10月18日の環境サロン「医農食連携の取組について」の概要紹介です。
2015年10月27日
第8回環境サロンは、うべシニア生きがい創成ネットワークの下村文博さんに、「医農食連携の取組について」を話していただきました。ネギ三昧で有名な山陽小野田市のグリーンハウスさんからも3名参加していただき、活発な議論ができました。
入社、当時ビタミン強化米というのがあったが、協和発酵では、米のタンパック質があまり良くないということでリジン強化米に取り組んだ。その後、宇部の協和エフディ食品の開発部で、9年間、その後本社の食品事業本部でFD事業を統括し、協和発酵としての六次産業化にとりくんだことになる。
とくに宇部で作った、たまごスープは爆発的に売れた。しかし物を売れるということはそう簡単ではないこと、チャンスをどうとらえるかが大事だということも体験した。たまごスープでも鶏卵組合との連携がなければうまくいかなかった。
退職後は、奈良先端科学技術大学で知財コ-ディネーターとして産学連携に携わった。
知的クラスター創生事業で、血液中のSPCの分析技術の開発が縁で、山口大学医学部の小林誠先生と知り合った。
小林教授は、血管異常収縮にSPCによって血管の異常収縮がおこり、EPAがそれを抑制すること、これらのメカニズムを世界で初めて明らかにされた。
小林先生はもとは臨床医だったが、救急で運ばれた患者を救うことができなかった悔しさ、理不尽な突然死から救いたいという思いで基礎医学に転じられたそうである。
EPAの効果を知り、マルハニチロの無臭化EPAや、食品を通して摂取するようにEPAマイレージ1800mg/日を提案するなど、医食連携の仕事に携わった。
7年前にコーディネートした機能性食品開発研究会では、 山口県農林総合技術センター羽嶋さん、医学部小林先生、マルハニチロ中央研究所玉井さん、日新医療食品(株)石田さん、水産大学校原田さん集まってもらった。
また今年3月のアイサの春の特別セミナーでは「野菜の魅力「再発見」~野菜のちからを活かす食と健康への取り組み~」を開催し、岸村さん、グリーンハウスの松村社長、小林先生、JA山口の梶山ゆかりさん、西村弁理士に話していただいた。
今後は、以下のような方々を中心に連携を進めていきたい。
・グリーンハウスの若手パワー ネギ三昧
・健康寿命100歳 フロンティア大学短期大学部の松富副学長
・野菜のスクリーニングはグリーンハウスと医学部小林研究室
・抗酸化物質等のファイトケミカルについては鹿児島大学
・成果のメディアへの発信については野菜ソムリエの岸村さん
・知財関係は西村弁理士
グリーンハウスの哲学は、ひらめきと進歩。農場で働く人の平均年齢は25代で、県内の農家の年齢が70歳位なってきている中、モデルケースとして期待している。
医農連携に積極的に取り組んでいて、そのための人材募集も考えている。医療費が44兆円にもなり、何とかしなくてはならない。農業で社会を豊かにしたいという意識を持っている。
サロンに参加していただいた松村社長夫人によると、社内の研修会に下村さんが参加して、戎谷さんがプレゼンし、下村さんに気に入ってもらったとのこと。その後、いろいろ働きかけていただいている。最近は鹿児島大学の先生に成分分析をしてもらっている。現在進行中。山大農学部でもファイトケミカルに興味を持ってもらっている。
サロンに参加してくれた同社の戎谷さんは、入社5年目で、祖父は甲状腺ガンになったり、祖母が結石の手術をしたりで、食事が大事だし、医療費もどんどん上がっていくこともあり、栄養価と機能性の高い野菜づくりに興味を持ったとのこと。
生産部で露地を担当して、ネギやエダマメ、ブロッコリを栽培している西村さんは、母親がくも膜下出血の経験があり、祖父が高血圧、曾祖父が糖尿病という家系であるので、この取り組みは人ごとでなく、機能性野菜の生産に興味をもったとのこと。
最後に、機能性野菜の開発はグリーンハウス・山大医学部・農学部・鹿児島大・JA山口、機能性食は山大・フロンティア短大・JA・食品メーカーの連携をとって進めていき、新たなテーマにも挑戦する。
また、①自立した緩やかな連携、②持続する連携(青壮熟)青年の可能性、働き盛りの壮年が引っぱっていく、熟年は経験と知恵でアドバイスする。
ワールドビジョンの言葉を借りると、「何でもできるわけではないが、何かはできる」という想いで進めていきたいとされた。
議論:
・アイサの3月のセミナー、グリーンハウスの見学にも参加した。グリーンハウスの活動は素晴らしいなと思う。ネギの中に、なにか特別の有効成分があるのか。
→インド原産のサラシアには糖尿病や高血圧に効果がある成分があることも明らかにされている。EPAそのものでなくても、EPA的な成分は大豆や椎茸にもあると言われているが、これから色々なスクリーニングが進んでいく。
・機能性野菜の可能性はどうか。既存の野菜の中にはどうか。
・なかなか遠大な課題で、的が絞りきれないのではないか。
→まだこれからというところ。マンパワーも不足している。並行してその他のファイトケミカルたとえばトマト中のリコピンとかポリフェノールだとか。塩分の多い土壌の作物のスクリーニングもこれからで、結果を期待している。現状では全体的にデータは不足。
・EPAは青魚に多いが、肥料を工夫して野菜に入れることは可能なのか。
・サプリを飲んだ方が早いのではないか。
→野菜に移すことは無理。ニワトリの餌を工夫して、たまごを強化することはある。サプリではないが医薬品としてのエパデールは脳梗塞を防ぐことは有効らしい。きっちりとしたデータをとることはむずかしいが。
・生産者側としても、試行錯誤の気持ちもあるが、何とか科学的データに裏付けられて差別化して、特徴のある生産物を出していきたい。
・何故ネギなのか。
→もとはお米だったが、九州のネギを見学して、収益性がいいと思った。
・今年はネギは非常に高かった。品質を変えるのは大変だと思うが、いろいろ科学的データの説明付きで供給されるといいのではないか。
・おいしく食べる方法も書いてあると、いいかもしれない。
→それなりの工夫をしていきたい。商標はとっているので、○○三昧のシリーズでやっていきたい。
・垢田のトマトや週報のナシもブランド化している。
→トマトは収穫前に水分を落とすことが大事。信用が大事。
・SPC分析は簡易化したのか。
→やはりまだ高価分析装置を使わなくてはならず、何処でもできるようにはない。
・サプリメントの効果についての研究は進んでいるのか
→おそらくサプリメーカーは持っていると思う。小林先生はEPAでも不安定なEPAの効果があるということで、特許をとられ、よく売れている。
・フロンティア短大との連携はどのようなものか
→介護士の方に、話してもらって、健康食を普及させることなど。
。有機農業とかに力を入れてられるのか。
→エコファーマーの認定を受けているが、全てではない。
・DHAはやらないのか。
→DHAは認知症に有効。魚油にはEPA70%、DHA30%とか混ざっており、先の製品はEPAのエチルエステルで、精製していないのでDHAも含まれている。
環境サロンでより学術的な話を聞きたければ、小林先生に来てもらうことも可能と思うとのこと。
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