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環境サロン「樹木と環境~樹木医の立場から」中村裕三さん の概要です。

2016年01月24日

1月23日の環境サロンにおける中村裕三さんのお話を紹介します。

中村さんは環境省の環境カウンセラー、山口県環境アドバイザーなど多彩な活躍をされています。昭和24年生まれの66才、大学を含めて東京に10年、後は56年は防府。職歴は日刊工業新聞に勤め、ソニーへの転勤話があったことをきっかけとして、28歳の時、父の造園会社に勤めるようになった。その関係で55才の時に樹木医をとった。また、祖父がやっていた繊維関係の会社をつぐようになり、土日に樹木医の仕事をしようとしたが、もっぱら趣味でやるというようにも行かず59才の時に会社をやめた。
 現在でも自分で立ち上げたユニフォーム販売の会社は続けており、樹木医の仕事は基本的にはボランティアの気持ちでやっている。その関係もあり、割に相談が多い状況であるとのこと。

 樹木医の資格は、平成3年に発足し、はじめは国家資格だったが、小泉内閣のときに民間の日本緑化センターの資格に移行した。平成27年末で2565人うち女性は249人である。女性が増えてきている。宇部にも5,6人おられると思う。
樹木保護の経験7年以上、一次試験で5択の選択式試験33問と、二次試験は4百字の記述式3問の二次試験では16科目の試験と講習・実技があり、さらにつくば市で2週間の講習を受ける。

 樹木医の仕事は、診断、治療、調査、後継樹の育成、環境教育などである。
 3,4年前には川棚の国の天然記念物である樹齢千年のクスノキを山口県樹木医会で診察した。それぞれの得意の専門があるので10人以上の樹木医が関わった。
また、2年くらい前にセミナーパークで300枚くらい木の名板をつけた。
貴重な樹木については、接ぎ木で二世、三世を作っておくこともやっている。
腐朽菌によって根が腐って、倒木の被害が出ることがある。

平成10年に向島小学校の蓬莱桜の葉が茶色になったので、治療の相談があり、当時樹木医ではなかったが、一級造園士の資格はもっていた。この場合は木の回りに自動車も止められたりしていて、踏圧の影響で、根が呼吸しにくくなっていた。柵を設けて入れないようにし、掘り起こして土壌を改良した。平成13年に市の天然記念物、H23年には県の天然記念物になった。H19年に保存会を作ってもらった。樹齢百年くらいだが、サルノコシカケのようなキノコが出ると、中が腐っている証拠である。空洞があるかどうかは木槌でたたいたり、今は音波で調べる器械がある。木の免疫力を高めることが重要で、始め牛糞を2トン2年間施用した。
 やり過ぎたために、樹皮の成長が追っつかず樹皮の部分が裂けた状態になったが、何年かすると回復した。毎年蓬莱桜保存会の行事を3月中旬に行い、経済効果もある。
 また、くぼみに水がたまるようになっているので、ドリルで穴をあけてパイプで水を抜こうとしたが、あまりよくないと言うことで、1週間に一度くらい水を抜くようにしている。様子を見ることにも役立っている。
 枝が垂れ下がるので支柱を立てる意見もあったが、自分は反対して、枝の一部を根にして支えようとしている、
ヤマザクラとカンザクラの交雑種で、千葉大学の中村先生に葉を送って、塩基配列を調べてもらった。

 小学校のニッケイの木を伐採するというので、相談をうけて、お金は自分で出すから、と移植を提案した。費用は結局、地元の沢田建設、藤本工業で1本10万円ずつ出していただいた。それぞれを2ヶ所に移植し、土壌改良もした。西日が当たるところに写したので、スギ皮で西側の幹を保護した。

 H22年に都市計画から防府天満宮の参道の松の根がユンボで引きちぎられたので、これを治療した。この場所は伏流水があって、松は乾燥には強いが湿気には弱いので、炭を400kg、パーライト400kgを入れた。また湿気を温田名DOパイプを6本敷設した。
 1,2ヶ月後に松が一時白くなったが、何とか回復してくれた。

 松崎小学校のカラタチの生け垣があり、山頭火の母校でもあり、「故郷の 学校の からたちのはな」の句碑もある。今は少なくなっているが、ミカンの台木になり、ガンに効くとか言われている。
 こども達と参加型で、毎年3月の同窓会の入会式の時に肥料をあげてもらう。

 その他、小学校の総合学習で4年生に総合学習で、校内の木の名前を学ばせることもしてきた。「葉で見分ける樹木」という本を使って、木の葉っぱの形で、見分けさせる。この本の著者は林さんで田布施の人で、修道大学から、琉球大学へ行かれた方である。不分裂葉(サクラ)、分裂複葉(フウノキ)、掌状複葉(トチノキまたはマロニエ)、羽状複葉(ナンテン)、針状(マツ)、鱗状(カイヅカイブキ)の大体6種類。さらに葉の付き方が、互生か対生。葉っぱにギザギザがある鋸歯葉かないか。こども達は結構うまく習得してくれる。校内にメラノキシロンアカシアという2種類の葉っぱが一つの木についているものもあることを子どもに指摘されて驚いたこともある。

最後に、樹木と環境の関係について、
樹木はCO2を固定してくれる、IPCC Report Communicatorというのがあるが、自分もこの11月に取得した。e-ラーニングで受験し7割正解すれば、あと1日講習会に出て取得できる。「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」により作成された「第5次評価報告書」の内容を国民に伝える普及員として期待される。環境相では1500人を予定していて、現在山口県では7,8名登録されている。

 地球温暖化によって、楓の紅葉がこの10年間で3日ほど遅くなっていること、2015年は特に遅いようだった。COP21では今世紀末の温度上昇を2℃できれば1.5℃に抑えようとしているが、中国地方のブナは生息できない状況になる可能性がある。

温暖化ガスの排出を緩和するために、樹木による吸収を期待しているが、木を全く切らないのではなく適時更新して、バイオエネルギーを利用していくことが大事だと思う。果樹等も南方性のものに切り替えていくとかも考える必要があるかもしれない。

 県の都市計画におられた椿さんとお話ししたとき、樹木医で大事なことは何かを問われて、「臨床例」と「知識」と答えたが、もう一つ足らないのは「木に対する愛情だ」と言われた。その翌年亡くなられたので、遺言だと思っている。

質疑:
・タチバナやコウライタチバナは絶滅危惧種になっているのか、その区別などはどこに訊けばわかるか。
→林業指導センターに訊けば情報が得られるかもしれない。樹木医もそれぞれ得意の専門があり、先日樹木医の全国の集まりで伊勢神宮を見学したとき、柑橘類名前を聞かれたが長崎県の女性職員が詳しかった。自然保護課でもなにか情報が得られるかもしれない。

・自然共生ネットワークというのは
→年間千円の会費で、色々な分野の専門家もおられる。一昨年はたとえば岩国の方で、河川工事の前に30匹ほどオオサンショウウオを保護して、人工的飼育も行われていた。昔は生き餌をやっていたが、費用の関係で、シシャモになり、今は冷凍アジに変わっているようだ。高川学園の村田先生はオオサンショウウオに詳しい。

・琴芝児童公園の大きな木が、昨年の台風で倒れた。幸い家のない南の方に倒れたから良かったが、反対方向に倒れたら家に被害が出たはずだ。このような倒れやすい公園の木の管理はどうなっているか。
→とても不十分な状態だと思う。被害が出れば管理責任を問われることになる可能性がある。東京や福岡ではそのような観点からも樹木診断が行われている。ただ樹木は財産という位置づけもあり、むずかしい面もある。
・琴芝地区の裁判所裏の方にイチョウの木があるが、近所の住人から落ち葉のことで苦情があり、切ることになったが、市民の立場からは範値の意見もあり、市としては根こそぎ退けることはできないそうだ。
→今はイチョウもオスの木しか植えない。ケヤキも拡がらない木を植えるようになっている。檀家のお寺のイチョウもお寺の予算で切られた。
・今頃は外来種を植えることも多くなっているが、いいのか。
→自分はあまり好まない。オリーブ、ハナミズキやユリノキも外来種。セイダカアワダチソウは最初は冬場のハチのエサだった。養蜂業者が窓から線路端に播いた。アレロパシーで出す物質で自分たちも影響を受けるようだ。温暖化が進めば、そのための適用も必要だと思う。

・庭のヤマモモの木が芯が腐っていて、この前切ったけれども中にセメントが入っていた。→昔はそういうこともあったようだ。その後はシリコンを入れることも多い。 
・森林浴が言われるが、木が出すフィトンチッドによる。たしかに自然療法の効果があるようだ。精神的なストレス緩和の施設を置くとかしたらよい。
タミフルはハナシバがもと。
・落ち葉や剪定枝を無条件にごみに出さないで、自家処理を奨めるようにした方がいいのではないか。
→燃やせなくなったとか、状況が変わったが、すこしは考慮した方がいいかもしれない。・蓬莱桜で、支柱の代わりに枝から誘導して根にして支えると説明された写真があったが。
→ 樹皮を剥いで、水苔と黒いビニールで覆って誘導すれば可能である。不定根を腐葉土の層で誘導して根にする方法もやられている。かなり長年月かかるが。
・アスファルトやコンクリートで表面が覆われているところに植えられていることも多いが、木にとって丈夫なのか。
→歩道は大丈夫だが、車道側はむずかしいだろう。
・DOパイプというのはどんなものか。
→φ15cm程度のものでインターネットでも入手できる。根も呼吸する。炭も効く。
・桜のひこばえが出ているとあまり調子が良くないということか
→調子が良くないと出る。枝を切る場合は切り方がある。幹の所で切る方がかさぶたのようなものができて腐りが入らなくてよい。寒い季節は腐りにくい。腐りやすい時期は防腐剤を塗るが、長くは持たない。。
C: 街路樹もあまり枝を切りすぎると、下からひこばえが出てくる。ひこばえは葉が大きい。

・全国の樹木医の経験を共有するような事例集はあるのか。
→日本樹木医会がまとめた本はある。何版もある。その他メーリングリストもあって色々聞ける。特に同期同士には聞きやすい。
・山口県の県木のようなものはあるのか。
→ミカンの木はやはり大事だろう。セミナーパークには自分で調達して2本植えた。
・山口県でも天延記念物の木などはちゃんと樹木医が着いて管理されているのか。
→されていない。天然記念物の樹木だけでも指定管理者を付けたらいいと思う。
・中村さんはESDにも関わってられる。防府はわりに教育委員会の
・ESDとCSの棲み分けもはっきりしていない。琴芝クリーン作戦をやったが、親子が参加して地域清掃をした。
→ESDジャパンのメンバーでもある。毎年、文科省と環境省がESDの講習会をしているが。それはいい例だと思う。

 今回は随分色々な話題が提供されたが、「蓬莱桜は17年来だから、よく愚痴を聞いてもらえるし、逆に木の調子もわかる」と言われたことや、椿さんの樹木医として大事なこととして「木に対する愛情」を挙げられたこと、「フジは切ったところから腐りが入りやすくて移植がむずかしいが、あしかがフラワーパークに大フジを移植した塚本こなみさんは、何処を切ったらいいかフジがここを切れと教えてくれると言われていたが、木と一体にならないとわからないこと。」といわれたことが印象に残りました。

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