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HUさんの環境・エネルギーの視点(その5)- たんぱく質の構造解析と人工光合成の研究最先端
2016年05月11日
前回の記事では人工光合成の研究の動向と、バイオミメティックな情報を基にした触媒開発研究の重要性を述べました。葉緑体に含まれるたんぱく質の構造解析に注目すると、どのようにして構造解析を進めるのかという点を理解していただく必要があります。そこで今回はX線回折による構造解析とその前段階としてのレーザーのお話をします。これらの情報を基にした人工光合成研究の触媒開発については次回のブログで述べることとします。
レーザーは1960年にA.Javan等により開発され、早くから商品化が進みました。発振波長は可視(543nm;緑色)から赤外(3.39μm)にありますが、632.8nmの赤色の物が最もポピュラーで、最大出力が75mW程度のものまであります。最近は半導体レーザーが主流となっています。
He-Neレーザーは真空容器内にHeガスとNeガスとを封入し、レーザー細管を通して放電を行わせ、細管の両端に設置したミラーに閉じ込められた光と、レーザー細管内のレーザー媒質との相互作用により、レーザー光を得る装置です。
微細なものを観察するのには顕微鏡を用いますが、レーザーの単色性をうまく利用したものにレーザー顕微鏡があります。特に物質の表面観測にはレーザーを走査する方式の顕微鏡が多用される傾向にあります。しかしながら、可視光は波長が長いので、もっと倍率を上げるためには、電子顕微鏡が用いられます。
透過型電子顕微鏡を用いると、ウィルスとかDNAなどの外観も観察できますが、それらを構成するたんぱく質の構造を決定するためにはもっと他の方法を用いる必要があります。1953年にワトソンとクリックが遺伝子の本体であるDNAの構造をX線回折写真などの情報から2重らせんであることを明らかにし、DNAの2重らせん構造に基づいていかにして遺伝情報が子孫に伝わるかが明確に示されました。たんぱく質の結晶にX線を照射すると下図に示すような回折強度の画像が得られます。
放射光という新しい強力で波長選択可能なX線光源が利用され、新たな位相法が開発されたこととで1990年代に解析能力が指数的に増加してきました。また、この間に得られた回折強度データの処理、位相決定、構造精密化などのプロセスが飛躍的に進歩したソフトウェアとともに、スーパーコンピュータの性能が指数関数的に向上してきたことから、たんぱく質構造データバンク(PDB; http://www.rcsb.org/pdb/) に登録されるタンパク質立体構造は年々増加してきています。
日本では世界最大のシンクロトロン放射光施設であるSPring-8(兵庫県佐用郡)とフォトンファクトリー(高エネルギー加速器研究機構、茨城県つくば市)が放射光X線結晶構造解析データ測定に使われ、理化学研究所横浜研究所GSC(神奈川県横浜市)のNMR施設でNMRを使って日本全国の大学、研究機関など構造生物関連の多数の研究グループによって日夜タンパク質の立体構造解析が行われています。
次回は放射光を用いた光合成たんぱく質の構造解析と、人工光合成の触媒開発の現状について述べます。 (HU)
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