者権を持つ育成者権者の許諾が必要になり、農研機構や一部の県が育成者権を持つ品種でも、許諾の手続きや許諾料が必要になっています。ただし、手続きも許諾料も求めず、従来と対応の変わらない都道府県も多いということです。
https://smartagri-jp.com/agriculture/4407
これらの改革はいずれも安倍政権下で行われ,国会でも十分な議論を経ずに、強行され、農家の十分な理解もないまま、進められたものです。
タネといっても、色々な殖やし方があり、サトウキビの場合は写真のような、良い茎の穂種から新しい芽が育つのですね。サトウキビ農家は一様に種苗法にタイする期間を訴えておられます。
またイチゴの場合は、元気な主株から派生したランナーを用いて直増殖されるようです。
また、ウドは、収穫後の根を取っておいて自家増殖されます。
http://www.furuya-farm.com/?page_id=4
古谷農産の古谷さんは、種苗法については、「タネは生き延びるために一番大切なもの、みんなで必死に守ってきたもの。農業をやめさせる対策のようなもの」と言われています。
北海道芽室町の大規模農園トカブチは、小麦の「きたほなみ」、大豆の「ユキホマレ」をそれぞれ30ha、有機栽培をしている。タネは自家採種。これらの品種はいずれも登録品種ですが、育成者権は道立農業試験場のようで、あまり心配ないかもしれませんが、改正種苗法の下では。登録品種は一律自家採種禁止で違反すると、10年以下の懲役、1千万円以下の罰金に課せられるということです。農業生産法人では3億円以下の罰金となっているそうです。
なお,この企業については以下のサイトで新しい動きについて紹介されています。
https://www.patagonia.jp/stories/large-scale-organic-farming-is-feasible/story-114804.html
大規模な有機農業は可能だ!
270年間、サツマイモの産地として知られる埼玉県三芳町、サツマイモのフセコミによって、苗を育てる方法が紹介されています。
集まった農家の方々からは、昔から、1.種、2.肥、3.作り と言ってきた。自家採種でも、3年目でこれで行こうと言うことになる。それが企業だとニーズが低くなれば即、やめてしまうことになる。農家にとってはめちゃくちゃこわいことだ。といった意見が出されていました。
一方、種苗育成業者はどう考えているのか、林ブドウ研究所の、林慎悟さんに話をきかれています。新しい品種を開発するのに7年、品種登録に3年かかるそうです。開発費用は数千万円にもぼるという。自家増殖されると、コストの回収ができない。その意味で、改正種苗法はありがたいということです。
山田さんは、果樹生産者も品種が定着するのに5,6年かかるので、育成業者との間で話し合い、契約を交わすのが良いのではないかと思うと述べられています。花卉の栽培ではそれが行われているそうです。
東広島にある広島県が絡んだ農業ジーンバンクを訪問され、これからはこういった地方自治体が絡んだ、活動の大切さを示唆されています。
北海道当麻町で伊藤和久さんは、食料の場合は、著作権などとは違って、自由にすべきではないかという考えを以下のように述べられています。「気候変動などもあり、食糧危機が来ることを感じるが、多様なタネをみんなが分け合って、対応していかないとダメだと思う。そこで権利を主張して、首を絞め合うようなことはいけない。」
本当に、これだけ大切なことを、十分な議論もなく、農家の理解もなく、政府はなぜ推し進めたのか、大きな疑問を感じます。昨今の軍事防衛予算の倍増方針や、ウクライナへの支援、新型コロナ対策などと共通する背景があるように感じます。(その2に続く)
(文責:浮田)
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