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100%の彼女 (perfect woman) との出会い
2016年11月03日
人は「100%の彼女(あるいは彼氏)」だと感じる相手と、たとえ一瞬でも出逢うと、幸福感を感じるものです。今日は、私が出逢って愉しいと感じた思い出をお話しすることとしましょう。
1.マダム-ポンパドールをご存知ですか。
伯爵夫人ポンパドールはルイ15世の寵(ちょう)が厚かった人で、多くの画家が肖像画を描きました。その中で、私はモーリス・カンタン・トゥールが1755年に描いた夫人の肖像画が好きでした。フランス社交界で才をうたわれ、多くの人に愛された女性でした。
最初にこの肖像画を見て心を打たれた時から、20年ほど経った或る時、私はロンドンの地下鉄の駅の向かいのホームに立った女性が、一瞬にしてマダム-ポンパドールの再来だと言う印象を受けました。現代の女性ですから、社交界の衣装をまとっているわけではなく、よく見ると瓜二つと言う訳ではないのですが、毅然とした彼女の立ち姿に、マダム-ポンパドールの肖像がありありと浮かび上がったのです。
間もなく反対方向の列車が入ってきて、一瞬の邂逅はその幕を閉じましたが、私の脳裏には、今も彼女の立ち姿がマダム-ポンパドールの肖像と重なり合って、消えずに残っています。
2.ムリリョの聖母マリアと出会ったお話。
17世紀のスペイン画家、ムリリョの聖母マリアを私は好きで、若いころに水彩画で模写をしたこともありました。しかしながらマリア様にお会いすることはなく、何時しか現実の世界の生活を続けて年を取っていくこととなりました。それから25年ほど経過し、オーストラリアの王立メルボルン美術館を訪問したとき、突然この絵が目の前に現れました。スペインのどこかの美術館に収蔵されているとばかり思っていた私は、驚いてじっと見つめたまま、「マリア様はここにいらっしゃったんですか」とつぶやいてしまいました。暫くこの絵の前にたたずんだ私は、静かに別れを告げて美術館を後にしました。
懐かしい方との邂逅は、思いもかけずに訪れて、静かに別れが待っているのです。
3.緑の館のヒロイン リーマ の声を聴いたと思った瞬間。
ウィリアム・ハドソンの小説に、「緑の館」があります。南米のジャングルの中で成長していく少女 リーマの悲劇的なお話です。
オードリー・ヘプバーンがリーマを演じた映画が1950年代に制作されていますが、私のリーマのイメージはオードリー・ヘプバーンとは少し違っていました。でも、具体的なイメージが映像化されている訳ではありません。
さて、私が30歳代の後半に、中国科学院の招待で中国各地の研究所を歴訪したことがありました。その途中で、大連の空港のロビーを歩いていた時のことです。空港のアナウンスメントを読み上げている女性の声が、とても優雅で美しく聞こえました。盛会中の色々な空港のアナウンスメントを聞きましたが、あのような話し方、声の美しさに出会ったことはありません。勿論、中国語が理解できたわけでなく、多分、韻を含んだ表現であったのかと後で思いました。その声を聴いた瞬間、これは緑の館のリーマが、密林の高い樹上で歌っている声なのだと直感しました。
このように、何かの刺激で、心の奥にしまってある大事な人の面影が蘇るのは、人生の愉しみの一つであると、常々想う次第です。皆さんも、緑の館を読んで、リーマを心の中にしまい込み、何時か、何処かでリーマに逢える日を待ちませんか。 (HU)
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