第10回環境サロン「森林バイオマスのエネルギー利用について」概要です。
2015年11月18日
遅くなりましたが先週のサロンの概要紹介です。今回はビデオ撮影に失敗しましたので、やはり詳し目にまとめています。前半は浮田の後半は河内のメモを元に作成しました。
11月12日(木)講師に再エネアドバイザーの垣村幸美さん(山口県森林組合連合会代表理事専務)をお迎えして、山口県における森林バイオマスのペレット燃料利用と発電利用の現状について話していただきました。体系だったプレゼンをしていただき、有益な議論ができたと思います。
要旨: 県森連は9つの森林組合で構成され、4ヶ所に共販所がありそれぞれ毎月2回の木材市場が開かれている。岩国木材センターでは木質バイオマス事業として、木質ペレットと木材チップの製造販売及び、木材・製品加工等の事業が行われている。
やまぐちログネットとして、登録すればネット上で誰でも木材を購入できるシステムも全国に先駆けて設けられている。
木材価格については、ここ数年円安のため、輸入木材の価格が相対的に上がっているので、国内産の木材の生産もすこし増えてきているが、我が国の木材自給率も2000年前後に20%を切っていたが、28%程度に回復しているものの、丸太価格は、ヒノキは現在20万円/m3程度、スギは10万円以下で、経営的には厳しい状況にある。
山口県では、平成13年度「やまぐち森林バイオマスエネルギー・プラン」を策定し、地域の未利用森林資源を地域のエネルギ-として活用するシステムを構築し、“エネルギーの地産・地消”を目指す、とした。
その後、平成14~17年度は、実現に向けた産学公連携による技術開発・実験事業で林業機械の開発が行われ、平成17~21年度には、NEDOのバイオマスエネルギー地域システム化実験事業として、山口県全域を対象とした「総合的複合型森林バイオマスエネルギー地産地消社会システムの構築」実証・実験事業が行われた。
この間に、現場で伐採・搬出・運搬を行うハーベスタ、スィングヤーダ、グラップル、フォワーダなど林業機械の改良、さらにはチップ製造設備や運搬車両の改善などが行われた。
やまぐちペレットは岩国市で平成18年1月から製造・販売され、100%県産の未利用間伐材等3000トンを原料として(重さで2倍、体積で3倍の木材が必要)、1500トン/年の生産能力がある。樹皮なども含む全木ペレットで、長さ1~2cm,直径6mm程度に圧縮成型した固形燃料である。
チップ化(1次破砕)→乾燥→2次破砕→ペレット造粒→袋詰めのプロセスで製造され、バルク車で県内の木質ペレットボイラー設置施設に配達される。ペレットストーブ用には10kg入りの袋で販売される。
ペレットボイラーは灯油等と燃料併用の施設が多いので、石油の価格が安くなると、ペレットの使用が、とくに公的施設で少なくなる傾向がある。H27年10月では灯油は91円/L、ペレットは42円/lgであるが、熱量単価で比較すると、千kcal当たり灯油10.38円、A重油7.7円に対してペレット8.66円であるが、利便性も考慮される。
宇部市ではこころの医療センター、ときわミュージアム、アクトビレッジおのにペレットボイラーが設置されている。
ペレットストーブは、このミーティングルームだとちょうどいい位の大きさだが、1時間に1~2kgのペレットを消費する。はじめは温まりにくいが、消してからもしばらくは温かい。間接加熱であるので、屋外への排気管が必要なので、この工事が必要になる。
木質ペレットの販売量は少しずつ増える傾向があり、今年度は千トン程度に近づく見込み。ボイラー、ストーブとも、灯油・重油・ガス器具よりイニシャルコストが割高であるので、これがネックになっているが、一般家庭で800kg程度のCO2削減に寄与し、森林の多面的役割の維持にも寄与するので、山口市や岩国市でやられているように設置補助金を考えてもらいたいところである。
一方、木質チップとして、平成22年度からRSP発電事業、平成25年度からFITを移用して中電新小野田火力発電所に19000トン、ミツウロコ岩国発電所に16000トン/年を供給している。前者については、運搬距離の関係もあり、宇部の飯森木材に委託の形をとっている。ただし、H26年度は新小野田のコンベア火災事故のため、全体で31000トンとすこし落ち込んだ。平成30年度には防府に現在計画中の石炭混焼発電所に5~8万トン供給の可能性がある。
再生可能エネによる電力固定価格買取制度(FIT)によって、間伐材の利用が進みつつあると言うことだが、問題は、未利用の間伐材であっても、証明材(規模により税別32円あるいは40円/kWh)以外のバイオマスによる電力は24円/kWhで、輸入PKS(油ヤシ種殻)や輸入木質チップによる電力と同じ価格に設定されていることである。国内産の場合は28円/kWhにすることを要望したが通らなかった。
ペレットストーブの利用によって、熱エネルギーの地産地消、植林によるCO2の再固定するカーボンフリーの資源循環型社会に貢献すべく努力したいと結ばれた。
質疑応答
Q:森林バイオマスカスケード利用とは
A:伐採した木をあますところなく、価値ある部分から順に有効利用するやり方をいう。スェーデンなどでは古くからそのシステムが完成されている。
Q:なぜ国内材が最近使われるようになってきているか
A:円安等の影響で輸入材に比較して内地材の価格が相対的に下がってきたからだが、林業者の経営は厳しいことには変わりない。
C:森林の多面的機能も考えるならば、TPPでも本来はそういうことを考慮に入れた制度にすべきところだと思う。森林づくり県民税のレベルではなく、逆に関税で各国の森林管理をしっかりできるような体制を考えるべきと思う。
Q:ペレット需要を増やすために、ペレットストーブの普及が欠かせないと思うが、森林組合での普及活動は如何に?
A:山口市のスタジオセンスは普及活動に積極的に取り組んでいる。
組合でも視察があったときにパンフレット配布したり、ペレットストーブ設置時に建物に配管のため穴をあける事業者を斡旋したりもしている。
農林中央金庫では毎年ペレットストーブの寄贈事業を行っており、4件/1年のペースでストーブを増やしていただいている。締め切り間近だが、学習館でも考えられたらどうか。
岩国市のペレット製造工場は生産能力が1,500t/年あり、現在は生産能力の2/3まで稼働している。フル稼働させるまで普及啓発を目指している。6年間赤字を続け、今やっと黒字をだせるところまできた。2工場目はつくらないかもしれない。
Q:ペレット製造工場は県の森林づくり県民税を利用して建設しているのか?
A:県の森林税は利用していない。県の森林税の使途は、竹繁茂対策や海岸の植林、道路から離れたところの間伐などである。
Q:株式会社EECL(イークル)が長門の湯本温泉でペレットボイラーを使われている話を耳にしたが?
A:森林組合は週2回納品させていただいている。当初は海外産のチップ、ペレットを使用する予定であったが、森林組合の県内産ペレットを1ヵ月試験的に使用して、より性能が良かったので使われることとなった。なおEECLでは当初鶏糞バイオマスを考えていたが、やまぐち森林バイオマス・エネルギープランの作成もあって木質バイオマスへ転換したようだ。
Q:石炭との混焼事業については微粉を吹き付けて燃焼させていると思うが、岩国の専焼事業の燃焼方式は?
A:申し訳ないが技術的な詳細は分からない。
Q:木質バイオマスでの発電メリットとしてカーボンニュートラルの考え方があったが、山口県で新規事業の認可を受ける際に、本当にCO2削減効果があるとして通用する考え方なのか?
A:現在防府市に建設計画中の石炭との混焼によるバイオマス発電所では、環境アセスメントの手続きにおいて、山口県知事から石炭によるCO2排出量が多いことから、木質の比率を上げるようにという意見が出た。このことで事業者は4~5万tの証明木材を追加するよう検討している。これからはCO2の排出量が多いと事業は成立しないのではないか。
Q:CCS(カーボンキャプチャストレージ)などCO2を回収・貯留する仕組みと関連して、木質バイオマスの排気ガスでもCO2を回収することは可能か?
C:COP21でCO2排出削減の枠組みに関する議論がなされるが、山に手を入れて、森林のCO2排出機能を回復させない限り、目標は達成できないように考える。
A:森林整備に関連して、現在は、個人で間伐をやるというのは少ない。昔は山でやるにはスギと言われたものだが、5年前ヒノキの木材価格52,000円/m3だったのが、現在は19,000円/m3まで下落している。このため国産材は、中国や韓国が「日本の木材を使ってやる」という有様で、今後も価格が上昇することは考えにくい。また固定資産税などの費用がかかることから、山の所有者の気持としては、誰でも良いから山を買ってくれないかという世界。このままでは他国に山が買収されてしまう懸念すらある。
Q:森林組合連合会で実施している2つの事業のうちペレット製造とバイオマス発電はどちらが有効か?
A:ペレットはストーブの普及など出口対策が進んできたとはいえ、作っても使われない。発電事業者がFITにより20年間固定価格とするならば、そちらの方が有効だと考える。
Q:国同士ではクレジット(CO2排出権取引)制度があることが知られているが、個人レベルで使用可能なクレジット制度はあるのか?
A:スタジオセンスではJ-クレジット制度における証明書を交付したりしている。事業者(企業)同士の取引もあるようだ。
Q:山は海ともつながっており、山を整備することで海もきれいになると考えている。森林の多面的機能を発揮するためにも、山を所有している人が、森林保全の活動をするために山を開放してくれれば良いと考えるが?
A:1年に1回の単発的な活動では意味がない。里山整備は通年で行うことが必要。
A:木材需給率は1960年頃は90%だったが、平成26年度は30%程度。TPPによって、国・品目によっては関税が0(ゼロ)になるものあるが、林業関係で栄養を受ける分野は約3000億円程度しかない。
木材は昭和35年から規制撤廃の自由化が行われ、輸入木材が入り込んでいる(丸太は1951年から、1964年からは木材完全自由化)。林野庁では10年後の木材需給率50%を目指しているが、現状では輸出を多く増やさない限り達成はできないだろう。
国産材の現状に目を向けると、ヒノキ40年生ともなると20m以上となり、枝打ちをしなければ、林内に日が当たらず、真っ暗な山になる。手入れをしないと良質な木材にはならない。
C:FITではPKS(パームヤシ核の殻)を使った発電の買取価格が24円/kwhで設定されている。しかし、その背景には、東南アジアではヤシの大規模な伐採で希少な自然が失われていることや、森林火災が発生し、日本のCO2排出量より大規模なCO2が発生しているという問題がある。
こうした問題を背景にした発電の買取価格と国内証明材の木材を利用した発電の買取価格が同じというのはどうにも納得いかない。PKSはわざわざ日本に運ばなくてもインドネシアで利用されたらいいのではと思う。TPPもそこまで考えるべきだと思う(ただし関税には輸入関税だけでなく輸出関税もありなかなか複雑)。
森林税が導入されたことで、森林の多面的な機能に対する対価を支払うという考え方が定着してきたが、コストに敏感な私たちだが、このように私たちが自然から恩恵を受けているという価値観を変えていくためには長い期間が必要になると思う。
C:宇部市で計画されている石炭火力発電所は120万kW、石炭を3~400万t/年使用する計画で、防府市で計画されているバイオマス発電所は木質バイオマスでPKSを含め8万t~10万t/年使用の計画。人口500万のインドネシアリアウ州では電力供給がまだ22万kW、不足の12万kWはヤシ油工場廃液を利用したバイオガス発電などでまかないたいという話を聞いたが、これを見ると現代の私たちの生活が、いかにエネルギーを消費しているかというのが分かる。
Q:広葉樹はお金が入らないと言われたが、広葉樹の使途はないのか。北広島市のせどやま事業は地域通貨をうまく利用して、薪を販売していて、まだ年間2,3百万円の事業だが、その事業はNPOがしていて、注目に値する。
A:椎茸のほだ木、炭の原料、薪ストーブなどもあるが、運搬コスト、設備導入コストで割に合わないという意味。薪ストーブは1万円ちどのものから100万円以上かかるものまである。
2860 0
ツイート
この記事のURL: http://437338.fd6au1zn.asia/blog_view.php?id=3468
◆ 現在、コメントはありません。
この記事へコメントを投稿します。