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HUさんのエネルギー・環境の視点-1 太陽光発電のフロンティア
2016年04月11日
新エネルギーの一つとして太陽光発電が注目され、その普及に多くの努力が積み重ねられているところです。屋根の上に並べられたソーラーパネルや、メガソーラーと呼ばれる広い土地にソーラーパネルを並べた大規模太陽光発電は良く目にするところですが、今後の展開はどのようになっていくのでしょう。
太陽光発電の欠点は、曇りや雨の日には発電効率が低下することです。また、年月が経過すると太陽光発電パネルの表面が汚れて効率低下の原因となります。そのような問題点を解消するために考えられたのが太陽光宇宙発電です。宇宙空間の静止衛星に大規模な太陽光発電基地を作り、得られた電力を地上に送電しようとするものです。1990年代後半にアメリカでは当時の太陽光発電の技術レベルを基にNASAが実現可能性を検討しました。その結果、「宇宙太陽光発電は最新の技術をもってすれば原子力発電所と同規模の発電が可能な計画の実現可が能であり、既存の発電システムと同じくらいの発電単価を実現できる」とする報告書画提出されました。当時のブッシュ大統領はNASAに検討を継続するように指示しています。但し、宇宙空間の静止衛星に大規模な太陽光発電基地を建設するには予算規模が大きすぎて、現在でも要素技術の研究開発が続けられている状態です。
一方、日本でも宇宙開発事業団(JAXA)や経済産業省で検討を開始していますが、要素技術の研究開発が必要なことと、予算規模が大きくなることが難点です。現在、理化学研究所の理事長でいらっしゃる松本紘先生が京都大学教授の時に、宇宙太陽光発電の計画を検討されていました。
宇宙太陽光発電の場合は、1年中24時間太陽光を受け、雲とか雨の影響もなく発電できるという利点があります。但し、地上へ送電線を張るわけにはいかないので、地上へマイクロ波かレーザー光で電力を送る必要があります。京都大学を中心とする宇宙発電の計画では、宇宙発電基地に巨大な反射鏡を組み立て、集光した太陽光で発電を行い、マイクロ波で地上に送電する計画です。神戸大学でもその一環として、要素技術の開発を行っています。
この基地建設には、打ち上げたソーラーパネルをロボットが組み立てる技術や、マイクロ波を地上の受電装置に照射する技術の開発がキーポイントになります。マクロ波は密度が高いと地上の生物が電子レンジの中に入った状態になり危険ですが、直径十キロメートル程度の受電施設であれば、危険性は無く、十分な精度で照射可能であることが確認されています。(ハワイ島とマウイ島の山頂同士で照射実験が実施され、地上の空気の乱れにもかかわらず、十分な精度で照射が可能であったという報告があります。)地上の細々としたソーラー発電の普及も結構ですが、フロンティア領域の太陽光発電にも、もっと注目しても良いのではないでしょうか。
太陽光宇宙発電のもう一つのフロンティアとして構想されているのが、ルナリング(月太陽光発電)です。清水建設㈱が月面での太陽光発電で得られた電力を地球までマイクロ波またはレーザー光で運ぶ構想を打ち立てています。もちろん、実現には多くの課題があると思いますが、全地球規模でエネルギーの供給を月に求めるという発想は魅力的なものです。月はご存知のように地球の公転周期と自転周期が一致しており、何時も私たちは月の同じ面を見ています。それ故、月の満ち欠けに連れて、太陽光の照射される面は移動していきます。ルナリング計画では常時、同じ量の発電が可能なように月の赤道面に太陽光発電の帯状パネルをリング状に設置しようと考えています。そこで得られた電力は地球の複数の受電基地にマイクロ波またはレーザー光で伝送されます。リングの幅にもよりますが、試算では現在の人類の消費電力のすべてを賄えることが可能だと予想しています。このような月面での発電基地の建設には、月の資源を発掘して現地で太陽光発電パネルの製造や、施設の組み立てなどを行わないといけません。そのためには、ロボット技術の開発が必要不可欠でしょう。月面での基地建設には人の力よりも、極力人工知能とロボット工学の粋を結集して、行かなければなりません。また、高精度のレーザー光照射技術の開発も必要でしょう。
先にご紹介した静止衛星上での太陽光宇宙発電の先に、このような月面における太陽光発電の計画を知って、まだまだ先のことと思わず、若い人たちがフロンティアの科学技術開発に飛び込んでいって欲しいと思います。
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