1月25日の第5回ESD研修会(長友義彦先生)のお話の内容を紹介です。
2020年02月09日
2019年度ESD研修会「学校教育等における地域教育力の活用~柳東小学校における
コミュニティ・スクール構想と実践~」長友義彦先生 は2020年1月25日市立図書館講座室にて行われました。
長友先生は、以下のような多彩な経歴をお持ちです。
最初は、萩市大島小学校(人口1,200人、子ども数100人)に勤務され、大切な経験になったそうです。その後、恩田小学校、新川小学校勤務を経て、宇部市教育委員会教育指導主事(H15~17年)、県教育委員会義務教育課厚狭分室、県教育委員会教育政策課・義務教育課に移られ、この間1年間は文科省出向されています。その後、下松市立下松小学校教頭、宇部市教育委員会教育課課長補佐(1年間)を経て、山口大学教育学部教育実践センター教授を4年間勤められます。今年度4月より柳井市立柳東小学校校長をされています。
学校の裏手の山の道路からはきれいな瀬戸内海が見られ、「すぐれた景観のふるさとに帰りたいな」と思う人を育てたいと思われています。
柳井市は、白壁の町、金魚提灯まつりなどで有名、柳の井戸、茶臼山古墳、豊かな歴史文化もあります。
金魚提灯は北前船で弘前ねぶたから伝わった。吉田松陰の先生でもあった僧月性ゆかりの地としても有名です。前方後円墳である茶臼山古墳からは日本最大級の大鏡が見つかっています。
ESDをとくに意識してはいないが、実質はかなりやっているのではないかと思うとの言うことでした。
今の時代は、①グローバル化、②少子高齢化、③地方衰退・都市部集中、④AI・Society 5.0の時代、⑤価値観の多様化であり、いま12歳の子供たちが30年後42歳になるころの予測は困難である。これからの若者はどんな力を持っている必要があるのか。
来年度から新しい学習指導要領が実施され、これからは知識を詰め込むような教育では対応できず、主体的に学ぶ力、理解力、集めた知識を活用するのかとか、人間として大切な、心の問題など不易の部分はあるが、新しい時代への対応力も身につけなくてはならない時代であるとの認識です。
https://www.mext.go.jp/a_menu/shotou/new-cs/1383986.htm#section3
コミュニティ・スクールは平成16年から、学校運営協議会が設置できるということで始まっている。平成29年にはその設置が義務化された。
左下の図に、地域と学校の関係の変遷が紹介されている。
戦後間もない時期の地域社会学校期、1964年東京五輪前後の学校と地域の乖離期および、地域再生期、その後1987年から開かれた学校期となったが、池田小学校事件があり、1996年から学社連携・融合期(保護者・地域住民の参画を促すが、一方で学校への要求が多くなりきびしくなる時代)を経て、2004年のコミュニティ・スクール期(地域とともにある学校づくり)に入る。2015年以降最近はスクール・コミュニティ期(学校を核にした地域づくりに変わりつつある)となっている。3.11で避難所の運営に、地域がうまく機能した経験を踏まえ、地域づくりにもつながる。地方を元気にすることにも有効であるので、政策として進められた由である。
学校運営協議会の役割は、保護者、地域住民、教育委員会が適当と考える委員で、学校の運営について協議し、その意見は、法律に定められているので効力がある。
以下、具体的な例として、柳東小学校での取り組みについて紹介された。
まず、象徴的なものが芝生の校庭である。これは地域の「芝生の会」の人がすでに10年管理してくれている。子ども達のよい遊び場となり、卒業した中学生や高校生も懐かしんで見に来ることも多く、小学生にサッカーなど教えたりもしているそうだ。
学校側としては、以下に配慮して、①説明責任と情報の公開、②外部意見の反映、③地域資源(人材や環境)の活用、④学校施設の開放、⑤学校機能の開放
多くの地域の人達に関わってもらい、学校運営協議会を通して、学校教育目標の共有、学校教育目標達成のための課題の共有、課題解決のための方策の共有を図っていくことになる。
学校運営協議会委員と教職員の間で、「どんな子どもに育てたいか」の熟議も行われ、教育目標の共有が図られている。SWOT分析の結果、地域の強みとして、自治会のまとまりがいい、周辺住民が協力的、公民館が近く連携がとりやすい、教育委員会が協力的などの強いがあげられる一方、親師会や学校運営協議会の組織的な運営ができていない、家庭の教育が十分でない家庭もあるなどの点が挙げられている。また、学校側で改善すべき点としては、地域の教育資源が十分活用されていない。前年踏襲のことが多いなどの点が挙げられている。
学校支援の類型としては、学習支援と環境支援があり、それぞれ専門性によって、ゲストティーチャー型(教科指導・ものづくり指導・伝統芸能演示・商売の仕方・農業学習・平和学習・歯みがき指導・租税授業・部活指導)、学習アシスタント型(読み聞かせ・子ども達による人権教育に関する発表の参観日、同じくまちづくりに関する参観日・コマ回し・料理教室・登下校見守り・自転車教室・避難訓練等)、および施設メンテナー型(芝生の管理・プール清掃・、環境サポーター型(草刈り・花壇の世話・通学路の点検等)がある。
地域の人達に自分たちの発表についてほめてもらうと子ども達は大感激するそうだ。
歯みがき指導や学校保健安全委員会での睡眠指導でも、大人でも参考になる話が聴ける。
また地域の人達がプールの清掃などでプロの技術を見せると、子ども達は「わぁ~カッコいい!」といって感心する。
逆に地域への働きかけとして、子ども達が、介護施設の訪問、公民館のお祭りへの中学生とも連携した参加など、地域に出て行って、地域の人達と触れ合うことも行われている。津波避難訓練に保育所、介護施設や地域の自治会や消防団にも声をかけて、やると連携していただいた。消防団も自分たちで住民に直接呼びかけるのは大変ということで、喜ばれ、消防車を出したり、マイクで参加を呼び掛けたりしてもらった。
このような取り組みが結果的に、子ども達の意識をたかめ、地域の人達から社会のことを知ることができる効果もあり、同時に関わる大人の学びの場になることを実感している。地域に対しても①地域教育力の向上、②地域の活性化、③学校への苦情の減少 といった効果をもたらしているとのことである。
学校の授業や行事を保護者・地域の住民に開くことで、大人の学ぶ場にもなる。こういったことが、新しい学習指導要領の中の、「社会に開かれた教育課程」が狙っていることだと思われる。
山口大学にいた時、全県下、全数調査ではないが、学校の先生、地域の人、子ども達にアンケートをとった。その結果、学校や地域でふれあう大人の活動や様子を見て、自分も頑張ろうと思う。地域の人が授業に参加されると、学習に楽しく取り組める、ということがわかった。
学校の敷居が高いと思う人は半分程度おられるが、地域の学校の役に立ちたいと思う人は7、8割おられ、思う人のうちで実際に参加している人は40%くらいで参加していない人は35%おられるので、まだ協力していただける方はかなりおられる。地域の学校の存在が自分の元気につながっているとする人は6割ある。
持続化のためには
・学校への協力は得やすいが敷居が高い
・地域連携カリキュラムや行事年間の予定を示しておく
・諸団体・個人への声掛け 学校運営協議会や地域学校活動推進員(コーディネータ)を通して。あまり学校の負担が大きくならないよう配慮が必要。そのためのシステムが未整備
・学校現場ではゼロ予算が多いが、ある程度教育行政として予算の確保も必要
小学校の72歳の同窓会が最近行われ、校歌をうたって楽しかったといわれていた。学校は
地域をつなぐ存在であり、愛されているということを改めて感じた。
今回、先生のお話をお聴きして、柳東小学校においては、すでに多くの地域の人達が、防災教育、人権教育など様々な授業支援等に関わっておられ、それが子ども達にも、また授業参観の参加者も含め、地域住民にとっても、よい刺激となり、大変よい効果を生み出しているということに感心させられた。
質疑
・柳小学校の校庭の芝生化はどんな経緯で始まったのか。他の学校はどうか。私は20年ほど前、文科省の方針で、校庭の芝生化を進めるという動きがあり、芝生化管理指導士の試験を受けたことがある。
→柳井市では本校だけである。
(後日確認したところ宇部市の場合は、平成23年の藤山小学校をはじめとして教育委員会もかなり力を入れてきている。三好先生によると、運動場全部の4000m2に今も芝生が残っているが、管理は以前は地域の人がやって下さっていたが今は高齢化でできず、管理職の担当になっているとのこと。いくらか管理の予算は出ている。子ども達は存続希望のようである。https://www.city.ube.yamaguchi.jp/kosodate/shouchuu/shibafu/index.html )
・西宇部小学校も宇部市内で2番目にサブグランドで芝生化をした。管理は地域の人が管理したが、今は教頭先生が本気でやっておられる。昨年は雑草を刈るのに1,2回出たことがある。
・里山ビオトープで子どもを集めてアウトドアで遊ばしている。3,4年生、5,6年生が感受性が強く、心の発展に寄与できればいいなと思っている。中学高校になれば勉強主体なるので、小学校時代のこのような体験教育が大事だと思っている。
・自分の小学校時代を思い出しながら聞かせてもらった。このような教育の意味や背景を小学生はどう理解しているか。またその効果のほどはどうなんだろうか。
それと、子ども達がやったことを大人からほめてもらうと、子どもの成長につながるというのは自分の経験からしてもそう思う。
→CSの評価は時間がかかるので難しいが、先のアンケートで、管理職39名、教職員39名、学校運営協議会委員38名、保護者30名すべての層において、第一番目に「子供の学びや心の成長に効果があった」という回答傾向が得られている。ゲームで遊ぶ子どもが多くなりコミュケーション力が弱いことが認識されており、いろんな人と関わることが心の成長につながっていくのではないかと考えられている。
・お話や議論を聴いていて、自分ができることは何かを考えたが、子どもと多様な人との交流が非常に重要であることが印象に残った。これまで、放課後子ども教室等に関わった時でも、大人は担当の先生と我々だけのことが多かった。地域の人も来てくださいと呼びかけもした方がいいかと感じた。また少年少女発明クラブの活動を指導員16名で続けているが、高齢化で世代交代が図れていない。保護者にも呼びかけると3組くらい来てくれるようになり、保護者間の情報交換や世代交代の可能性もあるのではないかと思う。
→授業参観をうまく利用するといいかもしれない。授業の中でやると、大人が一生懸命に取り組むと、子どもそれに倣う。大人が楽しんで参加すると、子どもも楽しんで参加する。学校運営協議会については、年3回の開催では、学期ごとの報告が主体になってしまい、それでは本来の協議する場にはなりにくい。つい先月会長さんの後押しもあって、月1回1時間第一火曜日に5時から6時までにすることになった。地域に潜在的な力はかなりあると思われるので、学校からの発信が大事であり、学校運営協議会の活性化が重要だと思う。
新川小学校時代、当時大学院に社会人入学して、福祉学習をどうするかというテーマについて、地域の方にずいぶん手伝っていただいた。宇部は地域のポテンシャルは高いので勿体ないなと思う。管理職がどれだけ本気になるかということも大事かなと思う。
・学校の方がわれわれに何を期待しているのか、子ども達にどういう能力をつけたいと思っているのか、CSの実態がよくつかめないという印象を持っている。
→学校から 県下の学校でCSがうまくいっているところは、学校からどんどん情報を出すことが大事。上宇部中学校などは非常にうまくいっている例だと思う。
一方で、学校側が困っていることを言わないことも多い。委員から残業時間の実態など問えば、その状況が説明され、問題意識が共有できる。なにか手伝えることはないかといった声も出てくる。
・学校運営協議会の委員を何年かしているが、学校も多忙で、会議すら持てないケースもある。学校評価だけで終わってはだめだと思う。
→校長は2,3年で変わるが、「地域に帰ってくる子ども達を育てたい」とかそういった明確な理念やビジョンがあれば、引き継がれていくと思われる。校長の意志が大事だ。学校運営協議会の活性化については県教委の課題でもある。
・最後に持続性の課題も示されたが、ほかにどんな課題があるか。柳東小学校のCSのレベルは優れている方だと思うが、どうだろうか。
→必ずしもそうではなく、いろいろな課題もある。手伝ってくれる人が固定化する傾向があると、世代交代の面からも保護者の方の参加を多くするなどといった課題はやはりある。
・柳井市に市全体の学校運営協議会連絡協議会のような組織はあるのか。我々の考えていることを伝える場があまりない。
・シーズとニーズの調整する場がないということか。
→市全体としての連絡協議会はないが、柳井中学校のCSは8小学校をカバーするので、ある程度はその役割を果たしているともいえる。
・宇部の場合は、全市の連絡協議会があり、各校区運営協議会長が集まって意見交換する場が設けられている。
・学校運営協議会のほかに学校の広報はいかに行われているのか。
→学校のHPから学校だよりを見てもらう、学校だよりを校区の自治会の回覧んで回すほか、学校での行事の写真を公民館など人が集まるまるところに掲示させてもらったりするようにしている。
本日は大変具体的に内容のあるお話をしていただきありがとうございました。今後、我々の活動に活かしていきたいともいます。
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