環境サロン(低炭素のまちづくり)第3回「ペレットストーブの利用から低炭素循環型社会について考える」束田浩一(スタジオセンス)
2014年09月20日
まず、昨年6月放映のtysの番組と、今年2月2日のNHKサキどりで取り上げられたビデオをみせていただく。次に、持続可能な社会と木質バイオマスの関係について説明された。
昨年3月に県立高校をやめて、イギリスに行ってきた。イギリスは暖房のため、森林の木を全て燃やしてはげ山にしてしまったが、石炭を発見し、産業革命につながった。ドイツでは、250年前からイギリスの轍を踏まないため、シュバルツバルトの植林に始め、エネルギー自立を考え、これが2000年から2012年にかけて、FITの制度をレベルアップしていることにつながっている。
CO2濃度は化石燃料を燃やしだした産業革命を契機に上昇し、80万年遡ってもたかだか350ppmになる程度だったが、今や400ppmに近づいている。
一人あたりの食料生産に20aの耕地が必要だが、すでに世界人口の食料をまかなうだけの耕地はない。エネルギーについては、1家庭、1年あたり30万円程度の支出があるが、日本のエネルギー自給率はわずか4%であり、山口県の場合、エネルギーに30万円×60万世帯=1800億円のうち、その大部分は外国へ支払われることになる。
木質ペレットは1970年代に石油価格の上昇を見越して、スウェーデンでペレット製造技術が開発され、水分10~13%で圧縮すれば、接着剤なしで成型できる。
日本の森林には、年間800万トンのB材、C材、残材があるとされている。そのうち使っている量はわずか1%の8万トン。森林整備1haあたり50m3のB/C材から12.5トンの木質ペレットが生産でき、これはほぼ12.5tonのCO2削減に相当する。
灯油8500kcal、木質ペレット1kgあたり4200kcal、実質的には灯油100円に対して、70円位の熱量価値がある。しかも山口県は政策的に45円/kgに抑えられている。新潟県では60円/kgである。
薪ストーブは、不便、扉を開けるとき、火の粉が飛んで危ない。初期費用も割高。薪割りもたいへん。ペレットは電気はつかうが、自動補給できる。地域の雇用効果が大きい。
以下ペレットの、原料調達、製造、流通消費の現状について、詳しく説明された。
まず、山について 京都府南丹市日吉町の森林組合は1300人の農家、20人の職員で立派にやっている。H8年より、10年単位で計画し、道路建設から、林業機械の導入、製品の販売まで、60年のサイクルで考える。木材価格は 5000円/m3として、日本では15000円/m3かかるところ、少なくとも1/3以下に抑えないといけない。フィンランド製の機械を入れて省力化したり、見学研修も3万円と有料で、徹底して合理化が図られている。山持ちに還す。人工林は樹径の15倍から20倍の余裕をとるため、10年に1回間伐。40度以上の土地は対象としない。自然林は20年のサイクル、シカを生かすため1.5m~2m残す。
ペレット製造について 岡山県真庭市の銘建工業は2千kWの発電と、製材屑から8000トンのペレットを生産している。2011年に、地産地消の成功例として、テレビ番組で紹介されたが、実際は、原材料は90%フィンランドからの輸入とのこと。25万m3というまとまった原材料確保は 外材に頼らざるを得ないという。
新潟県の場合、古川正司さんが林業の世界に入り、需要もつくっていくことから始められた。ペレットストーブも10年前、輸入品は50万円と高かったので、イタリアから技術を入れ、地場産業が協力して、日本にオリジナルな廉価なストーブをつくる。工夫を加えて暖房熱効率を85%に改善した。昨年1年間で2300台販売できた。小規模な生産拠点16箇所30人以上の雇用を生み出している。
大規模になると、海外や遠方から化石燃料を消費して運搬してこなくてはならない。地産地消で小規模分散型の利用が、地域の活性化にも役立つ。基盤の製作に障害者の雇用もされているとのこと。
流通については、新潟ではガソリンスタンドやホームセンターが木質ペレットを扱うようになっている。山口県では下関市、美祢市でも、森林組合がおいてくれて、いま6箇所。
農業用ペレットボイラーで暖房したハウスで作られた新潟のコケ玉や山梨のオフセットトマトはプレミアがついてよく売れる。
萩でIターン農業でチューリップを生産している人がいて、ペレットストーブの利用が可能性が大きいのではないかと思われる。(500m22棟、)燃料費が節約できる。フィトンチッドが虫除けになる。排気の熱も炭酸ガスもそのまま利用できる。
木質ペレットの販売店が少ないので、島根県益田に本社のある順天堂にも置いてもらうように頼みに行ったが、ペレットストーブ山口県内でまだ300台程度では、商売にならないということで断られた。企業も地域にいいことやるべきことに協力して、島根の臨御を盛り上げるべきではないかと思う。
ドイツは森林バイオマス発電については500、5000、20000kWでFITをスタートしたが、12年かけて徐々に大規模な発電を対象から除外してきている。小規模な分散型熱電併給が指向されている。シュバルトバルトを維持するためである。
日本では熱の利用がおろそかで、ORCシステムも電気事業法の規制により普及できていない。林業関聨の技術開発やシステム整備のの課題も多い。
山口県について、森林バイオマスを持続可能に、かりにすべて木質ペレットとして利用した場合の最大の地域経済効果を試算したところ、ペレット販売41億円、海外流出減少分47億円、Jクレジット2億円合わせて90億円となり、民生家庭用の60万世帯文のエネルギー支出1800億円の5%に相当する。
逆に言えば、森林バイオマスに過度な期待はかけられないということに注意する必要があるということである。
○チップストーブとペレットストーブの比較はどうか。また、学校にペレットストーブにすると、暖房効率としては、石油ストーブに比べると劣るのではないか。
→チップの場合は燃料の自動供給がむずかしい。また、チップはペレットに比較すると、嵩密度が低く、運搬効率がわるい。
阿東町で試行されたときに使われたペレットストーブは効率が悪かった。そのよくない印象がまだ残っている。広島の庄原でもそういうことがあった。現在は随分改善されている。新潟県のさいかい産業は数千台の4割を占めている。美東町の道の駅は1台だけで十分温かい。島根県三刀屋高校掛合分校では教材としてペレットストーブを以前入れたのはよくなかったが、今回2台入れるようになっている。(ここも1台目はよくなかった。)
○やはり少し高いのではないか。
→自動着火方式は採用していない。着火剤でつける。この方がシンプルで、丈夫で廉価にできる利点がある。一般にFF式温風ファンヒーターのタイプは少し高い。鋳物が熱を持ってくれる利点もある。
○大型、小型で暖房効率は変わらないか。また原料の材質によってペレットの熱量に差はないのか。
→まず全木、バーク、ホワイトペレットの3種がある。銘建工業のものはホワイト、山口県森林組合の場合は間伐材原料で、バークの割合が多めである。樹種によっても、水分含量によっても、少しばらつきはある。4200~4500kcal/kg程度である。バークは灰がやや多い。
このほか、化学物質の含有にも注意しなくてはならない。集成材などは接着剤が使われているので、トレーサビリティーについては注意が必要である。
○竹はどうか。
→竹はケイ素分も多く、ペレタイザーのダイスの消耗が大きく、ペレットには向かない。長野県のメーカーが竹のボイラーを開発している。
非常に内容の詰まったお話でしたので、是非Ustreamで確認してください。
http://www.ustream.tv/recorded/52769378
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