環境省プロジェクト自然共生ESD指針部会の研修会(野鳥)の概要ブログです。
2017年12月09日
「自然共生の環境学習における野鳥観察の位置づけ」
寺本明弘さん( 宇部野鳥保護の会、きらら浜自然観察公園)
コメンテーター:白須道徳さん(ときわ動物園)
概要ブログのやり残しがたまっておりますが、とりあえず記憶に新しいところで、一昨日の環境省プロジェクト自然共生ESD指針部会の研修会の概要をまとめました。
山口県は渡り鳥の交差点といわれる。渡り鳥には、夏に日本に渡ってきて繁殖し、冬は南方で過ごす夏鳥(ツバメ、カッコウ、ハチクマなど)、夏に北方で繁殖し、冬に日本に渡ってくる冬鳥(ガン、カモ、ヒシクイ、ハクチョウ、ツルなど)、冬は南方、夏はシベリアで繁殖して、日本は春秋に通過する旅鳥(シギ、チドリなど)の三種類ある。
だいたい島伝いに移動するようであるが、ちょうどやまぐちけんはこれらの渡り鳥の交差点的な一にあたり、全国的に有名な野鳥観察場所になっている。
宇部野鳥保護の会の活動としては、①市内の野鳥観察を通して親睦を図る、②小野湖のオシドリ観察会の実施、③他団体との連携協働により活性化を図る の3つに重点を置いている。
調査活動としては、毎年1月にガン・カモ調査、毎年春・秋にシギ・チドリ調査を行っている。これまで10年間のデータの蓄積があり、今年5月に作成した「宇部野鳥保護の会40年の歩み」にまとめられている。
ガン・カモ調査では、厚東川河口、ときわ湖周辺、小野湖で行われ、ときわ湖のカモ類は2011年まで7,8種、600羽程度見られたが、2012年以降6,7種類、2,300羽程度に減少している。ホシハジロはこの2年見られない。2011年2月にトリインフルエンザのために白鳥の殺処分が行われたことと関係しているようである。
一方、小野湖のカモ類は、種類数は最近増加気味、個体数も比較的安定している。オシドリは1500羽程度から1000羽程度にやや減少気味だが、ホシハジロはこの2年増加している。
シギ・チドリ調査は、岐波、白土、床波海岸、厚東川河口で行われ、山口県絶滅危惧種Ⅱのシロチドリ、マテガイを好むそうだが准絶滅危惧種のミヤコドリなども見られる。カニを好むチュウシャクシギ。キョウジョシギの名は色彩の関係で京女からきているそうだ。海岸の場合は、干潮時は鳥の姿が小さくて見つけにくい、また周囲から目立たない色をしているので、見つけにくい傾向がある。
野鳥は環境の指標として重要であり、これらの調査の他に、山口県自然保護課が実施するレッドリストの改訂のための調査にも協力している。県内を100メッシュ、さらに4つずつのサブメッシュに分け、繁殖期(4~6月)、越冬記(12~2月)に30人程度の調査員が協力されていて、寺本氏も4,5メッシュを担当されているとのことである。
結果の一例として、キビタキは1986~89年に比較して1997~2000年には全域でかなりの増加が見られる。また近年の注目種として、リュウキュウサンショウクイ、クロツラヘラサギがあげられた。クロツラヘラサギは世界的な希少種であり、韓国沿岸の小島から、日本、越冬は台湾やベトナムであるが、最近は日本でも冬を過ごせる気配もある。地球温暖化の影響もあるのではないかということである。
次に観察会のことについて、小野湖のオシドリウォッチングは、2016年度は10月から3月にかけて6回実施し、1回当たり20名程度、延べ124名が参加した。中には遠方からの参加者もいる。参加者の一人は、オシドリを観光の目玉にしている鳥取県日野町で、小野湖のことを聞いたそうである。日野町はドングリや古米を撒いて餌付けし、1000羽のオシドリが見られると言うことで、1万人の観光客があるとのこと。
これに比べると、小野湖の場合は 入り江が多く、木が覆い被さっている所も多いので、見つけにくく、また案内しにくい難しさがある。
たまたま明日の土曜日午前中、ときわ公園で、ふるさとコンパニオンの会と共催してミコアイサの観察会を実施されるそうである。この行事は隔年で行われている。
また里山ビオトープ二俣瀬でも毎年5月に野鳥観察会を実施し、双眼鏡などで野鳥を見ることは初体験の参加者も多く、感動されるようである。
白須さんのコメント:
①2011年の殺処分以降以降、野鳥の種類、個体数が減った原因としては、それまでハクチョウの餌のおこぼれを食べに来ていたが、それがなくなったことが大きいと思う。
全体的には、モニタリングの場合、調査の精度も考慮しておかなくてはならない。
②観察会の参加者が少ないことについて、里山ビオトープは比較的こどもの訪問が多いが、その中でも野鳥の観察会となると、こどもの参加は少ないようである。こども達の参加を増やす工夫が必要だと思う。
③ESDの観点からいうと、こちらから一方的に教えるのではなく、こどもに考えさえることが重要だ。生活の目線で鳥たちを見てもらい、こどもの目線で考えてもらうようにしなくてはと思う。スタイルも決まりすぎている面がある。家族もともに参加することも大事だし、工作などと組み合わせることもいいかもしれない。
→きらら浜でも工作もやっている。たとえば、ペン立てやウグイス笛などつくらせて、おみやげにするなど。ただ準備が大変といこともあるし、親のケアで土日は出にくいこともあり、難しい面がある。
④巣箱作りもやって、自分たちのがつくって、巣箱を木につける作業を一緒にやるとこども達は喜ぶ。どんな鳥が入るのか時々見てと言って、その場限りにしないなど。
また一度、きらら浜にもツバメが6月~9月、何千羽とやってくるが、これまで2回、落ちたツバメの雛を拾ってきて飼いたいというこどもがいた。本来はいけないことになっているが、それじゃ親になったつもりで飼ってみなさいと、指導したことがある。後でその飼育記録を作文にして、こどもは優秀賞をもらったり、将来は獣医になりたいとか野鳥に関連する事をやりたいとか言ってくれた礼もある。
ツバメを題材にして、何を食べているか、どういうふうに餌をとるかなど、プログラムを作って、それを事前に学校や地域の人達に説明して、こども達に来てもらえればいいがと考えている。
→最近、学校の状況変化もあるのだと思うが、学校との関係が疎遠になりつつある。昔は学年全体が、遠足や社会見学という形できてくれる学校もあったということである。
⑤ときわ動物園でもゾーンごとに飼育員が説明をするが、時間的な制約もあり飼育員がしゃべるだけになり、問いかけをしない。こども達に考えさせるような工夫が必要なところである。非常に時間が短く、こども達に問いかけをする間がとてもない状況である。ときわ公園が、きらら浜に来ていたこども達をいくらかとったかも知れない。事前に説明することが大事かも知れない。
以下質疑等:
○事前の出前講座もできれば有効かも知れない。先生達の研修も大事ではないか。時間も長めにとってもらうことも希望しておいた方がいいのではないか。
○鳥の魅力を感じさせるようないいクローズアップ写真やビデオを利用すべきではないか。恐竜があれだけ人気があるのはこどもにインパクトあるからだろう。3年前に600mmの望遠レンズを買って撮影をしているが、カワセミやキジの美しさには感動する。とっかかりとして、身近な鳥もすごく美しいことに気づくことが大事ではないか。
○たしかにオシドリの観察会でもみつけにくかったり小さすぎたりして、そういう工夫も有効だと思う。小野湖で撮られたオシドリの見事な写真を見せていただいて、感動した。
○竜王山で、体験教育をしている友人が言われるには、こども達に自然を教えるのではなく、感じさせることが大事だということだ。そういう意味では野鳥はなかなか難しいところがある。
○ありふれた身近な自然であってもその中に身をおいてこども達に何かを感じさせることが大事だと思うが、それをガイドする環境学習指導者が意外に少ない。指導者候補の方々や先生方に研修機会を設けて、「いま鳥が鳴いたね」とか、言えるといいのではないか。
県や市の施設としては、受益するこどもの数が少なすぎるのではないか。
専門家の養成やエリート教育と、こどもに自然を触れさせ、感じさせるということは少し分けて考えるべきではないか。いつも感じることとして、全体に、エリート教育に力が入っていることになっている。
→こども達ができるだけ沢山来てくれれば、家で家族に話したりして、徐々に広がっていくのではないかと思う。
○全くやらないより、少しでもやると言うことが大事だと思う。やらなかったらゼロだから。里山ビオトープ二俣瀬で親子観察隊をやっているが、今年は18家族26,7名の参加である。きらら浜のように設備に恵まれていないので、山あり、谷ありで安全性確保のためにも4,5名が対応している。こども達をひきつけるつかみが必要だと感じている。
→きらら浜の場合は、色々な所を一度に見るわけではないので通常2人で対応している。
例年、バードウォッチングを月1回、こどもベンチャークラブも月1回定員25名で同メンバーでシリーズでやっている。
○きらら浜では、何かもらえるとか、鳥を見つけたら、カードにチェックする、ラリーカードを集めるとかいったことはやっているのか。
また植物の名前や、鳥の名前も十分わからないので、その当たりの知識も必要だと思う。→土曜日14時から工作教室をしている。カードについては、野鳥カードを作っている。毎週、鳥の種類を変えて、クイズを解いたら、その鳥のカードがもらえるようにしている。⑥ ホタル、昆虫、魚、植物、探鳥の中では野鳥が体験しにくいので参加が少ない。スタンプカードなど、いろいろ工夫が必要だと思っている。
○きれいな写真をプレゼントするとかも考えてもいいのではないか。
○いろいろやっているが、タケノコ掘りが人気がある。200人くらい参加する。タケノコを自分で見つける、自分でとるので満足感が大きい。鳥でもこういう鳥を見つけたら、すごいよ、とかいうと
巣箱づくりもやったことがある。掛けた巣箱を家族で来てみなさいとかいうと一生懸命つくる。面白いと思ったら、、
○メリットがなければこどもは参加しないというより、もっと純粋に自然を感じるとか自然と一体に
→1回目は面白いと思わないと、きっかけにならないということもある。
○青森県のリンゴ畑のリンゴをネズミが食べるので、フクロウを入れたら、うまくいったというのをテレビで見たことがあるが、面白いと思う。
○圃場整備の環境調査で、鳥や、植物など調べなければならないが、名前を調べるのにすごく時間がかかる。インターネットで教えてもらうようなサービスがあればありがたい。○希少種の保護値咲くとしてどんなことが行われているのか。
○渡り鳥の保護のために。霞網の禁止と中継場所の保全地の確保が行われている。
⑦山階鳥類研究所が足輪をつけて個体識別をしないと、どこに中継地点の芦原を残すべきかを知るための調査をしている。フェイスブックなど通じて、状況が徐々にわかりつつあるようだ。
広報不足でやや参加者が少なめであったが、非常に活発な意見交換ができ、有意義な研修会になった。また野鳥の専門家も色々大変だなあと言う感想をもった。
(文責:浮田)
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