「プラスチックごみの処理について」 山口大学 樋口隆哉先生
2016年10月02日
リサイクルプラザWG 第2回研修会は、「プラスチックごみの処理について」山口大学理工学研究科創成科学研究科の樋口隆哉先生のお話を聴きました。
文系の方もおられるので、プラスチックの基礎的な知識から、容器包装リサイクルの仕組み、プラスチックリサイクルに関する最近の動き、マイクロプラスチック汚染の問題まで、幅広いお話でした。
プラスチックは多くの優れた特性を持った優れた素材ですが、一方で長所である安定性が、自然界で分解しないという短所にもなっています。
チョコレートやチーズのような可逆的な熱可塑性の、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリスチレン(PS)、ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ABS樹脂など、クッキーや玉子のような、不可逆的な熱硬化性を持ったフェノール樹脂 (PF)、エポキシ樹脂(EP)、メラミン樹脂(MF)、尿素樹脂((UF)、ポリウレタン樹脂 (PUR)、シリコン樹脂、などなど、多様なプラスチックがあります。
生産量の多いプラスチックは、PE、PP、PVC、PSの順になっています。
また、原料として使用される石油は全消費量の2.7%と比較的わずかな割合であり、いかに燃料として使用されている石油が膨大であるかがわかります。
日本におけるプラスチックの生産量は1980年には750万トンでしたが、1997年には1500万トンをこえましたが、最近徐々に低下し、2014年には1060万トンになっています。廃棄物排出量は、925万トン程度で、うち一般廃棄物が48%、産業廃棄物が52%をしめる。
プラスチックは収集ごみの湿重量割合でで11.5%をしめる程度であり、70%がその他の容器包装プラである。ポイ捨てごみで目立つ、ペットボトルはプラごみのうち16.5%をしめる。
見た目の種類分けの方法としては、ボトル類、カップ類、トレイ類、フィルム類といった分け方ができるようである。
リサイクルの方法としては、材料リサイクル(MR)、化学原料リサイクル(CR)、熱利用(TR)があり、CRには、モノマー化、ガス化、高炉還元剤、油化など、TRにはRPF、セメント、ごみ焼却発電などがある。
2014年度では、TRが58%、MRが22%、CRが3-4%、単純焼却が10%、直接埋立が7%ていどとなっており、再利用率は83%とされている。
MR(焼く200万トン)のうち、使用済み品が64%、生産加工ロス品が36%で、ペットボトルが47万トン、フィルム類が23万トンと比較的多い。
容器包装リサイクルの制度的仕組みについては、先日の地元企業の見学研修会でも説明を受けたので紹介を割愛することつぃ、環境省で検討されたLCAのレポートから、リサイクルをした場合に、リサイクルせずに単純焼却した場合、どの程度のCO2削減効果があるのか、LCCO2比較のグラフが紹介された。
右側の図で、左から2番目の全量焼却して高効率発電を行う場合に比較して、全量リサイクルした方が、なお相当な削減効果があることが示されている。
プラスチック利リサイクルに関する。南筑後の新たな取組の紹介は後述するとして、現在感心を集めている、プラスチックごみによる海洋汚染、マイクロプラスチックによる汚染も問題について、最近の調査結果が紹介された。
左の図は5mm以下のマイクロプラスチックの調査結果であるが、興味深いのは、瀬戸内海yよもむしろ、日本海や太平洋の沖合の方が、むしろ、20個/m3に近い大きい値が得られていることである。波や紫外線の作用によって、徐々に細かくなるということが原因なのか、なお検討の余地がある。
右の図では、その他石油化学製品の浮遊密度であるが、こちらはやはり瀬戸内海沿岸で、200~300個/km2に近い値が得られている。しかし日本海や東シナ海などの沖合でもそこそこの値が得られていて、ゆゆしい問題であると言える。
今回驚いたのは、化粧品や、練り歯磨きなどの製品にスクラブ剤というマイクロプラスチックビーズが使われていると言うことであり、これらは0.3mm以下といった、非常に小さい粒子であり、生分解性もないので、おそらく下水処理場でも完全に除去できず、多くが結局潰瘍に流出している可能性がある。すでに無機系などの材質に転換されつつあるようであるが、このようなものは、即刻、使用禁止の措置を急ぐ必要がある。
福岡県南地区後地域におけるプラスチック等循環高度化モデル事業が、大木町やみやま市で行われているようであり、その紹介があった。この地域は、大木町のバイオガス処理、みやま市の電力小売業への参入など、先進的な取組が行われている。容器包装プラスチック以外の、プラスチックごみについてもリサイクルの輪を広げ、地域のリサイクル産業を活性化するねらいがあるようだが、新たな展開が全国のモデルになっていくことが期待される。
ちなみに、環境省プロジェクトの関連でも、見学研修の候補として考えている。
容器包装リサイクル関係では、リサイクル費用を払わないただ乗り業者の存在、財政難からプラの分別収集をやめる自治体も出てくる、下流の市民の側からすると似た材質の製品プラス廃棄物を含めたリサイクルを考えるべきであるが、費用負担が問題、などの議論がなされているとのこと。また、太陽光パネルや水素貯蔵用容器などなど、絶えず新しい廃棄物の処理リサイクル技術の開発が必要であるとされた。
質疑では、今回は時間が十分とれなかったが、以下のような議論があった。
リサイクルのLC-CO2は確かなものなのかについて、質問が多かった。
・廃棄物減量等推進審議会でも、もうこれ以上やることはないんではないかといった意見も出る。高効率なごみ焼却発電をするのに比べて、本当にそれだけCO2削減効果があるのか。
・石油の新たな使用量は削減できるだろうが、プラ生産原料用としてはわずか2.7%の使用割合であるので、さほど大きな効果があるとは思えない。
→詳細な計算条件が示されていないので、ここでは軽々に判断できない。
その他、
・プラスチックの原料をバイオマスに切り替えて、酵素分解やガス化により、石油原料を代替する技術開発に期待すべきではないか。
・昭和電工の生分解性プラスチックの技術開発も進んでいる。
・わずか2.7%だし、また、ごみの11.5%しかないプラごみをリサイクルするより、燃やした方がいいのではないかとも思う。
・93%分の燃料分ももちろん減らす機運があるのだから、削減効果があるならリサイクルすべきなのではないか。2.7蔵だからそれは継続して使っていってもいいのではないかという考え方もできる。
・CO2だけではなく、難燃剤の含まれたものを焼却すれば臭素系のダイオキシンが発生したり、また、マイクロプラスチックでも添加剤としての可塑剤などの影響も考える必要があるのではないか。
・プラごみが大量に発生する状況をみると、人間のおごりの象徴のように感じる。
石油のわずか2.7%といっても、プラスチックごみは500万トンに近い。その千分の一でもポイ捨てされれば、5千トン。
→プラスチックの長所と短所は、裏腹の関係があり、むずかしいところ。使い方の注意も大事ではないか。
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