ごみと化学物質第8回「有害化学物質と子どもの健康」のまとめです。
2012年08月24日
8月23日、昼夜の2回、「アレルギー・炎症誘発体質の真実」の著者である後藤日出夫さんに熱く語っていただきました。昼の部の参加者はこれまででいちばん多かったです。以下はその要旨です。
健康の三本柱として睡眠、運動、食事がある。食べ物は意外に意識して食べられていないことが多い。近年、食生活で変わったこととして、カロリーのとりすぎを挙げる人は多いかもしれないが、1975年まで一時2226kcalまで増えたが、2004年には1902kcalと1946年レベルまで戻っている。運動量が落ちたことが肥満の原因である。炭水化物の摂取は少なくなり代わりに、脂質と動物性タンパク質の摂取量が多くなった。
輸入食品中のポストハーベスト農薬、加工精製された植物油のとりすぎなどが、アレルギーやアトピー、生活習慣病の原因になっていることが述べられた。
ポストハーベスト農薬は日本では諸般の事情により、残留農薬ではなく食品添加物として扱われている。発がん性の不安もあり、農薬としては認められていないOPPやTBZ(イマザリル)がレモンやバナナのポストハーベスト農薬として使われている。厚生労働省がアメリカの強い圧力に屈し1977年に食品添加物としてOPPを認可したということである。国内の農薬管理は割にしっかりしているが、小麦やジャガイモなどの残留農薬基準も輸出国側に配慮して高い値になっているということである。
有機塩素系農薬は分解性が低く、残留性が大きいので、有機リン系農薬が多くなったが、有機リン系の残留農薬が自律神経失調や、メニュエル、パニック障害などの原因の一つになっている。たとえば殺虫剤のトリクロルホンとスギ花粉症の関係など。小麦の食品でアレルギー症状が出るのは輸入小麦のこれら残留農薬の影響と考えられることなど。
植物油は健康に良いというのもまちがった印象で、安定化のために、精製加工時に生成するトランス脂肪酸は悪玉コレスステロールを増やし心臓病や脳梗塞の原因になるということである。精製油消費量は1965年から1995年まで6.5kgから17.5kg/人/年まで直線的に増えていて、それに比例して糖尿病の受療率も増加している。この消費量は4kg程度に抑えたほうがいい。
難分解性のDDTやPCB、有機水銀は食物連鎖による濃縮によって、連鎖上位のマグロなどの濃度が高くなり、イワシやサンマなどの小魚の方が相対的に安全といえる。
玄米中のカドミウムやヒ素が問題になることもある。石炭中の水銀が発電所から大気へ排出され、問題になることもあるなど。
昼の部の議論では、サンマの内臓はあまり食べない方がいいのか、魚の小骨はどうか、玄米にも地域差があるのではないかなどの質問があった。
一般にどんなものでも食べ過ぎは良くない。昔ながらの搾油法による植物油は安全である。
夜の部の議論では、
○メチル水銀の体内の半減期70日前後、脳に入った場合の半減期7~20年なぜそんなに違うのか。→放射能の半減期という意味ではなく、生物学的半減期である。脳に入ると排出されにくい。
○鉛の毒性は? → 絵の具や塗料中の鉛白にも注意する。鉛は甘いので子どもが食べる危険もある。はんだ作業や、猟銃の散弾中の鉛が鳥を汚染し、生態系に影響を与える場合もある。
○たしかにつりの鉛のおもりもかんだら甘かった記憶がある。
○食べるものがないのでは。 → もうわれわれの歳になったらあんまり気にせずに楽しくいただくことが大事だと思う。
○現在は昔は問題にならなかったような子どものアレルギーが増えているが、輸入食品の残留農薬などが原因しているのか。 → 国内の農薬については管理がわりにきちんとしているので、それなりに安心できると思うが、たしかに輸入食品の増加が関係しているのではないかと思う。
○どんな油ならいいのか。 → 昔ながらの絞り方のナタネ油などはいい。オリーブ油もエキストラバージンオイルなどはいい。シソ油、エゴマ油などもいい。
○1970年代の生まれの子どもはあまり積極的に結婚したがらない傾向があるが、化学物質の影響か。 → 複合的なものなのでなかなか難しいが可能性はあると思う。
○食パン1枚に含まれるトリクロルフォンでスギ花粉症になりうるというのは驚きだが、祖母がカビが生えにくいパンは危険だといっていたのを思い出した。われわれ団塊の世代はこういった食品を食べて、アレルギーが多くなったのか。 → ラットで行われた実験でその可能性があるということ。全般に複合的なので明確に関連づけることが難しいが、精製油の消費量と糖尿病の受療率の関係の相関グラフは自分でもびっくりした。秋葉原の事件なども、食品の影響もあるように思う。
○こういう食品の危険性を訴えられているのに厚生労働省はなにも動かないのか。どうしたらいいのか。 → 国の食品安全委員会にはまじめで優秀な学識委員が議論しているが、毎回膨大な文献が事前配布されて検討されるようだが、お膳立ては官僚がやるので問題である。官僚は業者の意向もふまえる。 現在の本は少し難しすぎたので、後半の質問については、わかりやすい本にして出したいと思う。食品安全行政に対する批判も、今日の話のより抑えた表現になっている。
久しぶりに、食品の安全性について考えさせられました。Ustreamはhttp://www.ustream.tv/recorded/24904297
次回は本シリーズ最終回で西村誠さんが化学物質による公害の歴史も振り返り、まとめを行う予定です。
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