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第50回水環境フォーラム山口 瀬戸内海の栄養塩濃度の変化についての多田先生の講演を聴きました。

2017年01月29日

第50回水環境フォーラム山口が昨日山口大学工学部で開催されました、平成4年の夏に第1回が開催され、それから夏は宇部、冬は山口で、それぞれ山口大学工学部と山口県環境保健センターが交互に、25周年の節目です。

特別講演として、香川大学の多田先生と愛媛大学から日向先生が招かれ、海域の環境管理について興味深いお話をしていただきました。

多田先生は、瀬戸内海の栄養塩の推移と漁獲量の関係について、豊富なデータに基づいて、わかりやすく話していただきました。

幸い、今回は学生さんも含め、60人程度の参加者がありました。

瀬戸内海は、瀬戸と内海が交互に存在する多島海で、流域に3400万人の人口を要し、工業出荷額は全国の30%を占めています。それだけに陸域の影響の大きな海域です。

右上のグラフに示されるように、面積あたりの漁獲量は世界有数であり、豊かな海といわれています。

面積あたりの一次生産量と同じく漁獲量の関係は右の図のように、漁獲量は一次生産量の1.5乗に比例するような関係が示されています。
http://citeseerx.ist.psu.edu/viewdoc/download?doi=10.1.1.364.7684&rep=rep1&type=pdf
これに多田先生の瀬戸内海でのデータをプロットすると、少し上にずれた位置に示されるとのことです。

しかし瀬戸内海の漁獲量は左下の図に示されたように、1985年をピークにして減少低下を続けています。昔は赤潮も頻発していましたが、水質汚濁対策が進んで、赤潮の発生も1976年の299件から2011年89件と少なくなり、水はきれいになりましたが、豊かな海ではなくなってきています。

その原因としてはN,P等栄養塩濃度の低下による一次生産量の低下が考えられますが、国土交通省の水質調査の結果では、TN、TP濃度は1985年前後に比較すると、やや低下の傾向が見られますが、漁獲量の低下ほどではないように見えます。

一方、水産部門で測定されている浅海定線調査の栄養塩類の濃度は、播磨灘の例を示されましたが、無機態Nは1990年からやや低下の傾向を示しています。無機態Pは横ばいの傾向を示しています。

瀬戸内海東部海域の公共用水域水質測定データのうち、沿岸部に近い定点での、TN、TP濃度は低下の傾向が見られます。

沿岸近くの工場排水などによるN、Pの供給が水質規制や、生産品目の変更などにより、減少し、沿岸における植物プランクトンの生産が低下した可能性も大きい。

後援の中で多田先生は、陸域からの栄養塩の供給よりも、底泥からの溶出による供給がより大きいことを強調され、ご自身の測定結果に着いても紹介されました。

また、水質の変化は陸域からの排出量の減少を早く反映するが、底質の変化は水質に比べて何年かの時間遅れがあること、また海域によっては外界からの負荷もかなり大きいということも指摘されました。

自分としては、瀬戸内海のように陸域の影響が比較的大きい海域においては、やはり陸域からの負荷を第一義に考えることが重要であると考えています。


当然のことながら、漁獲量に影響を与える要因は栄養塩の変化だけではなく、護岸の人工護岸化、埋立面積の増加、干潟や藻場の減少の影響もある程度の時間遅れをもって漁獲量に影響を与えていることも事実だと思います。

自然現象は複雑な要因が絡むので、百%、原因を明らかにすることは大変難しいことです。ある程度目星がついたら、思い切って対策を実施し、うまくいかなければやり方を改める、いわゆる順応的対応が大事ではないかと考えます。

多田先生、参考になるお話をありがとうございました。

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