第3回 ESD研修会 「コミュニティースクールの有効活用上の問題点について」の報告です。
2018年10月04日
9月29日(土)図書館の講座室で伊藤一統先生による第3回ESD研修会が開催されました。
前回の教育長さんのお話とは、学識経験者として、あるいは市民側から、CSの位置づけ、課題とその対策について話していただいた。
先生の専門はもともと教育社会学であり、宇部フロンティア大学では保育学科に所属されている。市立藤山小学校、県立宇部総合支援学校の学校運営協議会委員、宇部市社会教育委員のほか、やまぐち県民活動センターや宇部市民活動センターの運営等にも関わっておられる。
コミュニティ・スクールとは、「学校運営協議会」を設置している学校のこと。
地方教育行政の組織及び運営に関する法律 第47条の6(H16改正)により規定されたが、普及は遅かった。H29改正で、学校運営協議会の設置を努力義務化がなされ、普及が進みつつある。また、複数校で一つの協議会を設置することを可能になった。
学校運営協議会は
○校長が作成する学校運営の基本方針の承認をすること
○学校運営について、教育委員会又は校長に意見を述べることができること
○教職員の任用に関して、教育委員会規則に定める事項について、教育委員会に意見を述べることができること
とされていて、その以前にあった学校評議会は意見を言うだけで、このような権限はなかった。かなり重い責任があり、身分は公務員に準じる扱いとなっている。
山口県や宇部市でCSの取組は、公立の全小中学校で行われ、また、高校や総合支援学校合わせて15校でも学校運営協議会が置かれるなど、全国はまだ10%位のところ山口県では120%といったところで非常に進んでいる。小中一貫の複数校にまたがるCSについては宇部市では川上中学校区で先行している。
CSのメリットとしては、
まず組織面から、法律に基づいて継続的な組織により、学校運営に参画し、学校と地域が目標・ビジョンを共有した協働活動が可能になる。校長が替わっても引き継いでいける利点があり、また権限を有するということで当事者意識をもてる。日本の教育は行政依存型で、地域とともにある学校にしようという流れである。学校が目指している方向も理解して、地域も関わりやすくなる。
教育面から、ESDに関連づけて言うと、こども達が自立性・判断力・責任感などの人間性や、人と人、人と自然の関係性を尊重する態度を養うにも、地域の関わりは有効であると思われる
次にこれまでコミュニティ・スクールに関わってきた中で 感じた課題についてであるが、まず文科省の検討された課題としては、①CSの制度そのものあるいはそのメリットについての理解不足 ②権限の活用がなされているか 国の教育政策そのもの、指導要領等を理解した上で意見がなされるか。③組織として持続可能か。独自の活動予算がない。学校後援会に依存している。委員も準公務員としながら、無報酬。専属の事務局も置けない。④縦割り行政の問題点、など。
いよいよ本論だが、こういった課題をどう克服するか。
第1回研修会に参加して、いろいろ面白かったが、まず学校をよく理解することが大事である。
学校とは何か。学校は社会維持のための装置。社会の中で生きていけるよう育てる。
文化を継承していく装置。アメリカではキリスト教の関係で進化論を学校で教えない。本来、学校と社会はともにあるべきだが、日本ではこれまでその関係が十分ではなかったこともあり、本当に、ともにあることを望んでいるか、問題である。この辺りの再認識が必要だ。学校が行き詰まりを見せている中で、学校運営協議会を効果のない対症療法に終わらせないために努力が必要だ。
さらに成果主義の中で、CSの成果も求められることになるが、学校のCSの関心も、学力の向上になりがちなのも問題である。
学校運営協議会のミッションはやまぐち型では、学校支援、学校運営、地域貢献になっているが、単純に並列ではない。PDCAで評価もしなくてはならないが、A3用紙にびっしり書いてある資料を短時間に見て評価することはそう簡単ではない。
CSはいい制度だが、うまくやらないと、疲れるだけで、あまり成果が上がらないということもあり得る。
文科省は「社会に開かれた教育」の重要性を指摘し、①社会や世界の状況を幅広く視野に入れ、教育理念を社会と共有していく。②これからの社会や世界に向き合い、関わり合って行くために求められる資質・能力を育んでいく。③学校教育をその目指すところを社会と共有・連携しながら実現させる、として、CSにESDの内容を盛り込んでいく方向性が指示されている。
教えるには、何倍も学ばなければならず、社会の変化に対応して学校もたえず学んでいく必要がある。
組織としての協議会のあり方
感想としては校長先生や教頭先生が替われば、がらっと変わる可能性がある。日程や議題の調整や会議運営の仕方も工夫が必要。宛て職の委員では難しい場合がある。事務体制の問題など、色々ある。
文科省もこの辺りの課題について、克服の重要なポイントとして
①関係者が当事者意識を持つこと。目標ビジョンを共有するために熟議を重ねること。
②学校と地域の信頼関係を構築した上で、学校と地域が共有した目標に向かって協働する。③学校は校長のリーダーシップのもと教職員全体が力を発揮できるようにマネジメント力を強化する。 を上げている。
それぞれ、熟議には時間が必要、相互の信頼関係が重要であり、真の協働を目指す必要があること、ピラミッド型の中にミドルリーダーを位置づけることなど、説明された。
また「協働」チェックリストの例として、対等の原則、自主性尊重、自立化、相互理解、目的共有、公開の原則という、横浜市の例が参考に示された。
情報の共有ということが意外に重要であり、これだけでも大きな効果が期待できる最重要なポイントであるとされた。
回覧板で学校だより、あるいは学校のHPに掲載するなど。
中間支援の重要性
教育委員会にCSコンダクターが配置されているが、本当は各校に1名くらい配置してほしいところ。普通は教頭先生が学校側のコーディネータ役をされていることが多いが、大変多忙なため、これではなかなか手が回らないことが多い。
ミドルリーダーは学校の中で確保することも、やる気の旺盛な先生がおられれば別だが、一般には簡単ではない。
地域の世話役としてコーディネータやファシリテータも当然重要である。また、行政の関わりにも期待されるところだ。
結局、CSは昔の地域と学校の関係を取り戻すことではないかと思う。学校の先生方と地域の人達のつながり、顔を知って挨拶ができる関係など。地域が家族になる。藤山校区では「藤山家族」。見守りの人がつきまといと言われることもある。顔の見える関係が失われてきた。運営協議会の委員さんだけでなく、地域の人全体に広めていくことが大事ということ。自治会の役員さん達と他の委員さん達と知り合いになることもメリットである。
いい学びをできるような空気、風土を育てる。
学校をかすがいにして、地域をよくする。埴生小中学校とふれあいセンターを同じ敷地の中に建設する計画は面白い。
ボランティアは無償だという考え方は持続可能ではないのではないか。
労働自体は無償ではいいが、CSもそういう要素があるのではないかと懸念している。
進んでいるところは資金を確保している。香典返しの一部をNPOへ寄付してもらう。居酒屋でこのお酒を飲んだら10%を寄付するとか、寄付文化が育つことにも期待するが、そのためには、その団体の活動がリスペクトされることが条件だ。
ESD協議会がどうCSに係わっていけるかだが、まず、ESD協議会とは何者か。どういう貢献ができるか。指導要領のどの部分にどのように係わり支援できるのか、具体的にメニューを提示することなどが大事だろう。、
・まずは相手を理解する。
・相手に理解してもらう。
・記録を残し、きちんと報告し、礼状を送る。
・信頼を得ることになる。
・継続性ためには、無理しないこと
最後まとめとして、二つだけ重要なものを抜き出すとすれば、
◎学校は社会をよくするために重要で、CSは学校と社会の改善にとって非常に有用
◎しかし理解を伴わない量的拡張はCS施策を危うくさせる。 ということである。
質疑:
○PTAと学校運営協議会の関係は
→子どもの教育に関わることなので、どうしてもPTAが中心になるところが多い。PTA会長がやる気があれば活性化する。まれに自治会等の役員が強い地域もあるにはある。
人依存の要素がある。
○昔の地域社会を取り戻すという話があったが、社会が随分変わってしまっているので、難しいのではないか。
→その通りだが、できるところからやればいい。とりあえず、顔見知りを増やすことからやればいいと思っている。見守り制度で全て犯罪を防げる訳ではない。地域全体で見守ることを目指さなければならない。
○学校運営協議会の委員報酬も出ないのは、責任が重いにも関わらず、それでいいのか。
→確かにそう思うが、行政として市民の協力に期待しなくてはならない状況がある。しかし完全に只でというのは考え直す必要があると思う。協議会の活動費は確か雑費として年間3万円程度しかなかったと思う。
○ウィンウィンよりギブギブの関係と書いておられるところがあるが、どういう意味か。
→このような活動に参加する人の心構えを書いたまで。
○われわれのメンバーは環境学習をベースにしているので、CS全体に関わることは難しい。
→学校の先生方は、専門でない内容をそれぞれ外部の専門の方に助けてもらうのは、先生方の負担が軽くなるのであれば、ありがたいはず。英語教育などは先行している。
○資金調達で奉仕団体がCSなどに協力することはないのだろうか。
→こどもエコクラブの支援など、スポット的にはあるのではないか。奉仕団体のみではなく企業のCSR活動も関連するかも知れない。
○放課後子ども教室から初めて、徐々に信頼関係をつくり、学校の授業を支援する可能性も出てくると思う。
○学校運営協議会の構成は、人数も含めて、校区により様々だ。
→藤山小学校では、PTA役員経験者など部会委員が入っているので、人数が多い。
○CSのそもそもの目的は? どういう子どもを育てたいと思うのか。
→教育は、地域・家庭・学校でするもの。地域について学校運営協議会に期待するということ。子どもの教育は学校でするという分業社会。社会性を教えてほしいと、保育の現場から言われる。 こういう面は地域の方々にかかわってもらう余地がある。
ただ、中身については学習指導要領があるので、大きくはみ出ることはできない。
やまぐち型では地域貢献が重視されているが、やや問題があるのではと思う。
○学校の教育目標をどうするのかもさほど簡単ではないだろう。
○数年前に地域計画をつくったことがあったがどこかCSを位置づけたところがあったか。
→なかったのではないか。学校市民。企業も入れてはどうかという意見を言ったが取り入れられなかった。
○宇部市全体の学校運営協議会はあるのか。
→ある。中学校区で代表がでている。年3回程度開催している。そこでの議論の情報を地元へフィードバックすることも重要だ。
○学校は、勉強するところ というのが一般のとらえ方。校区見学で、地域の方が付き添ってもらった。挨拶をしたり、色々ケアしてくれる。
家庭のケアにも地域の人が関わっていただくとありがたい。
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