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世代間・地域対話 第4回「一画家の目に映る環境の多様性」の概要紹介です。

2014年10月04日

平成26年9月25日(木)の環境サロン、まちなか環境学習館。今回の講師は尾崎眞吾先生でした。
サロン前半は先生の芸術家としての考え方、海外生活の経験、そして先生の人間味あふれるお話が展開されました。お話は多岐にわたったので、内容別に大まかな項目に分けて紹介します。(まとめ:末次信次)

動画サイトは以下です。
http://www.ustream.tv/recorded/53109279

<もくじ>
―――――――――――――――――
1、尾崎先生の紹介とひととなり
2、「まてよ」
3、アイデアを練るための思考法
4、視点を変えてみると?
5、町の景観について感じたこと
6、美術についてのこだわり
   ―形のないものの表現―
7、消費税について
―――――――――――――――――

―――――――――――――――――
1、尾崎先生の紹介とひととなり
―――――――――――――――――

・司会 山根好子さん

みなさまこんばんは
環境サロン世代間地域対話シリーズ第4回をはじめさせていただきます。
今宵は、画家でありイラストレーターでもある、尾崎眞吾先生をお迎えしています。
「一画家の目に映る環境の多様性」というテーマでお話を聞かせていただきます。

(中略)

私は先生のプロフィールに次のような言葉が書かれていたのを素晴らしいなと感じましたがいかがでしょう。
「100年後に私の絵を見た人が100年前の風景を感じてくれれば幸せである」
それでは先生、よろしくおねがいします。


・尾崎先生

えー、まず最初にですね、僕はこだわりがあるんです。
まず、どうしてクジラと船かというと、僕が小学校上がるくらい、総天然色カラー映画で見た、ディズニーのピノキオの場面が頭に焼き付いているんです。ピノキオがクジラの胃袋の中に飲み込まれている場面がきっかけで、自然とアニメーションの世界に入って行きました。
それと同時に、ぼくは高校の頃船乗りになりたいと思っていました。
その理由は、外国の航路を走る船内で、できるだけ楽な仕事をしたいと。事務系の仕事で船に乗って、絵を描きながら外国へいきたいと、それが夢だったわけです。
高校出てすぐ、タンカーの会社に入りましたが、どうも食えないなーということになりました。そこで、僕は会社をやめ、東京の美術学校へいったんです。
そして、二十歳ごろからアメリカへ行きたくて行きたくて仕方がなくなり、そういう気持ちが強くなっていったんです。。。。。

以降はまとめのみの内容、詳細は省く

尾崎先生の経歴や作品については、次のサイトをあげておく。
<公式HP>
http://ozaki-shingo.com
<ウィキペディア>
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B0%BE%E5%B4%8E%E7%9C%9F%E5%90%BE
<illustrators-jp.net>
http://www.illustrators-jp.net/jp_net/gallery/ozaki_top2.html

―――――――――――――――――
2、「まてよ」
―――――――――――――――――
行き詰ったときは「まてよ」と考えてみるのが尾崎流。

CMフィルムの仕事で、5名のデザイナーとデザインコンペをする機会があった。
相手は東京にいる4、50代の若いイラストレーター
かたや自分は70歳で、山口にいるので業界の流行もわかりにくい。
題材もメジャーな「風テンの寅さん」だけに、まともに戦っては勝ち目が無さそうだ。
しかし、そこは生来の負けん気でなんとか勝ちたいと思った。

そこで「まてよ」と考えてみた。

確かに彼らと比べ不利な状況だが、かれらにはないものが自分にはある。
つまり、彼らより長く生きてきた人生やたくさんの職業経験で得た経験から、かれらがしないようなことを考え、そして実行すると決めた。

実際のコンペでは、5人のうち3人はそもそも依頼主のコンセプトを理解しておらず敗退。
残ったのは自分と、イタリアで有名なデザイナーの女性だった。
そこで、独自のアイデアで勝負したところ、見事勝利した。

ちなみに独自のアイデアというのは次の通り。
通常のイラストでは人物一人を描くが、尾崎先生は同じ人物を3人並べ、さらに吹き出しをつけることにより、
デザインの斬新さに加え、依頼主に対してアイデアも提供することになったのが勝因だった。

―――――――――――――――――
4、視点を変えてみると?
―――――――――――――――――

家を建てるときは、あえていびつで通常では欠点があるとされる土地を買う。
その土地を活用しようと考えることでアイデアがわいてくる。
きれいな方形の土地で湧いてくるのはろくなアイデアではない。
東京で家を建てるとき、建築家 納賀雄嗣さんと、近くの工務店の2通りの図面をプレゼンしてもらったことがある。
工務店からは、土地を平面的に割った2Dの図面、納賀さんからは、建物に対して立体的な3Dの図面を提案された。

女性が花を見たら、「わー、きれい」という、僕はそうは思わない。
きたないよどんだところに、色々な色があるからきれいと思う。

まどみちおさん「花ってはずかしいね」と言われている。
どうしてか、「おしべとめしべが両方出てるから。」
こういう視点の違いが大事です。

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5、町の景観について感じたこと
―――――――――――――――――

アメリカではよく車移動をしていた。
町から町へ移動すると景色が変わっていくのだが、ある町では森の中に住宅があるような町があるかと思えば、ビルだらけの町、農家の目立つ町のように、町によって風景、印象は様々だった。
しかし、地元長門の町なみはそれに比べると雑多に見え、町づくりに明確なイメージが足りないように感じ、残念に思った。

―――――――――――――――――
6、美術についてのこだわり
   ―形のないものの表現―
―――――――――――――――――

いま主な仕事の一つは金子みすず。みすずを発掘された矢崎さんの出された「海とかもめ」の詩集に挿絵を描いて。彼女は百年以上前の人であるので、挿絵もまた、当時の情景を思い出させるものでなくてはならない。

たとえば、みすず在世にあった狛犬(石像)は現在では風化をして、それは、みすず本人が見た、狛犬とは違ったもの。その歴史を感じさせることが大事である。

アメリカ留学中に描いた、Friedrikeという女性の横顔の絵があるが、指導の教授から、Atomosphereが描けていると評価された。百年後のこの空気を感じてくれること大事だと思う。

日本画家の野田弘志は、写実はなんでも描けるが、大気、香り、雰囲気、匂いなど、形のないもの、は描けない。それを描くのが望み
としていたが、自分もそのようにありたいとのこと。

レストランでは接客態度も味のうち。喫茶店でも、コーヒーなど飲食物以外に、時間だとかくつろぎだとか、お店の雰囲気や目には見えにくい部分のサービスを大事だと思うとのこと。

―――――――――――――――――
7、消費税について

いま、消費税8パーセントで騒いでいるが、消費税を変動制にしたらよいと考えている。
アメリカでは州によって、また郊外や都心によっても税率を変えて設定されている。
地域によって、物価や生活スタイルが違うから、一概に同じ税率では不平等と考えられるからだ。
同じように日本でも地域や商品によっても、柔軟に税を変えることができたら良いのではないか。


最後に、萩在住の児童文学作家の中山聖子さんから頼まれて、「ふわふわ」という本の挿絵を描いているが、白鳥が可哀想という主張と、決断はやむをえなかったという主張、どちらもわかる。自分は「命の尊さ」という意味で、こどもの白鳥をできるだけ可愛く描いた、それで何かを感じてもらいたかったとされた。

質疑応答

Q:話の中でイメージが貧困ということがあったが、イメージとは、その対象の空気、雰囲気ということだと思うが、昔の日本人のほうがそういうものがあったのではないか?

A
美術でいえば、日本は浮世絵のように二次元、西洋絵画は立体です。立体ということはそこには空間があり、空気がある。
「イメージ」という言葉はあいまいなもの。アメリカで、美術についてイメージの重要性を学んだが、イメージは絵を描く時の主題という意味合い。

自分としては、イメージよりむしろアイデアというのが描く場合の武器になる。
単に写実的に絵を描いていてはしょうがなく、もう一歩、アイデアが必要だ。開高健でいえば「悪魔のささやき」であり、自分としては「まてよ」である。

Q:アメリカと日本の雑然とした風景のちがいについて話されたが、あれは東洋と西洋の美的センスあるいはもともとの風土の違いではないのか?

A:黒田清輝がフランスアカデミーで西洋画の古典的な基礎として、黄金分割の構図とか、石膏、デッサンを勉強した。デッサンで重要なのは、まず題名、基督教の題材、そして線。風景画や静物画は絵じゃなかった。
アメリカの場合は少し違う。石膏なんか置いていない。
ピカソはできすぎていて、アカデミーに入れなかった。その後マチスから示唆されて、アフリカのお面からキュービズムをつくった。

Q:消費税はなかなかむつかしい問題。税金には所得の再配分という要素があり、所得税の累進課税がある。しかし消費税は一律課税。アメリカは他の国と少し変わっていて、自由思想の国ですから、あまり国に頼らない、税金にたよらないところがある。だから地域によって税率も使い方もさまざまで、非常におもしろいと思う。
日本の場合は基本に累進課税があるから、消費税をあげていくのは、安倍さんもたいへんだなと・・・

A:フィンランドで食事をすると、消費税のため、たいへん高くつく。それが高福祉にまわるのだから、日本も海外からの観光客が多いから、そういうことを考えたり、都会は高めで、田舎は低めにするとか、色々やり方を工夫したらいいのではないかと思う。

Q:写実とイメージ、アイデアの話をされていたが、絵画でいう上手い、写実の極みというものはイメージ無しではあまり芸術的な価値はないということですね。
音楽も似たようなところがあって、たとえばギターを弾く人で神様や職人のように上手なプレイヤーがいる。しかしプロの目からすると「うまいね!」「あ、っそう」それで終わりなんです。
技術と芸術の違いというか、技術の上に自分のキャラクター、新しい見方・アイデアが出てくるんだと思う。

その新しい見方・アイデアを編み出すのは既存のものの収集と、垂直思考と水平思考だと言われたと思う。

ここで質問ですが、アイデアを編み出すのは技術なのか、それとも経験や人間の中からしみでてくるものなのでしょうか。

A:技術的だと思う。
というのは僕は若いころオズボーンの垂直思考の本(1962年)とデ・ボノの水平思考の本(1969年)を舐めるように読みました。それによって身に付けた技術だと思うからです。
すべての人が同じようにできるかは分かりません。

新しいアイデアを生み出すには、まずデータを収集し、それから咀嚼し、よく練ったうえで、インスピレーションを得て、アイデアにする。重要なのは、しっかりとデータを集めること。ジェームス.W.ヤングの「アイデアのつくりかた」(1940年)からも学んだ。

Q:アイデアの咀嚼と言われたが、それは誰でもできるものじゃないように思う。
それはセンスですか?

A:センスではない。作業です。
それにはデータをとることが必要だと思う。
データそのものは既存するもので役に立たたない。

僕は発明協会の顧問をやっていたころ、大学生を集めて不便利マガジンを作っていた。
日常で不便利に思ったこと、感じた物事をあつめたものが不便利マガジンです。
発明は不便さを集めることから生まれます。

Q:作業がセンスじゃないのか?

A:データを足したり、引いたり、割ったり、頭を練ることだと思う。これが咀嚼です。
その作業にはそれぞれのセンスがでるかもしれないが。データを集めるときから考えている。アイデアは、考えて考えて、考えたその挙句に出てくる。

Q:ジェームスヤングの本に関連して、潜在意識との関係について

A:無意識の潜在意識に頼ると、人のアイデアであることがあるので、注意が必要である。
アイデアを生み出すには苦労しなければならない。
頭の中でねってねってりあげて、そして潜在意識に任せると、寝ているときでもがばっとおきることがある。

関連するが、水彩画は油絵とちがい繊細。色の重なりや滲みをいろいろ計算するそのプロセスが大事。
急ぎの締め切りの時、水彩の色の重なりや組み合わせを横になって考えながらやると寝てしまうことがある。
夢の中でイメージが出来上がって、できたと思って目覚めるとできていない。そういうこともある。

Q:さきほどの質問と関連して、我々には西洋の音楽の12音階がしみついているが、東洋の音楽はもっと連続性がある。今の時代は西洋的な行き方が行き詰っていて、東洋的な行き方で考え直す時期じゃないかと考えている。

A:東京芸大の小泉文雄さんという方が、
ピアノは鍵盤を押せば決まった音が出る。バイオリンは自由に音階を変えることができる。情操教育にはピアノよりバイオリンの方がよいということを言っておられる。

Q:1000人の似顔絵を描かれたようだが。

A:最初は、人物は描けなかった。はじめは恥ずかしかったが、がむしゃらに描き続けることで、似顔絵が画けるようになった。絵が描ける人が、人間が画けるとは限らない。

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