大木町副町長による「くるるん」のバイオガスシステムのお話の紹介です。
2017年03月01日
本日の主題である、大木町の境公雄副町長のお話は期待に違わず、大変参考になり、参加された皆さんは非常にいい刺激を受けられたようです。
大木町は、町の中央部で、道の駅に隣接してバイオガス施設を設置していることで、全国的に有名ですが、境さんはこの施設の企画から建設時、環境課長として自ら手がけられた方なので、お話から状況が大変よく理解できました。
大木町の人口は14300人、面積は18km2と、福岡通勤圏にあるコンパクトなまちです。町の職員は5,10分でどこでも辿り着けるので、町民との距離が近く、仕事がしやすい良さがあるとのこと(①)。
農業の盛んなところ(②)で、イチゴ、アスパラ、キノコ(おがくず)の生産で有名です。
まちづくりのモットーとして、「し尿や生ごみを資源として活用するまちづくり」を進められたベースには、昔はくみ取りし尿など肥料として利用したのに、いまは厄介者としてあつかっていることに違和感を持っていた町民が比較的多かったことが大きかったようである。
場所が国道バイパスに面していて、道の駅のレストラン(③)に液肥を利用した地産の農産物を食材やデザートとして出すことによって、差別化し、実際ランチだけではあるg、140ある席がいつでも満席というほど人気があるそうだ。
環境学習の施設としても利用されていて、ごみは燃やすものという常識ではなく、ごみは資源という教えが徹底して、学力テストで正解が得られないといったエピソードもあった。
こういった、し尿処理やごみ処理の施設が、迷惑施設として扱われがちであるが、身近なものとしてむしろ歓迎されるというのは、本当にすばらしい。
嫌気性処理メタン発酵が開放型ではなく、密閉型なので、悪臭の問題もないことも幸いしているとのことである。
先の①、②、③の好条件があって実現したということではあるが、逆に言えば、経済性のみ追求して、広域合併が進み、本来このようなシステムが可能であるはずのところも、都市部の論理で、システムが整備されてしまうことを反省すべきであると思う。
大木町の処理システムについては、これまでも何度か紹介してきているので、そちらも参考にしていただければと思います。
この施設の整備に、道の駅部分も含めて、5年間で11億2千万円かかったが、その
うち半分は国や県の補助、半分は町負担だが、地方交付税による還元があるので
町の実際の負担はさほど大きくはなかったようである。
みやま市のメガシーラーもそうであるが、行政の先見の明があり、議会がそれを支持することで、やるべき事業が先で有利に展開するのである。
生ごみはバケツ回収方式で、10世帯に1つずつ収集日の前日に大型バケツを配布し、各家庭は朝、そのバケツに生ごみを入れる。
不適物の混入はお互い近所同士の目があるために、きちんと守られるとのことである。
技術的に見ると、嫌気性処理後の液肥の農業利用(土壌還元)がポイントであり、
大分県日田市の場合は、メタン発酵処理後、汚泥と液部に分け、汚泥は堆肥に回すが、液部は、高度な排水処理をしている。大きな違いである。
市民アンケートの結果が示されたが、生ごみの分別は、やってみると、あまり大変ではないという意見が98%と大部分を占めているのは注目すべき結果である。
実際、拙宅では生ごみは庭に埋めているが、生ごみを別にすると、残りのごみは紙やプラスチックで、腐らず、1週間以上置いても不快感なく、意外と便利である。
境副町長のお話でさらに印象に残ったのは、ごみの料金体系である(④)。
生ごみは無料で、週2回の収集であるのに対して、燃やすごみは60円/25Lと設定され、週1回の収集である。また、分別プラは15円/50Lと設定され、週1回の収集になっている。
大木町もったいない宣言いいですね、もったいないはマータイさんの専売特許ではないです。
ちなみに、この宣言の時の町長は現町長で、町長になられる前は境さんと同じく、環境課長だったとのことです。
話は前後するが、最後に、事業開始前の平成17年度と、平成27年度の比較の表を示され、平成27年度は、燃やすごみの原単位は事業系を含め、236g/人/日と59%の減少、燃えないごみは大幅に減少して、平成27年度はわずか0.4 g/人/日となり、資源化に回るものが非常に多くなっている。これらの結果、リサイクル率は平成27年度63%と、全国平均より大幅に大きな値となっている。大木町の分別収集の方式については、以下のURLで、http://www.town.ooki.lg.jp/kankyo/2/1439951200549.html
http://www.town.ooki.lg.jp/kankyo/2/2/index.html
パネルディスカッションでは、大木町でうまくいった理由の一つとして、住民とともに考えたから、行政として躊躇したいこともあったかもしれないが、住民と一緒にやってきたから後には引けないということもあったということ(⑤)。まさかできるとは思っていなかったといわれる住民の方もいたし、一歩一歩登っていくと頂上まで登れたといわれたことも印象に残りました。
以上、①~⑤の要素が絡んで大木町のバイオガスシステムが成功したと言えるのでしょうが、やはりキーパーソンの存在が大事で、石川現町長や、境さん達の熱意がなければうまくいかなかったと思います。
長崎大学の中村修先生は液肥の農業利用等について助言をされてきた方で、現在はみやま市で、大木町と同じ方式の循環処理システムの実現に色々助言をされているとのこと。大木町の成功例があるので、比較的速やかに住民の理解が進み、
近く建設の見込みとのことである。右上の表は大木町のごみ等循環事業の多面的効果を示されたが、非常に大きな地域活性化の効果を上げていることがわかる。
http://www.city.miyama.lg.jp/file/temp/1289636.pdf
境さんも言われていましたが、焼却は確かに便利ですが、「何でも燃やしたらいい」という考え方は傲慢な考え方だと思います。
(文責:浮田正夫)
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