2月16日(土)企業の倫理について 宇部商工会議所会頭千葉泰久さんのお話をうかがいました。
2013年02月24日
140枚のスライド、うち70枚を配布され、2時間近く機関銃を撃つように話されたので、今回はあとのディスカッションはほとんどありませんでした。またの機会に譲ります。要旨をまとめるのに、手間取ってしまいましたが、すごく参考になることなので、今回のブログはこれまでの最長になることをお許しください。まず、宇部の歴史から、・・・
○宇部が村から市になったのはやはり石炭よりセメントや化学工業への進展によって人口も増加した。渡辺翁は共存同栄のまちづくりに貢献された。1929年にすでに航空研究所ができていた。1934年に窒素工場の火入れ、晩年の渡辺翁の姿もある。技術者は火入れ式の感慨がある。
色々引き出しに入れて置いて、いずれ後輩達を導こうという気持ちをずっと持っていた。
→CTOになった2005年から毎月書きつづり、宇部興産のホームページにも記録され(http://www.ube-ind.co.jp/japanese/eco/csr_area_sonota_j.htm)、本にまとめている。
○19050年代の宇部市の大気汚染はひどく、いつも窓を閉めていた。青少年会館のところに宮大路動物園があったが、そのサルが結核になった。サルの健康診断があったのは、宇部と横浜の動物園だけだった。1960年代盛んに対策をして、これを克服、後に1997年グローバル500を受賞することになる。1970年代は、排水に酸や肥料分も流していたので、阿知須くらいまでノリができていた。民も入って取り組むというのが宇部方式だ。
○企業は、つねに先を見越した技術開発、事業開発を行わなければならないが、UBEの場合、中核基盤産業(ナイロン、セメント、石炭、工業薬品など)、成長戦略事業(半導体材料、機能材料、ファインケミカルなど)、育成事業(航空宇宙材料、医薬など)、次世代技術重点分野(次世代技術材料など)、これら全体をグループとして成り立っている。企業のCSRの一番重要なものは、雇用の確保創出であると考えている。
○化学工業はとくにいろいろな最終製品に使われているので、会社の説明がむずかしい。それで、UBEアイプラザ(渉外部に申し込み)にカットモデルを置いている。自動車の射出成型機も造っている。アルミホイルは残念ながら撤退した。7年前に打ち上げられて、最近帰ってきた人工衛星の「はやぶさ」はUBEのポリイミドの膜で被服して、高温・低温の過酷な環境から守られたが、これは宇部で造られた。10年前には宇部興産とデュポンの競争だったが、こちらが採用された。
○GDPの経年変化を模式的に示すと、概ね右肩上がりに来ているが、推移を追ってみると、物の時代(人はただの時代)、人/物の時代、人/サービス(三次産業)の時代、人/サービス/情報の時代、そして今からは心の時代になる。心が満たされることが、価値を持つ時代になる。勉強して、文化歴史などが大事になる時代になると思う。
○産業革命以降、温暖化の進行は明らかになっている。概ね全体的に認めるようになっている。GWG(二酸化炭素など地球温暖化ガス)の削減が必要だが、みんなが考えること、われわれの意識も改革が必要という時代になっている。原発事故以降とくにエネルギー問題が重要になっていて、風力発電、淡水海水の浸透圧利用、藻類利用など再生可能エネルギーも新しい方式が開発されている。ベストミックスも考えて、引き延ばして行き、再生可能エネルギーに移行していく。再生可能エネルギーは一気に増えるわけではなく、使わないと増えないということも大事だ。
ところで、シェールガスが重要な位置を占めるようになる。150~200年位伸ばすかもしれない。技術が進みより深い頁岩層から採取できるようになった、メタンやエタンなど軽い成分を含む、いわゆる天然ガスの一種である。アメリカが資源大国になるのは確実である。メタンハイドレートは採取がより難しいかもしれない。
○化学工業は環境面から見て悪者にされることが多いが、すべてライフサイクルで考えなければならないと思う。2005年当時UBEの社会的責任CSRマトリックスを埋めてみると、結構埋まったが、広報ができていないことがわかった。興産中央病院、ANAホテル、ジュニア科学教室、水源の森づくりなど結構がんばってきた。天然香料を人工香料に置き換えることで、種の保存に貢献した例もある。これから、環境を考えたビジネス、グリーンサステイナブルケミストリーを目指していくことが生き残りにもつながる。
DMCはリチウム電池の電解液として20億円以上の売り上げがある。慶応大学が2004年に開発した電気自動車の電池にも使われている。値段は当時3千万円うち2400万円は電池代であった。その1年前にわれわれも電気自動車をつくった。いずれ電気自動車の時代にな、水素自動車は安全性の問題で普及は難しいと思う。
○今のアメリカ流、結構ドライ、トップレベルの人間を集める、だめなら取っ替える、前向き、挑戦的、リスクをおそれない、企業文化を大事にする、などがアメリカ流だが、行き過ぎもある。将来に対しても万能ではないことは考えておかないといけない。しかし当然、いいところもあるので、見習うところは見習わないといけない。しかし猿まねはいけない。右肩上がりの時代だけではない。中長期的なトレンドを見ることが大事である。修正しながら、行き詰まったら歴史に学ぶ、基本に立ち返ることが大事だ。
技術者の心得について:
○技術は市場の競争で決まる。技術は時代背景がベース、状況が変われば活かされる技術がある。優れた人材はさほど多くはなく、これは大事にしなくてはならない。技術エリートたれ。失敗することをおそれない。経営者は高い志をもっているべきだ。R/Dは不況にあえば減らされるが、聖域に置く必要がある。必要な技術開発はこつこつつづけなければならない。R&DTPB(R:研究、D:開発、T:生産技術、P:製造、B:ビジネス)の間で、情報を双方向にスムースに流すことが非常に重要であること。
○研究者はお座敷がかからなければならない(実用に結びつかなくてはならないの意味か)。ただ、技術的におかしいと思ったら、それは譲ってはいけない。過信もいけけないかもしれないが、技術者の良心は絶対守らなくてはいけない。
○研究開発の仕事はものになるのはごく一部であって、屍累々である。しかし文科系の管理畑の人は往々にしてそのことを理解してくれない。開発技術者は努力を愚直に持続すること、管理畑に評価がされなくても凌いでがんばることが大事。しかし技術者は正直で嘘がつけないところがあり、少し気にかかるところがあることを正直に言ってしまう。しかしその心配が本当のことがある。
○専門分野の深さは必要である。他の分野でも浅くなる傾向がある。ある分野で掘りの深さを経験していると、教えてくれる人に敬意を表せる。よく教えてもらえる。ジェネラリストだけでは生きていけない。
○出世カーブではじめは落ちこぼれと思われていても、がんばっていれば最後に急上昇することもある。投げてはいけない。井戸を掘る人、いつももう一つの井戸を掘りに行く、
水を飲むとき、その井戸を掘った人に感謝しなくてはならないと言うことを毛沢東が言っているが、それを俺がやったのだと威張るのではなく、次の井戸を掘りに行くやせ我慢の美学も必要だ。
終わりの余談:
○65才から老後の男女の健康状態と寿命カーブを秋山弘子という人が解析している
男は65才くらいから徐々に弱るのが20%、73,4歳くらい弱るのが70%、後の10%は長生きもしつつピンころりのパターンで、社会に関わり続ける男性が該当するようである。 女性は男と違って、大部分88%は70くらいからじわじわ弱るタイプであるという。
○最後に余談として、臨死体験をした2500人の人から聞き取られたデータでは、概ね幽体離脱して自分が死んでいくところを見ているという研究があるそうだ、
結局企業人の倫理として
①雇用を確保すること、そのためにたゆまぬ努力を惜しまないこと。
②時の流れを読む先見性が重要だが、これからの心の時代にどう対処するか。
③技術者の愚直さ、技術者の良心を守ること、常に新しい井戸を掘りに行くこと。
ということだったかな。興味ある方は、以下のUstreamや宇部興産のホームページにある、「寝言は夢か」をご参照ください。得るものが多いと思います。
http://www.ustream.tv/channel/kankyo-salon#/recorded/29324907
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