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環境サロン/低炭素のまちづくりシリーズ 第5回「自転車が走りやすいまちづくり」の報告

2014年11月09日

 遅れましたが上記環境サロンの実施内容について報告します。
 実施日時:10月22日 18時30分~20時30分
 講師: 兼久威矩 (宇部市地球温暖化対策ネットワーク)通称:UNCCA
 ・宇部市でどのような活動をしているか
 ・自転車の意義
 ・ミニ自転車マナー教室
 今回は以上の3点についてお話をしていただいた。

 まず、宇部市地球温暖化対策ネットワークの取り組みとして、
 2008年度地球環境基金の助成を受けて自転車利用促進事業「E-CYCLEクラブ」を開催した。
 2009年2010年度事業として環境省委託/低炭素面的対策推進事業を実施した。
 2010年度事業として山口県委託/交通によるCO2見える化運動を実施した。
 2011年度より、宇部市委託及び自主事業として環境にやさしい交通づくり推進事業を実施している。
 2013、2014年度事業として中国建設弘済会助成/自転車にやさしい地域つくり推進活動をしている。
 次に、宇部市の取り組みとして
 まず、サイクル&ライド、パーク&ライド、2009年度には環境にやさしい交通つくりWSを開催した。
 そしてこのWS参加者を中心に「うべ交通まちづくり市民会議」(うべこまち)を結成して活動を続けている。
 2010年度からは「環境にやさしい交通つくり推進事業」
 2011年度からは「自転車まちづくりシンポジウム」、環境サロン「自転車まちづくり」「車道の自転車市民権作戦」事業、自転車啓発冊子発行、「自転車ネットワークの提案」等をやってきた。
 そして宇部市地球温暖化対策ネットワークとうべこまちは協力しあいながら事業を進めている。
 この連携のなかで新しく「うべ自転車レーンモデル施工」という事業が進みつつある。
 これは宇部市で初めて車道を自転車が走るレーンつくりを宇部市、警察、そして我々市民団体と協議しながら実現化しつつある。
 場所は、神原交差点から清水川交差点の市道で計画している。
 ここで効果を見て有効であるということがわかれば広げていくことになる。
 これに合わせてうべこまちでは「自転車走行帯安全マップ」を作り、UNCCAでは自転車マナーアップキャンペーンを行い、自転車レーンの拡大、ネットワークの実現化へ活動している。
 今、なぜ自転車か、自転車の良いところは手軽で便利、CO2を排出しない、環境に良い、健康に良いなどあるが、もっと良いのは車依存では見えてこなかったものが見えてくることである。
 たとえば、
 歩道の段差凸凹、車道左端の整備の悪さ、広すぎる歩道、狭い路肩、それに加えて車道はいつも金をかけて増設。メンテナンスを行っている、自転車にとってあいまいなルール、自転車のマナーの悪さ、特に高校生のマナーが悪い。
 これらは長年、車優先の道路つくり、まちづくりをやってきた結果である。
 しかしこれは市民が望んできた結果でもある。
 今後、高齢化、温暖化へと社会、環境が変化していく、そうなれば今までとは考え方を変えていかなければならなくなるのではないか。
 交通弱者のまちつくりへ進まなければならない。自転車はその象徴で都市交通の重要な手段、ポテンシャルとなる。
 都会では近距離では車より早い交通手段となる。

 うべE-CYCLEクラブ活動について、2008年度より継続中の自転車利用促進活動で、公募モニターがサイクルコンピューターを付けて自転車を積極利用する。
 そして5つのミッションをこなす。
 それは自己目標を設定し、走行データー、道路情報、コメント報告、街つくり活動、報告会に参加など
 2013年度はサイクルモニターが参加していた。
 そして合計の走行距離は約43,000Km、ガソリン換算では4,300ℓの節約、CO2換算では約10tの低減となった。
 Eサイクル活動から見えてきたこと
 ・モニターのモチベーション維持は健康、エコ、まちづくり
 ・自転車が安全快適に走る道路がない
 ・自転車利用を応援する施策・インセンティブがあると自転車利用が伸びる
 ・自転車利用者のルール・マナーが難解であり、知らない人が多いい、また守らない人が多いい
 効果
 ・7年間実施して延べ300人のモニター体験者
 ・走行データー、コメント、意識、道路情報などの蓄積
 ・アンケートなどで殆どのモニター体験者が今後も自転車を積極的に利用すると回答している。
 ・自転車まちづくりの必要性認識や意識の醸成に役立った。
  これで自転車文化が宇部市に育って来ているようである。
 これらを飽きさせない工夫としてこまめな情報発信やHPに走行データーやコメントを掲載、またメールマガジン等で発信している。
  しかしまだ工夫がいる点が多々ある。
 Eサイクルモニターを行うことで種々の自転車利用促進活動を行い、温暖化防止・CO2削減ということから宇部市の低炭素まちづくりに広がってきた。
 行政に望むこととしては
 ・道路端部の整備(歩道・路肩)車道整備に比べて費用は少なくて済む。
 ・道路新設・改修時には弱者や自転車走行空間への配慮をお願いする。
 ・道路計画時から自転車に配慮した工事を盛り込めば費用の増加は少ない。
 ・環境共生都市として一歩先を行く施策を望む。
 ・縦割り行政の垣根を取り外し、連携をもっと取って進めてほしい。

うべE-サイクルマップ(改定第3版)発行
 改定の概要
 ・道路の新設・改修
 ・道路評価基準の見直し、道路の再評価・追加
 ・モニターからのポイント情報追加
 ・自転車をめぐる社会の動きを反映(法規・要望)
 ・新イラスト、デザイン。体裁など
スマート通勤の普及拡大
 ・スマート通勤賛同事業所、39団体が参加しており、事業所ごとの実情に合わせた取り組み、出来るところから取り組みしている。
 ・エコ通勤優良事業所の認証取得支援を行い、6団体が取得している。現在取得しているのは山口県では宇部市だけである。
 ・毎年、普及・啓発セミナー・イベント等を行っている。
 ・Eサイクルモニターの体験報告会を行い、問題点を報告した。
 ・また、低炭素交通セミナー・自転車まちづくりシンポジウムなど開催し、有名講師を呼び、講演会を開催した。
 ・出前講座形式で要請されたところで自転車マナー教室を開催した。
 ・宇部市の要請でレンタルサイクルの調査と社会実験を行った。しかし、あまり良い報告はできなかった。
自転車マナー教室について
 今、なぜ自転車のマナーか、自転車の効用を発揮し、広げるための問題点として
 ・ルールが知られていない。難解、あいまいな運用などがある。
 ・自転車利用者のマナーが悪い(無灯火、並列運転、ながら運転、逆走、暴走など)
自転車をめぐる最近の動きとして
 ・自転車は「車両」であるとの認識の徹底(検察庁)
 ・安全で快適な自転車利用の創出に向けた提言(国土交通省・検察庁)
 ・ガイドラインを策定(国土交通省・検察庁)
 ・自転車と歩行者の事故で自転車側に高額賠償金の判決
 ・改正道路交通法で路側帯の右側通行禁止
 最近、事故は減少傾向にあるが、それでも年間12万件発生し、交通事故の約2割を占めている。10年前に比べると1.5倍になっている。また交通事故全体は減少傾向であるが自転車事故は減少率が低いので全体としての割合は増加している。
 山口県の場合、高齢者の事故が多く、その次に高校生の事故が多いい。
 また、事故発生の時間帯は午前8時台、そして午後5時台の通勤通学時間帯に多発している。
 事故はどこで発生しているかということであれば、出会いがしら、右左折などの車両同士の事故がほとんどを占めている。対歩行者、単独事故はそれぞれ約2%である、しかし対歩行者との事故は増加傾向にある。
 宇部市の場合でも出会いがしら、右左折での事故が全体の8割を占めている。
 自転車事故のまとめとして
 ・左側走行は自己のリスクを減らす。
 ・車道走行では発生する事故は少ない。
 ・歩道走行は自己にあうリスクが高い。(自転車が加害者になる危険もある)
 高齢者の交通事故としては交通状況判断の遅れで出会いがしら、右折での事故が多い。またぼんやり運転で信号、標識を見落としがちである。 視力、聴力、運動機能の低下を認識する必要がある。
 自転車の罰則についても認識する必要がある。
 自転車運転の反則金制度がないので規則違反で摘発されると、即前科が付くことになる。
 自賠責がないのですべて加害者が支払うことになる。
 Eサイクルモニターが勧める自転車走行の極意を理解して快適な走行を心がける。
自転車安全利用5則
 1.自転車は、車道が原則、歩道は例外
 2.車道は左側を通行
 3.歩道は歩行者優先で、車道寄りを徐行
 4.安全ルールを守る
 5.子どもはヘルメットを着用
 自転車を安全に乗るための必要条件
 1.交通のきまりやマナーを理解する。
 2.自転車の手入れや、簡単な修理ができるようにする
 3.安全な自転車(普通自転車)の確認をする
 4.体に合った自転車に乗る
 5.正しくペダルを踏む
 6.用途に合った自転車に乗る
車道を走行する極意
 ・車道の左端を適度なスピードで坦々と走る(ただし路肩の側溝部は段差やパンクの危険がある)
 ・緊張感を持って集中する(注意力、五感を働かせる、時に耳は重要である)
 ・車に自分(自転車)の存在を認識してもらう(良く目立つ服装、反射材、尾灯を、車には死角があることを認識すること)
 ・交差点の2段階右折の励行(左折大型車の内輪差による巻き込み事故注意、信号待ちはできるだけ前でドライバーから見える位置に立つ)
 ・危険を感じたら歩道に避難する
自転車の模範運転でかっこよく走るには
 ・安全な装備と整備された自転車で
 ・ルールとマナーを守り
 ・道路の左側、出来れば車道を走る
 ・やもう得ず歩道を走る時は、歩行者に気を配る
 ・停止してくれたドライバーや道をゆずってくれた歩行者には目礼などで感謝の意を伝える
まとめ
 ・自分の身を守るため、左側を走ろう。右側通行は事故にあう確率が高い
 ・歩道走行は危険がいっぱい。できるだけ車道を走行しよう
 ・自転車はエコで楽しい乗り物、ルールとマナーを守ってカッコよくはしろう

質疑応答他
 ・いろいろ話された内容は一般の人たちからは少し離れた特化された活動に見える。もう少し市民に身近な活動が必要ではないか。
回答:これが今の課題の一つで、子どもを乗せた自転車を何が何でも車道とは言いません。法規上も70歳以上の老人や13歳以下の子どもは歩道を通行しても良いとなっている。市民に浸透しているかといえばまだまだであるが数年前と比べれば着実浸透しつつあると思っている。特に都会では進んでいる。
 ・確かに歩道を走ると事故の確率は高いし、車道を走れば事故の確率は低いかもしれないが車道での事故は軽いものが多いと思う。車道での事故は車が相手の場合が多く事故も大きくなる可能性が高いのではないだろうか。車を運転していても自転車を見ると怖さを感じる。
回答:確かに自分も当初車道を走る時には怖さを感じていたが、ぼんやりして走るとやはり危ないと思う。やはり神経を集中して走る必要がある。そうすれば安全に走ることができる。
 ・車を運転していて車道を走る自転車を見ると怖く、大きく迂回してよけている。
回答:確かに自分が車道を自転車で走っていると大きく迂回して車が走り抜けている。
 ・歩道で自転車を早い速度で走り抜ける人がいる。非常に怖さを感じる。特に若い人に多いい。
回答:法令では歩道で歩行者がいるときには歩行者優先で、自転車は徐行しなさいという様になっている。では徐行とはであるが、いろいろの話では大体5~7㎞/hと思われる。
 ・なぜ自転車は車道かというと、自転車はふつうに走れば20㎞/hぐらいのスピードは出る。これで歩道を走ることはできない。人を見れば速度を落とさなければならない。自転車が公共交通手段としての地位を確立するためにはある程度の速度で走ることができなければならない。そうなれば車道が整備されなければならない。
 ・車道が複数車線ある場合は左側の車線の中央を走るようにしている。そうすれば車はよけてくれる。体を張ってそれを実行している。
 ・新しく作られている規格道路でも自転車の為の通行帯は無い。規格を変えて自転車の通行帯を盛り込まなければいつになっても自転車は危ないところを走らなければならない。
回答:今、道路構造要領を変えていこうという動きはある。
 ・自転車のマナーアップなど企業に入ってPRなどされたことはあるか
回答:あります。スマート通勤活動というものを企業中心に呼びかけている。
 ・無理をしてても自転車というより、道路環境などを良くして自転車を利用することの利便性が実感できるような環境に持っていかなければならない。
 ・なんといっても利便性を感じるようにならなければ普及は進まない。
 ・自転車保険について、神戸地裁で判決が出た。加害者は小学生、被害者は女性で寝たきりの状態になり遺失利益、その後の療養費を含めて9500万円の賠償の判決が昨年でた。そのような中、先日兵庫県知事が自転車保険を条例化しなければならないということで取り組む姿勢を示している。
 ・自転車の保険加入を進める必要があるのではないか。
 ・自転車のマナー、ルールを教える責任はまずは親にあるのではないか。
 ・小学校では4年生の時に警察の方に来ていただいて行っている。
 ・小学生のヘルメット着用の率は上がっているが中学生、高校生はヘルメット着用率が悪い。
 ・通学に使う自転車はスポーツタイプのものはだめとしているが、これがやはり日本の自転車文化が進まないことのひとつではないかと思う。スポーツタイプでも普通に走ればよいのでは思う。
 最後に感想として、自転車利用する上で、道路環境、そして交通ルールなどが不十分であるとつくずく感じた。保険制度も十分に周知されず、いったん加害者になったらどうするか、また罰則も摘発されれば即、前科が付くことになるなど、まだまだ自転車普及には逆風が強いと感じた。

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