第2回環境サロン「子どもから家庭の省エネを拡げる~エコレンジャープロジェクト」を開催し、19名が参加して活発な議論が行われました。
2018年08月03日
まず、宇部市地球温暖化対策ネットワーク(UNCCA)の殿河内さんが、トヨタ環境活動助成を受けて行われているエコレンジャープロジェクトの1年次の結果について紹介されました。助成額は、2017年.1月~2018年12月の2年間で150万円と言うことです。
また、2017年4月からは環境省の地域コミュニティーを活用した地球温暖化対策推進事業の助成を受けたFMきららとの緊密な連携が行われ、両者相まって充実した成果があげられ、幸い2018年度も環境省事業は継続が認められたとのことです。
プロジェクトの目的は、以下のようです。
(1)家庭における省エネ行動を推進し、根付かせる。
(2)子どもを主体とする事により次世代に繋げる。
(3)家族の対話による家庭内コミュニケーションの促進。
(4)家族全体の地球環境への意識向上に繋げる。
UNCCAとしては、エコレンジャー隊員募集に予想外に苦労があり、全体に結構人手も係る事業であったそうです。市内の多くの場所に募集チラシを配布したり、その他連絡等々、専用の人を雇用したとのこと。
FMきららの1~2分のインフォマーシャルでも10回流し、ようやく目標の100名を超える103名の隊員を募集することができた。環境省事業の省エネファミリーは目標50家族のところ、79家族になりました
。
調査期間は7~8月の3ヶ月間で1月ごとのチェックが行われた。
省エネチェックシートの提出は、7月75名から9月72名に3名減少し、おうちチェックについては、20項目中7月の平均15項目から9月は17項目に増加した。エコドライブチェックについては、同じく10項目中7項目から8項目に増加した。
比較的実施率の低い項目は、おうちチェックでは、①LED、②エアコンフィルタ掃除、③プラグ抜く であり、エコドライブチェックでは、①燃費把握、②早めのアクセルオフ、③タイヤの空気圧 であった。
電気料金検針票の提出は67名であった。電気使用量の平均は471kWh/月、最小は79 kWh/月(母子家庭)であった。家族一人当たりでは平均111kWh/人/月であり、隊員の家族人数は4.2人と比較的多い。 対前年比で見ると、増えた家庭分は除外して平均6.8%減であった。
本プロジェクトによる年間のCO2削減量は、おうちエコチェック分7.4トン、エコドライブチェック分2.1トンで合わせて9.5トンと試算されている。
参考までに、なお「COOL CHOICE」の賛同者数は500人目標の所1020人であり、環境省は成果指標としてこれを重視しているとのことであった。
また、山口県の「省エネエコポイントキャンペーン」へも隊員がエントリーしたところ、約500名中の順位に、①1位~5位(5,000円のクーポン券)は該当0名、②6位~25位(1,000円のクーポン券)該当11名、③26位~250位(500円のクーポン券)該当51名であった。
2年間継続できることで良かった点
1)1年目の反省を活かして2年目に反映できること
たとえば2年次は、募集チラシを教育委員会を通して約8,600名の小学校全員に配布した。1年目中止した省エネ研修にはソーラーカー工作教室を併催する。さらに隊員とのコミュニケーションにはFMきららの助言でLINEを追加して効率が上がった。
2)希望者は多く集まったが、40%は継続希望者を残し、さらなる進化を期待している。
FMきららとの連携により、不特定多数の過程に省エネ実践を呼びかけることができたこと、イベント共催によりUNCCA主催のイベントがパワーアップが図れた。また、エコキッズアワーへの出演もいい経験になった。
終了時点で参加者から送られてきたメールの中で、家族で環境について考えるいい機会をもつことができて良かった。なかなか意識して取り組むことがないので、実際にチャレンジしてみて良かった。エコ活動をこれからも継続していきたい、などなど、こちらが意図していたことが伝わって嬉しかったとされた。
質疑(前半)
①待機電力に関する指導はされましたか。難しい面もあると思うが。
→特にやらなかった。たしかに必要なことと思う。たとえばインターネットはやや注意を要する、テレビなどは効果がある、など。
②隊員のこども達の役割としては何を期待したか。
→家族内のコミュニケーションと子どもによる省エネ活動のチェックです。
③省エネチェックシートのチェックは定性的、やはり電気使用量といった定量的評価を重視すべきではないか。
→確かにその通りで、優秀者の評価についても、はじめは定性的評価も含めていたが、その後、電気使用量やその対前年度だけを評価するようにした。ただし、定性的なチェックシートも、省エネ方法のメニューを示す意味で重要である。自治会のプレゼンで省エネクイズをやるが、内容に興味を持ち理解してもらう上でも効果がある。
④2年間継続により、保護者の中からスタッフとして協力してくれる可能性のある人がおられますか。
→参加家庭に温度差があり、2年目継続の40%の家族の中には、そういう可能性のある人も見いだせるかも知れない。
⑤FMきららのエコキッズアワー55分番組35回と、随分多くの放送がなされたようですが、広報効果のほどはいかがでしょういか。 当初からUNCCAとFMきららの連携を考えて、申請されたのですか。また後者の環境省からの助成金はどの程度だったのでしょうか。
→視聴率は5%程度かなと、思っていたが、イベント時にアンケートを採ったところFNきららを聞いているという人が20%、エコキッズアワーを聞いたという人は少し落ちるが、意外に高かった。
トヨタ環境活動助成は2017年1月からスタートして、FMきららの環境省事業は4月からであり、始めから連携を考えていたわけではない。たしか400万程度だったと思う。
⑥隊員の保護者の世代はどの程度か。それによる違いはあるか。
→だいたい30歳代前後が多かったと思うが、あまり世代による違いはわからない。
津島さんの問題提起:
最近の異常な気象状況をみて、ほとんどの人達は、それが温暖化ガスの排出によることを認識しているが、その意識が行動に結びつかないのが問題である。
産業界の省エネと比較すると家庭部門では取組が遅れている。そこで、産業界が取り組んでいるPDCAを継続的に回していく環境マネジメントシステムの家庭版として、「家庭のエコ活動システム」を作成し、市民の間に普及させていく取組を始めつつある。
0)まず家族で話し合って、「我が家の環境方針」を定め、取組の成果として経済効果は家族の楽しみに生かす。
1)P計画: その方針のもとで、計画段階として、現状把握、削減目標の設定、削減費用と削減効果の算定等をおこなう。
2)D実施: その目標達成のために、取組を実施し、見えるグラフに記入して、加須区民亜賀見れるところに貼っておく。領収書名で証拠書類を保管する。
3)C点検・検証: 月一回、環境家族会議を開いて、目標の達成状況を見て、検討。場合により、目標の再検討も。
4)Aレビュー: 年一回、環境レビュー会議を開く。必要に応じて専門家派遣要請。き、PDCAが回っているか確認する。必要によって環境方針を変更する。活動の結果削減相当額の使い道(旅行・食事・省エネ機器の購入など)について話し合う。
イベント時のエコ教室などで、普及を図っているが、まだ20家族程度。省エネに限らず、水の使用、ごみの排出なども含めてもいい。ぜひ継続的な取組になるように持って行きたい。できるだけ普及を図っていき、宇部市の名前あるいは、それが無理ならば、うべ環境コミュニティーの名前で認証も出せるようにしたい。
質疑(つづき 後半)
⑦先日、林修の講演会を聴いたとき、なにか伝えたい場合、どの世代の人やどの層に伝えたいのか、焦点を絞ることが非常に重要であることが指摘された。お二方の取組の場合、どこに焦点を当てているのか。
→殿河内:UNCCAの場合、小学生とその家族だが、FMきららの場合は不特定多数のリスナーを対象。エコレンジャー応募者はすでに意識のある層であろうが、後者は、たまたま番組を聴いていて、関心を持ってくれるかも知れない。
→津島:イベント時エコ教室でも、聴いてくれるのは年配の人が多い。若い人達は関心が少ないように思う。SDGsの重要性に対する順位が低いということで、価値観の変化が求められる。
⑧やはりボトムアップが大事だと思うが、その意味では学校教育の位置づけが重要であり、これに焦点を当てていくべきではないかと思う。
→赤田:小学校の教員の負担はすでに過重で、これ以上何かを加えると言うことは至難である。よほど十分に、プロセスやカリキュラムとの関係、方法など、どういう形で学校を支援していけるのかを検討し、体制をつくらないとダメだと思う。
⑨3年間、家計簿をつけているが、これを解析して、有効な環境家計簿として活かしていくために、どのような課題があるか、重要な項目をピックアップしたり、できれば、友の会、消費者の会や、今回参加されている方々で検討して、市民に提案することできればいいかもしれない。
⑩このようなことを考えられる人は、すでに環境意識の高い人、また生活に余裕のある人に属するのではないか。意識はあっても行動につながらないという話があったが、行動の後押しになるものがないのが問題だ。その意味では、やはり 強制力ということが必要ではないか。
⑪毎月の電気料金がいくらですかと聞いても答えられない人が多いのは問題である。比較的電気料金が安いと言うことかもしれない。
⑫だいたい炭素税が少なすぎると言うことではないか。
このような活発な議論がなされたが、今回UNCCAの取組は非常に意欲的なもので、有効なものであるという印象をもった。ただ、これを市民全体に広げていくのは、やはり難しい面があり、国のトップの強力なリーダーシップで実行のある対策がなされる必要があると感じた。そのためには、国民の価値観や真剣な関心がなくてはならず、今後も地道な活動が必要であると痛感した。 (MU)
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