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7月3日の環境サロンの概要をアップします。「世代間・地域対話」第2回目

2014年07月14日

第二回目の環境サロン「世代間・地域対話」はカヌー・カヤックの調査・研究家である洲澤育範さんのお話でした。洲澤さんは数年前北極圏を訪れイヌピアックの暮らしを体験されました。「多様性」と「当たり前でないこと」をキーワードに家族の在り方を考えさせられる時間となりました。

洲澤さんの普段の下関での生活はカヤックを作ったり野菜を作ったり。食べる量だけを育て収穫後は種を採り翌年に繋ぐ。薪でお風呂を焚いたり七輪で料理をすることも楽しみながら家族と自然に囲まれた豊かな生活をしておられます。

冒頭にコップに入った水を手に持ちこのように話されました。「こうして水が飲めることが当たり前と思いますか?実は私たちが住むこの環境は地球規模で見ると特殊なんです」「私はへき地と言われる場所に住む少数民族を訪ね命の多様性を学びました。命の多様性を最も急速に失っている生物が人間だと思います。便利さを追求することで、消費・考え・行動が画一化されていっていると感じています。」

洲澤さんは数年前アラスカのヌービックという村に暮らすチップさん家族を訪ねました。チップさん家族は少数民族のイヌピアック。チップさん家族は村の人にも「変わり者」と言われるほど自分たちの文化に敬意を払い忠実に継承されています。
私たちはイヌピアックの音楽を聴き、洲澤さんが撮影された写真を見ながらヌービック村での話を聞きました。

・チップさんの写真―チップさんの子どもたちは学校を辞めた。自分たちの言語の使用を禁止され、文化継承も認められない。7人いる子どもたちは通信教育で育てている。大切なことはツンドラの自然と私たち家族が教えていく。北極圏に住む動物たちも子どもたちの先生である
・作りかけのカヌーの写真―木を削ると刃先にヤニが付く。木を削る作業の合間にヤニを取る。他にも歌を歌ったり、おしゃべりをしながら木を削る。単調な作業が多いため歌やおしゃべりは大切にされてきた
・アザラシの毛皮を干した写真―イヌピアックは自分たちの環境を上手に使う。毛皮を柔らかくするため干す前に水を含ませる。含んだ水分は凍るため、そのまま引っ張られると繊維が壊れ毛皮は一層伸びる。この作業を繰り返すことで毛皮はより柔らかくなる。
・チップさんの娘の写真―次女のキャロルさんは食べるためのウサギを自分で採りたいといいだした。イヌピアックでは男女の役割分担がはっきりしている。罠の作り方は母親から。仕掛ける時は父親と。捌き方は父親から学び料理は母親から習う。チップさん家族では自分で考えながら行動することが大切と考えられているのでそれら一連の伝統も教えるのは一度だけ。
・伝統的な料理の写真―カリブーやジャコウ牛、アザラシやサケなどはいったん冷凍し保存する。食べる時は半解凍のままシールオイルに漬けて食べる。シールオイルとはアザラシや鯨の皮身から採る油でイヌピアックの生活に欠かせない大切なもの。マイナス50度の環境でも凍ることはない。不思議なことに食べると身体が芯からぽかぽか温まり、満腹感を感じやがて眠気を誘う。極寒の環境に住む人々に適した食材の一つ。

・カリブーの毛皮で服を裁縫する長女ティグマックさんの写真―肉を食べた後の皮を娘と母親がパーカやブーツに仕立てる。「狩り」とは他の命を賜ること。決して「殺す」とは言わない。イヌピアックの人々はその賜った命を大切に使い次に繋げていく。「すべては巡る。巡るから命は再生を続ける。命の最たる特徴は再生を続けることだ。」
・カヌーを漕ぐ洲澤さんの写真―河からみる北極圏の自然。空と河はその青の深さにまるで繋がっているかのような錯覚を起こす。洲澤さんはその時地球と宇宙の境が虚ろになったように感じたそう。この環境において夢と現は交じり合っているのではないか。現在と未来が交じり合っているのではないか。私たち(日本人)の感覚では、時間はしばしばまっすぐな道で示される。過去を後ろとするなら未来は前方か。しかしイヌピアックの人たちは違う。時間は緻密な螺旋を描き私たちの身体の周りを囲っている。過去は足元で未来が頭の上。一万年前の過去の上に立つ私たちは、一万年先の未来を支えなければいけない。だから余分な狩りはしない。余分に採らないから来年もサーモンはこの川にやってくる。空間や時間の感覚も認識の仕方で変わってくる。
イヌピアックの人達はフルライフを生きている。全力を出し切らないと一日が終わらない。人間も他の生物と同じ世界に身を置き、食われるかもしれない自然環境の中で生きていくと迷いがなくなる。なぜなら進まないと死んでしまうから。
北極圏の夏はグースという鳥が出産、子育ての時期を迎える。洲澤さんがカヌーで河をくだる最中、グースの父親が岸からじっと見つめていた。人間たちが自分の家族から離れる数キロ先まで目を離さない。イヌピアックはこの時期の動物を狩らない。家族を守るグースの姿、そしてそのグースを狩らない父親の姿を見て、イヌピアックの子どもたちは家族の大切さを学んでいく

質疑応答
Qイヌピアックの暮らしから私たち日本人が学ぶことがあるか
―それは答えるのが難しい。人によって違うから。私自身は学ぶことが多かった。むやみに利を求めない。欲をださない。人間も企業も七分目でいいのではないか。
Q演題にある、「人の多様性」ということについて、あまり言及されなかったような気がするが。
→人の生活の多様性を紹介したつもりだった、チップさん一家は別だが、今はイヌピアック人たちの生活も大部分アメリカナイズされた単調なものになっている。彼らは働かなくても食べていけるので、太った人が多い。結構アルコール・薬物依存や犯罪もあるようだ。

Q地域活性化について意見を聞きたい
―地域の前にまず家族の在り方。親の姿を子どもたちに見せることが大切。私自身は、畑を作る姿、薪を割る姿、自然の中で生きる姿を見せている。仕事がないから地方は疲弊するとよく言われるが、仕事は自分で作ればいい。私自身も仕事をつくるため営業活動もしている。チップさん家族は自分たちの暮らしと文化に誇りを持っていて子どもたちもそれを習っている。子どもたちをどう育てるかよりも、大人がどう生きているか、どんな姿を見せているか。地域の活性化を考える前にそちらが大事。

洲澤さんが流してくださったイヌピアックの伝統音楽の歌詞はこのようなものだそうです。「きれいな朝がきました きれいな夕日が沈みました 何事もなく一日が終えることができて幸せです」

感想)チップさん家族の当たり前と私の当たり前は大きな違いがありました。しかしチップさんが住むヌービック村も日本同様、家族は自然環境や社会環境に大きく影響され、そして家族の在り方が子どもたちを形成しています。考えさせられたのは、価値観を共有し、関係が密であるチップさん家族には世代間の違いはさほどないのではないかと感じたことです。同じイヌピアックでも文化継承を重んじずアメリカナイズされた生活を送る家庭ではどうでしょうか。また私たちはどうでしょうか。洲澤さんの言葉「親の姿を子どもに見せる大切さ」はここにヒントがあるのではないかと感じました。ありがとうございました。(文責:第1分科会企画委員 藤井由美子)
サロンの様子はUstreamでも視聴できます。
http://www.ustream.tv/recorded/49505001

今年のサロンの概要紹介が滞っていますが、今回、企画会議の委員の方に、直近のサロンについて、講演概要をまとめていただきました。他に参加いただいた委員の方々など、自分なりの感想をお持ちの方は、ご遠慮なく、当該環境サロンの概要紹介に関する“うべっくるブログ”やフェイスブックのコメント欄に書き込んでいただければ幸いです。

 他の二つの分科会についても、同様な動きがあれば歓迎いたします。

次回、環境サロン里山の保全と再生 第2回は大風雨で1週間順延された「世代間・地域対話」にも関連するお話です。
7月17日(木)18:30~ まちなか環境学習館にて、「こども達の環境学習に関わってきて」藤野完二(環境カウンセラー)です。ご参加をお待ちします。

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