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ときわ動物園宮下園長の第9回環境サロン(宇部志立環境学部OB会企画)の概要報告です。

2017年11月16日

第9回環境サロン『生きた動物を通して地球環境問題を考える ~ホッキョクグマは絶滅するのだろうか ~』講師:宮下 実さん(ときわ動物園園長)

宮下さんは1973年来、37年間の長きにわたり大阪市立天王寺動物園に勤務され、15代園長を務められ、その功績に対して名誉園長を授与されている。2010年から2016年3月前近畿大学で教鞭を執られ、その後、ときわ動物園の初代園長になられた。

まず、ミツバチの危機について話され、1990年代から世界中特に北半球でミツバチが少なくなっていて、大問題であるが、日本では危機感があまりもたれていない。
ミツバチがいなければハチミツがとれなくなるということだけでなく、生態系にも大きな影響を与える。イチゴ、メロン、スイカなどの温室でもミツバチが受粉に使われている。
花の受粉は他の昆虫類も役立ってはいるが、ミツバチに勝るものは無いと言われている。

このミツバチの消える原因として諸説があったが、ネオニコチノイドという殺虫剤によることが有力になり、欧州では規制が行われているが、日本は3年前に残留基準の検討が行われたのみで、規制の対応はとられていない。
http://m.greenpeace.org/japan/ja/mid/news/blog/staff/blog/49719/
和歌山の養蜂業者がミカン畑に受粉のために巣箱を置いているが、みかん園で時々殺虫剤を撒くので、ミツバチも死んでしまうことがあるそうだ。

次に、ホッキョクグマについて、写真家内山さんがカナダハドソン湾で撮られた写真を示されながら、話された。現在北米で2万頭程度いるようだが、海の上の氷の上、アザラシが水の中から息継ぎに上がる穴のところで、しとめで主食としている。氷の張らない3ヶ月は他のもので凌ぐそうである。

温暖化によってこの100年間に世界平均は0.74℃、日本は1.07℃、北極圏では2℃の気温の上昇があった。これにより、氷の張らない期間が4ヶ月になればホッキョクグマは生きていけるか心配である。JAXAの資料では、北極海の氷は、1980年9月に比べて2012年9月は半分以下に減少している。

地球温暖化のほかにも、有害化学物質の生体濃縮により、免疫力低下や生殖器異常などの影響を受けているとされた。
http://ijyuu.blog.jp/archives/1035982641.html

これまで絶滅した動物たちとして、16世紀大航海時代に絶滅したモーリシャスのドードー、20世紀に入って、50億羽いたリョコウバト、タスマニアの肉食有袋類フクロオオカミは1800年代から、入植民が切り開いた原生林にヒツジを放牧し、その被害を与えるという理由で懸賞金をつけて狩猟させたなど。

これから滅ぶ動物として、ホッキョクグマのほか、アフリカゾウ、トラ、サイが上げられ、ゾウはイスラム国の資金稼ぎのためヘリコプターと機関銃で殺し、象牙をとる。サイの瘤は漢方薬や中東貴族の護身ナイフの柄に用いられるなど、人間の都合で絶滅に追いやってしまう。図中の数字は宮下先生が想定による絶滅時期である。


さて地史年代の直近の大絶滅は6550万年前の恐竜の絶滅であり、巨大隕石がメキシコ湾の一部にぶつかり、そのための大地震(マグニチュード11)と300mの大津波、それに続く舞い上がった塵のために寒冷化が起こったためと言われている。

今回の地球温暖化はそれに続く大きな危機ではないか、これまでの絶滅は自然の原因で起きてきたが、今の絶滅の原因は人間が作り出しているもので、その重大性をみんなが認識する必要があるとされた。

最後に、ときわ動物園の紹介を簡単にされた。目標として①絶滅危惧種の保存、②環境教育に力を入れること、リニューアルの方針は、コンクリート金網の中の飼育で運動できない展示方法から生息環境展示に切り替えたということであり、天王寺動物園でやり残したことであった由。

写真のキャプションにあたかも自然の生息環境で撮ったように書いているが、常盤公園で撮ったもの。直接動物と接触できるリスザルラフティングやinto the WAOも行われている。
また第1、第3日曜の9時からは園長自らのガイドがあるそうだ。

質疑:
○総選挙は面白かったが、どんな工夫をされたか。
→選挙管理委員会の道具一式を借りたことなど
○昆虫のなかでも絶滅危惧種がいる。地元のチョウチョ、たとえばツシマウラボシシジミの保存のための長崎バイオパークの取組を先日見学した。専門的な支援がほしいところであるが。
→大台ヶ原では、ササ群落にコマドリが巣を作るが、ササが食糧不足のシカに食べられて、コマドリが巣を作れないなど、生態系のつながりを考えていく必要がある。
○絶滅の原因として、外来種の導入が大きな原因に挙げられたが、輸入されたペットが原因になることも多いが。ワシントン条約の規制はないのか。
→ペットは絶滅危惧種ではないので、輸出国、輸入国の許可書をとれば輸入可能である。
先日、環境省の人を案内して、ときわ湖に生息するブラックバスやブルーギルを捕獲して、コツメカワウソの餌にしたいと思うがどうか、ときいたら、色々法律面でややこしいことがあるそうだ。
ハブ退治のために導入したマングースは、前者が夜行性、後者が昼行性のためうまくいかなかった。いまアライグマの影響が問題になっている。ホンドタヌキへの影響が懸念される。
○人間と野生動物の共生は結局どう考えたらいいのか。
→野生動物は人間がコントロールしなくてはならないということ。日本カモシカやツキノワグマもそれぞれ年間1万頭、4千頭の駆除が計画されているが、ハンターの減少、高齢化のため達成できていない。江戸時代はマタギの制度があり、うまくコントロールされていた。
○ときわ公園ではちみつがとれなかったと聞いているが、なぜか。
→秋に分蜂するときミツバチがやや攻撃的になること、スズメバチがミツバチの巣をおそうことがあることに注意が必要。家庭で飼われる場合には何ら規制はないと思う。
○ジャイアントパンダの飼育方法と繁殖率の違いについて
→上野動物園、神戸市王子動物園、和歌山のアドベンチャーワールドで飼われているが、はじめの頃中国政府の管理が厳しかった。年間1頭当たり1億円も払っていた。アドベンチャーワールドは共同繁殖を取り入れて成功し、すでに中国へ16頭送っている。
○動物園間の動物の交換はどうか。
→まずは国内での交換だが、近親交配をさけるために個体の種情報登録システムが15年前から津阿くぁれてる。サルは人間と同じ病気を持つので海外との場合は検疫がやっかいである。ハヌマンラグーンのオスがいないので冷凍精子を取り寄せて人工受精を考えている。
○世界の動物園で印象に残ったところはどこか、また動物は。動物園の経営形態は。
→ニューヨークブロンクス動物園は広大で、自然豊かにつくってある。日本は86動物園のうち70%が公営である。アメリカはほとんど民間である。企業からの寄付や遺産の寄付が大きい。20大のころ、アントワープの動物園で見たバビルサが印象深かった。

司会:「ダーウィンが来た」の中で、ホッキョクグマのことを「氷の上でこそ輝く命」というフレーズがあったが、今日のお話しのように地球温暖化抑制に向けて、日本もアメリカも、われわれももっと真剣に取り組むべきだと思う。

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