新館長のご挨拶と「私の教育論」の第1回です。
2016年04月06日
平成28年4月1日付で、西村前館長の後任として館長に就任しました薄井です。皆様のご協力を得て、まちなか環境学習館が益々活況を呈するように頑張ってまいります。どうぞよろしくお願いいたします。
今後、大略月1回のペースでエッセイ風のブログをアップしていきたいと考えています。皆様には是非、教育関連の方々も含めて読者になって頂き、折々のご意見を頂ければ幸いに存じます。うべ環境コミュニティーは理事長の浮田正夫先生を中心にして、持続可能な環境・エネルギー、ビオトープや里山の環境、環境ボランティア活動、心の環境などをターゲットにして活動を進めてきています。私は館長の仕事に加えて、これまで大学における教育研究活動を続けてきた関係から、若い人たちの教育、社会人の教育に重点を置いた活動を進めていきたいと思っています。もちろん、これまで大学内におけるビオトープの設置と保守、災害救援を中心とした学生のボランティア活動にも携わってきましたので、何れそれらに関連したエッセイも書いてみたいと考えています。
薄井館長は元山口大学教授、19年前に神戸大学に移動して、神戸大学理事・副学長(教育・学生担当)や神戸大学特別顧問(ポートアイランド地区スーパーコンピュータ「京」連携拠点担当)などを経験して、昨年4月より宇部地区に帰ってきました。現在はうべ環境コミュニティー副理事長と宇部市まちなか環境学習館館長を兼務しています。
さて、今日はその第1回です。
受験生の皆さんは、目標とする高校あるいは大学に合格するように頑張っていることと思いますし、社会人の方々も目標とする資格取得などを目指して環境学習館で学習に励んでいるところです。小学校、中学校の生徒さんたちは学習の進行に取り残されないようにご両親や先生方に指導されながら、頑張っていることと思います。でも、試験でよい成績を取ることだけが学習の目的ではなく、本当に自分の進むべき道をしっかりと定めて、ぶれないようにすることが一番大切です。そうすることが、とりもなおさず勉学意欲を高めて集中した学習が可能となり、成績向上にもつながるのです。
私の小学校の時の想い出をお話ししましょう。私は昭和20年代後半から30年代初頭にかけて、香川県の片田舎の「山本町立辻小学校」に在学しました。私の小学校高学年の時の校長先生は、荻田省左右先生とおっしゃる方で、生徒にとても人気のある校長先生でした。荻田先生は、担任の先生が研修等で不在の時は、教室で平家物語や源平盛衰記の話をとても臨場感が溢れた話術で話してくれ、子供達は荻田校長先生が代役で教室に来ると、前回の話の続きをせがんだものです。荻田先生は絵の上手な方で、夏休みのある日、私が校庭を散歩していると、「薄井君、絵具を持って来て、一緒に書こうよ」と誘ってくれました。私は、本当は一緒に絵を描きたかったのですが、相手が校長先生なので遠慮をしてしまいました。永らく、あの時、一緒に絵を描ければよかったのにと、思っていました。
辻小学校第20代校長 荻田省左右先生
辻小学校は平成28年3月、少子化のため143年の歴史を閉じて、
閉校されました。
荻田校長先生は辻小学校のモットーを、校門を入ってすぐの校舎の壁に大書して掲げられました。
若き力 若き命
もくもくと おおらかに
道を急げ 君ら旅人
荻田校長先生は生徒たちに、「君たちは若い、その力で、わき目もふらず、黙々と自分の道を進んで行きなさいよ」といろいろな機会に言って聞かせました。私は後に教育と研究の道に進みましたが、人生のいろいろな段階でこの言葉を思い出して、力づけられました。
昭和30年代の辻小学校学舎入口
(右側の教室棟の壁、フェニックスの右側に「もくもくと おおらかに」の言葉が掲げられていました。)
「もくもくと おおらかに」と言う表現は、学習する上でとても大切です。愚直に道を進むことができるかどうかということは、自分の進む道をしっかりと定めることにかかっています。別の表現でいえば、「志を立てる」と言うことでしょうか。小学校の生徒さんに志を立てろと言っても難しいかもしれませんが、ご両親や先生方は出来るだけ早い機会に子供たち各自が将来のビジョン(早い話が将来何になりたいのか、もっと広くは自分がどんな人になりたいのか)を考える機会を作って頂きたいと思います。そして、一旦目標が定まったら、愚直に黙々と努力する環境を作ってあげることです。このようにして道を歩み始めた生徒は、きっと成績も向上するはずです。
中学生になれば、もうかなりの生徒さんがビジョンを持ち始めていると思いますし、高校生は具体的な進学先を考えなければなりません。でもこの段階でビジョンを持たず、受験勉強に集中すると、大学に入ってアルバイトと遊びにはまってしまう学生になりがちです。そして、人生の目標が定まっていない学生が社会に出ていくと早期退職とか、フリーターとか生活上のいろいろな問題に遭遇して、多くの社会問題が生じているところです。そうならないためにも、しっかりとしたビジョンを子どもたちが持つように指導して頂きたいと思います。
一方、大人の人たちも、いつしか人生の目標を忘れ、日々の生活に流されていく危険性があることを自覚しなければなりません。人生は、志を立てて、ひたすらその目標達成に向けての人格形成の努力を続ける毎日であると思います。だんだんと「若き力 若き命」は失われていきますが、何歳になっても「もくもくと おおらかに」歩み続けることが大切です。子どもはそのような親の生活態度を見ながら育つのです。子どもが親を見る目は、ある面では大変厳しく、小学生程度になると親に対する批判が子どもの人格形成に反映されるのです。だから、私たち大人は、子どもに対して暖かい愛情を注ぐとともに、子どもの目から見て、ビジョンに向かって日々努力を重ねている人間だと映るようにならなくてはなりません。
今回はある程度一般論的な、教育に関する私の意見を述べました。あまり心身の障害や、置かれた家庭環境の不条理性を感じていない子どもたちの場合は、今回述べたような両親や先生方の温かい見守りの中で、ビジョンを見つけるべく、すくすくと育っていくことと思います。でも、世の中にはそれほど単純でない状況に置かれた子どもたちも多いのです。そのような不条理の状況を、どのように受け止めて、どのように克服すべきなのかが、大きい問題になってきます。次回は、そのような不条理の克服をテーマにして、考えてみたいと思います。
ご意見はSNSでもメールでもなんでも結構です。また、宇部市まちなか環境学習館にお立ち寄り頂き、館長の坊主頭を目印に声をかけていただければ、何時でも語り合いたいと思っています。今後とも、よろしくお願いいたします。
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