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「持続可能な開発のための教育に係る豊かな心とコミュニケーション能力の育成をめざした実践」 桃山中学校教頭 福田光正先生

2014年11月28日

環境サロン「世代間・地域対話」第6回は、表記のテーマで平成26年11月20日、まちなか環境学習館において行われ、以下のような進行でした。
1.前半:コミュニティースクール(CS)とは
・現在の宇部での取り組みについて(大迫先生)、
・周南市の住吉中学校でのCSの取り組み(福田先生)
2、質疑応答
3、後半、本題:豊かな心とコミュニケーション能力の育成 桃山中学校の現状について
4、質疑応答
動画はhttps://www.youtube.com/watch?v=P4CKX86XDn4 で視聴できます。

●CSとは (大迫宣之学校教育課指導主事)
現在の学校は抱える課題・問題が複雑に、また難しくなっていて、学校の教職員だけでは立ち行かなくなっている。コミュニティスクール(CS)とは、学校、地域、保護者の代表で運営協議会を作り、各方面の声を取り入れつつ方針を決め、地域と助け合いながら、それらの問題を解決していくための仕組みである。国も予算をかけ、力を入れて進めようとしている。
宇部には小中学校が37校ある。それぞれの校区にそれぞれの歴史や文化があり、色々な人が活躍しておられるので、教育委員会から画一的なものをおしつけるものではなく、地域の方に学校を支えていただき、学校も微力ながら地域を支える担い手になっていきたい。いずれ県外に出ていく子供たちにも、地元とのつながりを持ってほしい。

・国がCSに取り組み始めたのが平成16年で、約10年になる。
全国では2000校、山口県では200校がCSに指定されており、指定数では山口県は全国でも一位である。
その一方で認知度はいまひとつの状況である。
県内では、宇部は後発の部類だが、宇部では内容の充実とともに、来年年明けから広報へも力を入れていきたい。地域や保護者の声を積極的に取り入れていく方針である。
 保護者との対応など学校だけでは立ち行かなくなってきている。地域の支援が必要である。学校のニーズと地域のシーズやスケジュールがあり、調整が必要であるが、各学校と地域の間を取り持つ、橋渡し役の人材が不足している。

・山口県の教育委員会ではCSには3つの機能があるとしている。
一つ目が学校支援。
いわゆるボランティアの方に学校へ入っていただき、例えば花壇づくりや庭木の剪定、家庭科の調理実習などの支援をしてもらうこと。
二つ目は学校をよりいいものに変えていくこと。
例えば授業のやり方について、これでいいのか地域の方に見てもらい、意見をいただいて学校を改善していくこと。
三つめが地域貢献
単なるボランティアとしてとらえられがちですが、CSの最終的な目標は地域貢献。
子供たちが地域に出て行って活動したり、地域の方に学校を利用してもらう取り組みである。空き教室や図書館も活用していただく試みもある。

・現在各学校で様々な取り組みが始まっている。
厚東校区では古くから太鼓が盛んで、小中学校で太鼓をきっかけとしていろんな方が学校内へ入られている。上宇部校区では、CSについての通信を配って周知に努めたり、地域と学校でのぼりを製作したりしている。
県内や全国の平均に比べると、宇部市の子供たちは地域の行事に参加しようという意識は低い。

・CSはまだ始まったばかりなので、各学校ともいろんなことをやっていきたいと考えている。コーディネーター役が不足している現状もある。
学校としても、漠然と学校と地域を結びつけるというのではなく、CSが何をやろうとしているのか具体的に打ちだしていく必要があるし、子供たちをどう参画させていくのかというのも課題である。
地域保護者から学校への提案をなげかけることも望ましいが、学校として何をテーマとしているのか示すことも重要である。学力、体力、環境、地域の歴史、キャリア教育などテーマを設けて、地域の人たちとかかわっていきたい。

●周南市立住吉中学校のCSの取組例 (福田教頭先生)
住吉中学校(福田先生の3月までの前任校)は一学年3クラスの中規模の学校である。県内に先駆けてCSに取り組んでいる、この夏に現況等の井原先生が周南市教育研究大会で発表された内容を紹介された。

・住吉中学では4つの柱として方針を立てている
①すみよし地域教育ネット(宇部市も力を入れている取り組みで、地域に子供を入れつつ地域が子供を育てていく試み)、②小・中学校の連携、③学校支援ボランティア、④学校の諸課題に対する対策

①について
・地域教育ネットはどういう組織で動いているか
一つの中学校だけでなく、周辺の小学校も含めた3校の校長、運営協議会、地域コーディネーター、公民館関係者が年3回、活動方針を打ち立てている。

・学校はどんなことに力をいれているか
7つのキーワード、プロジェクトABCDEFG
A:あいさつ、B:ボランティア、C:そうじ(無言清掃など)、D:読書、E:合唱、F:花のある環境、G:学習
これらの活動をこころづくり部会(A)、環境部会(C・F)、地域活動部会(B)、学習部会(G)の、4つの部会に分担し、小中学校の先生が参加して豊かな心をはぐくむことを目標に活動している。

・具体的な事例
 外部の人の学校への関わり(トイレの天井の塗装、構内の生花の飾りつけ、畑作りの手伝い、庭木の剪定、学習の簡単な指導ボランティア、紙細工教室、地域へアピールするため、紙面の配布)
ほかにも、地域の方が学校にきて過ごすことのできるカフェのような場所を利用してもらっていて、授業の様子等も自由に見ることができるようにしている。
生徒らの地域への関わり(夏祭り、敬老会、地域の運動会の会場作り、かき氷うどんの販売、地域の掃除、環境整備など)
現在地域の祭りでは、もはや中学生の手がないと成り立たないくらいの活躍を見せている。
これらの活動を通して子供の豊かなコミュニケーション能力は確実に向上していると実感している。

・コーディネーター役の不足
宇部市の場合、一般的には、地域と学校の橋渡しの役割、つまりコーディネーター役が不足している。
宇部の黒石地区には行政の方から、協力してくれるポストがあるようだが、それが無い地域もあるので、行政との連携の中ですすめていかないと難しい。

・CSの認知度が低い。
同様に、教職員の中でも意識の違いがある。学校と地域の思いがうまく繋がっていない。
ふれあいセンターや地域の祭りで呼びかけてはいるが、遠慮されていまひとつの状況ではある。
小中3校連携、いじめの対策会議など、従来学校の中だけでやっていたことを外部へ開こうとしており、少しずつではあるが活動は広がっていると認識している。

●質疑応答(CSについて)
Q:学校単位で指針がバラバラなので、有識者、PTAを含め、宇部市で指針を打ち立てたほうがよいのではないか。CSの取り組みに関して成果がいまいちであると感じる。
例えば琴芝CSのあいさつ運動は、現状では地域と学校というよりも、生徒と地域の一部の代表者のみがあいさつを交わしているように見える。役員だけでなく、父兄に賛同してもらうこと、学校と家庭で同時並行していくことが重要ではないか。
ふれあいセンターにCS創る会のような別組織たちあげて、自治会長などに入ってもらえばよいのではないか。
A:まさに今おっしゃったようなことを運営協議会の中で言ってももらえるような場をもちたい。
学校の力のみでは運営は無理。保護者を巻き込むのは難しいが、重要な課題である。学校、保護者、地域が揃う必要がある。

Q:コーディネーター役の役割を周知し、広く募集してはどうか。周南市の住吉校区ではどうなっているのか。
A:公民館館長が地域の行事に参加している。コーディネーター役は公民館長から推薦を受け、校長が任命している。

Q:今年の5月にこのサロンでCSのお話があったが、その時に比べて、格段に進歩したと言われたが、それはどの点なのか
A:他の中学校の話をきくと間違いなく進んでいると感じるが、課題が多くある。
学校からのアプローチも必要だが、行政のはらたきかけがあるとよりスムーズにいくと感じる。
市民センターには保健師など役所職員が在籍し、本年度より地域の祭りや、高齢者世帯などを手伝うことになっていると聞いているが、そこに学校が関わっていく糸口があると考えている。

Q:生徒にいろんな人とかかわりあうための活動をさせるには、それに対する評価が必要では。
欧米ではボランティア地域社会貢献が求められている。そのように変えていくほうが求められているのでは。
A:ボランティア参加賞をわたしたり、通知表などへの記入、賞状もだしている。

Q:学校も公的な機関なので、直接、ふれあいセンターに相談してみるだけで、行政を介さなくてもよいのではないか。
A:学校だけでなく、学校と地域の両方からの歩み寄りが必要だと思う。
しかし、学校もどこへいけばよいのか、なにができるのか模索している状態である。もっと動く必要がある。

Q:桃山中の運営協議会にはふれあいセンターの館長がいらっしゃるとのこと。どういう役割をされているか。
A:まだそこまで進展していない。校長の方針もあり、学校がまとまっていく必要がある。

Q:公民館の館長や職員が状況をつかんでいて、推薦すればいいと思うが、誰を指名していいかわからなかったり、できない状況があるということか?
A:厚東地域では小さなコミュニティーであり地域と学校が繋がってるのでうまく行っているが、市内では連携がうまく行かず苦慮している。

Q:CSが広がらない最大の原因は、何をしようとしているのか、方針がわからないことにあるのではないか。
A:学校からふれあいセンターへの提案はある(配布物参照)

Q:まちなかのふれあいセンターは現状では単なる施設であり、CSに参加しともに運営していくような機能はないのでは? ふれあいセンターと市役所の出先である市民センターは異なる。
A:そこが行政の壁であると考えている。桃山、小羽山、新川地区にはふれあいセンターしかない。
黒石校区には市民センターがある。

Q:ふれあいセンターにそういった役職がないという話だが、現在は嘱託で個人差がある。4~50代の若い世代の人をふれあいセンターの館長などへ配置するような工夫が必要かもしれない。
A:市民センターがあって、市の若い職員が仕事の一環としてやっているところはうまくいく。
A:そのケースであっても、運営協議会のメンバーの選出で、特定の人にお願いするのは結構難しく、地域の団体の会長にお願いしているような現状がある。

Q:先生自体がどう認識されているかが大事。
A:それは後半で話します。

●後半:ESDと関連した学校の実践について
 ESDと言う言葉はあまり普及していなかったが、実際はその内容は実践されている。様々な教科の中や、総合的な体験的な学習、道徳の教科化などに力を入れている。豊かな心、コミュニケーション能力を育成することを実践している。

たとえば、周南市住吉中学校では:
・あいさつの指導のため、平岡三光先生(あいさつボランティア大使)を呼び講演会を行った。笑顔で、元気よく、自分から、立ち止まって挨拶するのがいい。
・無言清掃の実施:掃除の前に自分と向き合い、掃除をやろうという気になったら掃除を始める。がまんする意志力、創造力、情操力、感謝の心、正直な心をはぐくみ、人として成長することを目指す。

いま困っている問題として: 学校・家庭・地域の子供を取り巻く環境は深刻である。
学校・・・いじめ、暴力、不登校、体罰、ネット上の問題
家庭・・・核家族化、虐待、DV
地域・・・希薄なつながり、教育力の低下
地域の人の指導力も低下しており、生徒児童への対応にこまっている。

・いじめに対しては当事者のみの指導では不十分であり、いじめられる子、いじめる子、傍観する子、はやし立てる子それぞれに対応が必要である。
いじめ問題に関しては未然防止が必要で、早期発見が大事であり、そのために週一回のアンケートや担任に相談すること、また、教師が人権感覚を磨く必要があると感じる

・ゆたかな心をはぐくむためのとりくみ
学びあい 机をコの字に配置し、生徒同士で勉強を教えあわせている。人間関係を豊かにさせる狙いがある。
道徳教育で、助産師を呼んで命の大事さを学ぶ時間を設けたりしている。
野外活動、清掃活動を通し、豊かな心をはぐくむための活動をしている。

・インターネットでのLINEの既読無視、いじめ、出会い系サイトでの事件など、インターネット上でも対応に困っている問題がある。
インターネット上の問題に関して、岡村礼次郎先生(山口県ネットアドバイザー)を招いて、「携帯安全教室」を実施した。
ネット上のことが問題になるのは、親がよく知らないことにも大きく関係している。
親がネット上にどんな危険や、イジメがあるのか、状況を知らないことが多い。
保護者の参加者数は少なかったが、このような教室は、年3回ほど学校から積極的に開催していきたい。

・小中連携について
小学校から中学校へ進学する際、そのギャップで不登校がふえていることが問題になっている。ギャップというのは小中での生活環境、学習環境の違いである。指導方法や学習内容、生活のしかた、評価順位がはっきりしてくることなどが、不登校児の原因とかんがえられている。
そのため、小中で足並みをそろえるべく、小中連携を目指している。たとえば、さん付けなど呼び方を統一したり、小中学生が交流する機会をもったりなど。


・その他、現場での悩みについて
①少子化に伴い、教員の数も減ってきており、50才代の教員のウエイトが非常に高くなっている。この年代になると、自分の将来「昇進等)との関連で、モチベーションに大きな差が出てくる。こうした問題がある。
➁親に対する対応が非常に難しく、時間と労力をとる。今、我々が教えている生徒の親は、「学校が荒れた時代」に中学時代を過ごした30才後半〜40才代。運動会の終わった後は、ビール瓶や、弁当箱が散乱。ひどいのはバス停で打ち上げをする始末。こんな親で、自分の生徒がよく育ったと思っている。
③問題児、発達障害と思われる生徒の指導の難しさ。
④部活の指導が、教員の大きな負担になっている。
⑤世界一と言われる日本の中学校教員の勤務時間の実情。
⑥このように非常に悩み多い中学教員に、CSだ、ESDだと、いろいろな押し付けがあり、更に悩みを大きくしている。



●質疑応答
Q:豊かなこころに関して。コミュニケーションには情報や考えを伝えることと、心を通わせることがある。
心を通わせようとするとき、相手の言いたいことをくみ取ったうえでやり取りすることが大事。
そのような要領を体験で学んでもらうのが大事ではないか。
A:コミュニケーションが苦手な子が多く、これは大事なこと。
そういうスキルを教えるのもひとつのほうほうだと考える。

C:レジュメの最後の頁、山口県の教育目標で、グローバルな視点で社会に参画する人、未来に向かって挑戦し続ける人というのがあるが、この二つが環境絡みのことだと思う。
自分は環境を非常に広い枠で考えている。そうした環境の観点から「豊かな心を育む」を考えると、「豊かな心を育む」と言うのは、「道徳教育」そのものであり、ESDの重要な部分を占める。
道徳教育で郷土に貢献する、日本を愛することを教え込む。それが嵩じると日本は愛するが、中国や韓国等他の国は愛さない、そういうことに陥りがちになるような気がする。特に山口県は、明治維新の立役者の誇りを持ち、近代日本を作った、だから山口県はすごく偉いとか、ひいては日本は優秀だとか思いこむ恐れはないか。
人類の持続的発展のためには、グローバル的には、日本だけでなく、世界のことも考えなくてはならない。又、現代世代のことだけでなく、未来世代のことも、更には、人間だけでなく、自然のことも枠組みに入れて考えることが大切。それを忘れたら、ESD、環境をベースにした取組みと違ったものになってしまう。そのようにならないために、出来るだけ広い枠組みで考えることが非常に重要だ。それが本当の「豊かな心」ではないかと思う。

こども達を取り巻く情報環境の問題はたしかにもっと真剣に考えるべきことと思われる。幼い頃から、テレビコマーシャルにさらされるこども達への影響も考えなくてはならないのではないでしょうか。
 環境サロンのシリーズに取り上げてもいいようなテーマであるが、どの程度研究が進んでいるのか、近くにどんな専門家がおられるのだろうか。(Uコメント)

今回急遽飛び入りで、大迫先生にもお話しいただきました。ありがとうございました。

概要作成:末次

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<コメント> ◆ yamane ↓
読み応えがありました。学校の先生やCSを実施するための運営協議会の皆様がこの記事を読まれると、CS,ESDへの理解が容易ではないかと思いました。 私自身、漠然としていたものが、はっきりしてまいりまして大変参考になりました。感謝です。
↑
投稿日: 2014年11月29日
<コメント> ◆ 学習館 ↓
yamane様、お読み頂いて有難うございます。
環境サロンへも是非一度お運びください。
↑
投稿日: 2014年11月30日

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