環境サロン「自然保護と生物多様性保全」第3回~宇部市の野鳥とこれからの自然共生~
2012年11月10日
11月8日(木)の環境サロンは原田先生のお話でしたが、参加者は総勢24名で、ほぼ目標達成でした。
宇部市の鳥類の種類は19目、54科、272種確認されているとのこと。
山、農耕地、ヨシ原、干潟など多様な環境があって鳥類の種類も豊かである。また、瀬戸内海に面して、渡り鳥の通路になっていて渡り鳥が多い。
小野湖周辺、霜降山・男山周辺、東海岸・常盤湖周辺、西沖の山周辺、楠地区、西吉部地区の6地区について、生息している鳥の種類について説明された。
目立った鳥としては、小野湖周辺のオシドリ、ハチクマ、常盤湖周辺は海も近いので種類が多いこと。西沖の山のチュウヒ、オオバン。楠地区荒滝山の周辺のため池も種類が多くの種類の鳥が見られる。西吉部(西万倉)のオオタカなど。
小野湖周辺には62種類の鳥が確認されている。留鳥としてはオオタカ、ミサゴ、フクロウなど、冬鳥としてはカワウ、オシドリ、アオバトなど、夏鳥は、ホトトギス、サンウチョウ、オオルリ、キビタキなど、旅鳥としてはハチクマ、ノゴマ、エゾビタキなど。
ドングリの実が多いのでオシドリに好まれる。水が少ない年にドングリが多く、オシドリが多い傾向がある。
ハチクマが昔35年くらい前までは、平原岳のあたりで、ヒガンバナが咲く頃、稲刈りの時期によく通り、村の人たちが稲刈りもやめて鉄砲で撃って、とり、塩漬けにしておいて、正月のお雑煮のだしに使ったという。たいへんおいしかったという。日本で唯一の地域文化である。鳥獣保護法が徹底されてからなくなった。沖縄でサシバをとる風習もあるという。高圧鉄塔ができててコースが変わるということも言われる。長距離を飛ぶ渡り鳥は時期を嫌う傾向があるそうだ。
西沖のヨシ原、非常に鳥はたくさんいる。下に水があり、外的が比較的少ないので鳥が営巣する。非常に貴重な生態系である。ただ民間の土地なので、自由にはならない。 エチレンプラントができたり、浚渫土砂の捨て場になったり、貯炭場やメガソラーの設置場所になったりする可能性がある。ちなみに北九州市は最近40ha以上のヨシ原を、貴重種もいるというので、ビオトープとして整備した。
カワウとアユの話。自然共生のあり方について考えさせられる。アユを大漁放流すること自体不自然でカワウにとってはえさをまかれているようなもの。幼稚園児にアユの稚魚を放流して、それを食べるカワウは悪いやつだというのは間違った見方を植え付けることになる。
体験学習、環境学習について、子どもだけを対象にしていては、親が連れて行かないと、こどもも持続できない。親子をセットにしてやらないと効果が出ないのではないかと思う。
都市化鳥はむかしはスズメ、ムクドリ、カラス程度だったが、いまはメジロ、ヒヨドリキジバト、ハクセキレイなども都市でよく見られるようになっている。意外にたくましく適応していくようであるが、最近緑は少なくなってきているのは気になることである。もうすこし緑を増やすようにしなくてはいけないのではないか。
質疑
○なぜ、鳥に取り組むようになったのか。
→ヤマガラがおみくじを持って行くのを見たのが大きかった。子どものころ遊ぶところが山だったので、幼稚園のころから、トリモチでメジロなど捕まえて、売りに行ったりした。とりもちや時には霞網も使ったこともある。今は摘発している方になっているが。
本格的にやったのは、双眼鏡を手に入れてから、先輩について教えてもらってから、すでに40年になる。
○ドングリのカウントはどうしたのか。
→西側の周辺道路の走るときに定点を決めて、観察し5段階で評価した。
○街路樹に夕方から夜にかけてすごく群がっているのは、何なのか、またいつ頃からか。
→ムクドリ、スズメである。都市部の調査ができていない。ムクドリは西沖のヨシハラに帰って行ったが、一度有害鳥獣として駆除されたり、猛禽類も入るようになり、町に入ってきたと言われる。
○夏鳥、冬鳥、旅鳥のちがいは
夏鳥は南とこのあたりを渡り、昆虫を食べるものが多い。冬鳥は北とこのあたりを渡る。主な食べものは植物。旅鳥は北から南へあるいは南から北へ通過していく渡り鳥で主に昆虫を食べる。留鳥は夏は虫、冬は木の実など、通年食べられる。留鳥でも自分のテリトリーをつくるために近辺を移動する。
○メジロをよく見るが、ずっと同じペアなのか。オシドリも相手を変えると言うが。
→だいたいはより強い子孫を残すための、♂♀を巡る厳しい競争は結構厳しい。大阪でハヤブサのペアが♀がけがをしたら、すぐ代わりの♀が入ってきたことがある。長門の湯免ダムで、底をテリトリーとしていたクマタカの♂と一緒にいた♀は他の安定したテリトリーを持つ♂とペアになったこともある。オシドリの場合も同様であり、早く生育して、きれいな雄鳥になるとペアになれる。エサと安全性、つよい子孫を残すということが大事な条件である。
○渡り鳥は高圧鉄塔の電磁波を嫌うこと、風力発電の影響はどうなのか。
→佐多岬半島の風力発電では、渡り鳥はコースを変えたと言われているが、夜は見えない。バードストライクは夜に鳥は移動することも多いので、夜間による起きる。意外にコウモリが多い。鳥にはプロペラが止まって見えるそうだ。
洋上風力発電の場合は、鳥が落ちたら、海岸に打ち寄せられることになる。陸上の場合は動物が持って逃げる。
○アセス
アセス調査会社の姿勢、様々だし、また、会社がいい顔をしないこともある。
アセスの調査も様々なレベルがある。生態系を含めた調査、エサ資源まで含めた調査もたまにはある。
○大気汚染の影響などはあるのか。
→そのころは主に山で観測していたのでそこまで注意して関連づけたことがない。意外に発電所などの高い煙突が建つと、上昇気流に乗って高度を上げる鳥もいる。また小野田のハヤブサのように止まってドバトなどのエサをねらったりすることも多い。若いハヤブサは電線などにぶつかってけがをするものも多い。煙浴する鳥もいる。
○調査の状況はどうなのか
→山口県によるレッドリスト調査はこの10年間は更新されていない。環境省は5年ごとに更新している。温暖化の影響も重要な時期なので、調査をするか見直しをするかした方がいい。今後は繁殖する鳥に注目して言った方がいいように思う。
○鳥の多様性を高めるためにはどう考えたらいいか。
→山、川、農耕地、海など多様な環境があるといい。河川の河口などもいい。
(山口県やこのあたりは、そう言う意味ではよい環境であるといえるかもしれない。)
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