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北九州市立大学松本亨先生のお話「紙おむつのリサイクルの環境保全効果」の続報です。

2017年01月19日

大木町は福岡県南部にある人口14600人のこじんまりした町ですが、生ごみの分別収集、バイオガス処理に成功している貴重なモデルとして全国的に有名です。

ごみの分別の種類は27分類もあります。

バイオガスシステムのフローは図に示されているとおりで、浄化槽汚泥、し尿、家庭からの生ごみを原料にして、バイオガスを発生させ、発電に利用するとともに、液肥は無料で農家に利用されています。

バイオガスの施設は道の駅「くるるん」に隣接してあり、液肥で育った食材を利用した、レストランも人気です。この道の駅関連の雇用は61人だそうです。

家庭からの紙おむつの分別回収も全国初であり、し尿処理を含むごみ処理費用は平成23年度で2億円程度であり、6,7年前に比べて、3千万円弱節約されているそうです。
http://www.recycle-ken.or.jp/k_seika/2015/0401_SINYO.pdf

安易なごみ焼却に依存する自治体がほとんどですが、温暖化対策だけではなく、食物成分の循環利用の面からも評価できる方法であり、全国的に見習わなければならない取組だと思います。


ここまで分別が進むと、ごみの扱いはずいぶん楽になりますが、筑後南部地域では、環境省がすすめる地域循環圏構想に従って、硬いプラを含むその他プラスチックのペレット化、油化の事業を7市町を中心に検討されています。

地域循環圏とは、ごみ資源の特性や、地域特性に応じて、それぞれのごみ処理リサイクルに好適な広域性を持たせてリサイクルシステムを構築すべきであるとする考え方です。

家庭からのその他プラスチックごみの排出原単位を10kg/人/年とすると、南部筑後30万人に対して3000トン/年の排出量になりますが、実際はそれだけ回収するのは難しく、とりあえず大木町に約1500トン/年の一次選別設備と廃プラ油化施設を設ける計画のようです。

この計画により、環境省モデル事業の試算で、2915トン/年のCO2の削減、約2900万円の経費節減が期待できるとのことです。



松本先生のお話の冒頭、高齢化によるごみの排出量等への影響について、以下のように指摘されました

①今後、ごみの排出原単位が比較的⼤きい単独世帯の数が増加する
②ごみの分別や排出の困難化する
③介護を要する高齢者や高齢者の⼀人暮らしが増加する
④遺品等の処分に伴うごみが増える
⑤在宅医療廃棄物の増加 などである。

ことに、大木町のように、ごみを多種に分別する場合は、行政として分別支援体制を考えることが重要であるとされました。

さらに高齢化が進めば、訪問回収サービスを強化する必要があると思われ、包括支援センターを司令塔に、ケアマネ・民生委員・社協・ヘルパー・シルバーから対象世帯をリストアップ し、台帳整備して、訪問世帯の確定をしていくことになるだろうとされました。


関連して、大木町で、高齢者を対象に調査されたアンケートの結果の一部ですが、
生ごみの分別は高齢者層でも、一部要介護の高齢者などを除いて、ほぼ定着しているようです。

これに対して、紙おむつの分別については、分別できていない要支援、要介護の高齢者の割合は大きくなっていますが、その中には紙おむつを使用していない人も混じっているために、それを除くと生ごみの分別とほとんど変わらない傾向になっています。

松本先生が2013年に、大木町におけるシルバー人材センターあるいは子育て支援センターの利用者を対象にして実施された別のアンケート調査では、紙おむつの分別回収の総合評価は総じて肯定的に評価されているという結果が得られています。

高齢者世帯も多分別への協力率が高いこと、紙おむつの分別回収事業は好意的に受け入れられていること、ごみ出しサポート事業への満足度も高いこと、副次的効果として、ごみ出しサポート事業による高齢者の見守り効果が出現していること、また2事業による自治体の環境政策への理解・関心の向上があることもわかったとされました。

多岐にわたるお話でしたが、一同大変良い勉強をすることができました。ありがとうございました。
(文責:浮田)


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